Photo by Matthias Gellissen on unsplash
「プロギング」とは、ごみ拾いしながら走るフィットネスでSDGsなスポーツ・エクササイズとして世界中から注目される。日本でも自治体や企業がイベントを企画する他、プロギングリーダー資格認定講座もあるほど盛りあがる。健康や環境にどんなメリットがあるのか、活動事例もあわせて紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
Photo by Mārtiņš Zemlickis on unsplash
プロギングとは、スウェーデン語の「拾う(PlockaUpp)」と英語の「走る・ジョギング(jogging)」をかけ合わせた、スウェーデン発祥のジョギングをしながらごみを拾うスポーツ。2016年、ストックホルム出身のアスリート、エリック・アルストロム氏が始めたことがきっかけで広まった。
プロギングは、フィットネスや健康促進に効果的なのはもちろん、ビーチやトレイルコースをごみ拾いをしながら走ることで、社会課題に対して誰もが気軽に貢献できるのがポイントだ。
プロギングは、いまや、世界100か国以上で楽しまれている。
Photo by Gabin Vallet on unsplash
プロギングをするメリットとしては、高いフィットネス効果やストレスの解消、コミュニケーションの促進、環境問題に貢献できることなどが挙げられる。
ジョギングとごみ拾いの動作は、筋肉や体幹を鍛える。プロギングの消費カロリーは、単なるジョギングと比較した場合、1.2倍にも増すという。
ジョギングをすることで、快感や幸福感をもたらす脳内麻薬「エンドルフィン」が分泌されると、リラックス効果が現れる。さらに、社会貢献したという充実感も得られる。
「プロギング」に参加した仲間や地域の人と交流する機会が増えたり、SNSでごみ収集の成果をシェアすることで、世界中のプロガー(プロギングしている人)とつながることができる。
プロギングでごみを集めることは、海洋プラスチックのような環境問題にもダイレクトに貢献できる。街や海をきれいにすることで、住民の意識や行動にもいい影響や変化を与えることができるだろう。
Photo by Brian Yurasits on unsplash
2050年には海の魚の重量よりもプラスチックの重量のほうが大きくなると言われる「海洋プラスチック問題」。プロギングが広まった背景には、生態系にも人間にも重大な悪影響を及ぼす“ごみ問題”がある。
2020年3月に発表された、食品も含めた日本のごみの総排出量は年間4,167トン。東京ドームに例えると、なんと約112杯分もの量を廃棄していることになる。(※)
運動をしながら環境美化に貢献することができるプロギングは、スポーツ庁を中心にSDGsスポーツ(スポーツを通じてSDGsの目標達成に向けて取り組む活動を指す)として広まりを見せている。
スポーツは、多くの人々の関心を引き寄せ、集客する力を秘めている。企業や団体は、こうしたスポーツの特性を生かし、SDGsの認知力向上、社会におけるスポーツの価値のさらなる向上に取り組んでいるのだ。
Photo by Brian Yurasits on unsplash
プロギングに細かいルールはないが、楽しく効果的にプロギングに取り組むには、以下のようなポイントがある。
運動しやすい服装、タオルや水を用意する。トングではなく軍手で、しっかり腰を落としてごみを拾う、できるだけ足を止めないことが、より効果的なエクササイズにつながる。
プロギングをしながら、写真を撮ったり、音楽を聴いたり、ごみをゲットするごとに「いいね!」「やったね!」とゲーム感覚で楽しむのもいい。
何も考えずにプロギングを始めた場合、目についたごみは全部拾いたくなるかもしれない。ゴールが見えないことで、挫折してしまう人もいるだろう。
プロギングを行う場所が決まったら、その日に拾うごみの種類や量の目標値を設定しておくのがいいだろう。終ったあとに、期待通りの達成感や満足感が得られるはずだ。
2019年に設立されたプロギングの日本公式団体「プロギングジャパン」のサイトでは、各地域別の公式イベントを紹介している。誰でも気軽に、安全に参加できるイベントがたくさんあるので、興味がある人は覗いてみよう。
Photo by OCG Saving The Ocean on unsplash
プロギングは、楽しくごみ拾いをして走ることが目的で、基本的にはごみの重量を競うことはない。
ただし、イベントを盛り上げるための仕かけとして、「スポGOMI」のような終了後に拾ったごみの重さを計測し、チームの成果を称賛しあったり、互いのモチベーションをアップさせることはおすすめできる。
Photo by Brian Yurasits on unsplash
名古屋市では、市役所や公園などを拠点に、定期的にプロギングイベントを開催中。参加者は、1時間程度で40キログラム以上のごみを回収し、集合写真や交流会で楽しむ。
科学技術の力で環境問題の克服を目指すことを事業目的に掲げるソーシャルベンチャー「株式会社ピリカ」が運営する、ごみ拾いSNS「ピリカ」。
これまでに世界中で2億個以上のごみを回収した世界最大級のごみ拾いアプリで、現在、800以上の企業・団体に使われている。
拾ったごみの量を記録し共有すると、大勢のユーザーから「ありがとう」が届く。仲間が増えるだけでなく、社会貢献している実感が持てるしくみがユニークだ。
「World Plogging Championship」は、プロギングの世界大会だ。
2021年10月には、イタリアのピエモンテ州アルプスのヴァル・ペッリチェ領で開催され、世界各国から集まった55人のプロガーが、合計1,780キロメートルを走行。回収されたごみは、795キログラムであった。
「World Plogging Championship」に参加するには、予選大会に参加するか、「Plogging Challenge」に登録する必要がある。
Photo by Brian Yurasits on unsplash
ジョギング以上のシェイプアップ効果に加え、綺麗になった海岸や街を見ることで、満足感や心身のストレス解消も得られるプロギング。
金銭的コストもかからず、いつでも、どこでも、だれとでもできるポイ捨てごみを拾うアクションを通して、参加者同士の出会いやつながりが生まれるのもプロギングの特徴だ。
個人がプロギングを楽しみながら環境美化や問題解決に貢献するもよし、働く場所でコミュニケーションを図る目的で取り入れれば、SDGsの認知やチームの結束を高める絶好の機会にもなるだろう。
ELEMINIST Recommends