気候変動対策のためのアート憲章(ACCA)が国連と提携 ビジュアル・アート界も気候危機の取り組みに参加

ヴェネツィアでのアートと環境に関する国際フォーラム

Photo by ART 2030

「気候変動対策のためのアート憲章(ACCA)」が国連と正式にパートナーシップを組むことが発表された。芸術とエンターテインメントの分野を結集して気候変動に対する取り組みを推進する。

風間亜莉翠(Alice Kazama)

フリーランスライター/スイムウエアクリエイター

日本人の母とイラン人の父を持つ。米カリフォルニア在住。東京の出版社勤務を経てフリーランスライターへ転身後、千葉の海沿いに移住。サーフィンと小さな畑を愉しむ自由でオーガニックな生活を謳歌。…

2024.06.26

ACCAと国連がパートナーシップ

個人アーティストから主要美術館、非営利団体まで、ビジュアル・アート界の幅広い関係者が結集した「気候変動対策のためのアート憲章(Art Charter for Climate Action:ACCA)」。同団体が国連とパートナーシップを結んだ。

ACCAは、2050年までにアート界における温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための行動を促進させ、アートを通して人々に気候変動対策を鼓舞する活動を行おうと試みる団体だ。環境価値に重きを置き、ビジュアル・アートの制作、輸送、展示が環境に与える悪影響を削減し、よりグリーンで公正かつ環境負荷のないアートへの移行を推進している。

そんな同団体が今後、国連とともに、持続可能な開発目標「2030アジェンダ」とパリ協定の目標達成に向けて協力していくことになる。

アートの力で気候変動対策を推進

国連とのパートナーシップは2023年9月に調印されたが、今回ACCAとその同盟団体が国連の環境部門である気候変動枠組条約(UNFCCC)と正式に提携することが発表された。これは、ビジュアル・アート界が気候危機に真剣に取り組む用意とその力があると、国連が認めていることを裏付ける重要な新展開である。

今後ACCAは、UNFCCCの「気候行動のためのエンターテイメントと文化(Entertainment and Culture for Climate Action:ECCA)」同盟のビジュアル・アート部門における中心的存在となる。これにより、ビジュアル・アート界が国連の会議等につくことができ、政治的・インフラ的なアクセス、ロビー活動などを推進することができる。 

この協定が発表された「HOPE FORUM 2024」では、かねてから気候危機を含む社会問題を題材にして活動するアーティストやアクティビストも参加。アイ・ウェイウェイ、アルフレッド・ジャー、セシリア・ビクーニャ、オラファー・エリアソン、ペドロ・レイエスなど、多くの著名アーティストによるプレゼンテーションやパネルディスカッションが行われた。

この協定が発表されたフォーラムは、120年以上続く国際美術展「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の期間中に開催された。ヴェネツィアと言えば気候変動による海面上昇の影響を受け、2100年には水没する可能性が指摘されている世界有数の観光地。気候危機の最前線に立たされている場所がこの重要な協定の舞台となるとはなんとも奇縁だ。参加者の身をより一層引き締めることになったかもしれない。

視覚を通して訴えかけるビジュアル・アートが人に与える力は大きい。アート界が国連と提携したことで、抜本的な構造上の改革だけでなく、草の根的に一般にも環境問題に対する理解や行動が広がる大きな可能性も秘めているのだ。「アート×環境問題」の新たなフェーズに期待したい。

※掲載している情報は、2024年6月26日時点のものです。

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