海洋プラスチックごみが海にいる魚より増えてはいけない………。そんな想いに賛同した企業や人からなるプロジェクト「team530」は定期的にビーチクリーンを開催している。3月30日に茅ヶ崎で行われたビーチクリーンの模様をレポート。海岸にあるごみの現状とは?
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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世界では毎年800万トンの海洋プラごみが生まれており、環境負荷が問題視されている。海洋酸性化やプラスチック汚染によって海洋環境をむしばみ続け、生態系を壊しているのだ。このまま経済発展が続けば、2050年にはプラスチック生産量が今の約4倍になると予想されているし、雨や風で街から運ばれたりポイ捨てによって海へと流れ出たりする海洋プラスチックごみは、海にいる魚を上回るという予測も発表されている。
この状況にとくに危機感を募らせ、ビーチクリーン活動を定期的におこなっているのが「team530」だ。「ビーチクリーンはプラスチックが海岸から海へ出ていかないようにする“最後の砦”」。こう表現するのは代表の塩原祥子氏だ。今回は2024年3月30日に行われたビーチクリーンの様子をお届けする。
初夏のような気温と日差しだった3月の週末。そんな真っ青な空の下で行われたビーチクリーン活動には、事前告知を見て応募した老若男女30人が集まった。拠点となったのは、神奈川県茅ヶ崎市にある「8hotel chigasaki」。海の近くにあるこのホテルは、「team530」の想いに賛同する仲間として、定期的にコラボ企画を開催している。
まずは「team530」を率いる塩原祥子氏から、環境問題について3択から選ぶクイズ形式で解説が行われた。
「地球温暖化の元になっている空気中の物質は?」(正解はCO2)
「南極の氷が全部溶けたら、海面上昇はどれくらいになる?」(正解は60m)
などの基本的なことからはじまり、
「日本のエネルギー自給率は?」(正解は12%)
「日本の化石燃料依存度は?」(正解は約85%)
など、他の先進各国に比べて遅れを取っている日本の環境問題対策の現状にまで言及。参加した人々は目を見開いていた。
そして話の内容は、ビーチクリーンにつながる海洋プラスチック問題へ。
「プラスチックの消費量が世界で2番目に多い国は?」(正解は日本)
「海にいる魚よりも、海に流れ出たプラスチックのほうが多くなるのは?」(正解は2050年)
「魚の体内に溜まったマイクロプラスチックやペットボトル飲料など、人も日々プラスチックを口にしています。私たちがクレジットカード1枚分のプラスチックを摂取するのに、どのくらい時間がかかると思いますか?」(正解は1週間!)
正解によって衝撃的な事実を知った参加者たちからは、次々に驚きの声が上がった。
3択から選ぶクイズ形式で行われた解説時の様子。参加者それぞれが答えを自ら考えることで“自分ごと化”していた
塩原氏は続けて、知らず知らずのうちにみんながプラスチックを海に流してしまっている現場や、ひとたび海に流れ出たプラスチックは簡単には消えてなくならないこと、そしてごみを減らしてリサイクルに回すことの重要性を強調。そしてそもそものプラスチック使用量の削減が最優先であることを呼びかけると、つながりが理解できた参加者達はみな、納得した様子だった。
「環境問題にはもっと深いことがたくさんあるので、気になった方は調べてみて、何か自分でできることはないかな、と探していただけたらと思っています。これから行うビーチクリーンも素晴らしいことです。プラスチックごみが海岸から出てしまったら、お魚さんが食べてしまいますよね。だからビーチクリーンは最後の砦なんです!」(塩原氏)
「team530」を率いる、サキュレアクト株式会社代表の塩原祥子氏
解説のあとは、「8hotel chigasaki」内でビーチクリーン前の腹ごしらえ!メニューはホットドッグorビーガンチリコンカンドッグと地域の野菜を使ったスープ(別途1人1000円)
茅ヶ崎海岸まで15〜20分の徒歩移動。汗ばむくらいの陽気で、半袖の人もちらほら
「team530」メンバーの方から、ごみ拾いトングとごみ袋、軍手を受け取っていざ開始!
砂に埋まっていたプラスチックは、ほとんどが風化し小さくなっていた。これらはほんの一部だ
茅ヶ崎海岸に到着し、辺りを見回してみると、それほどごみは落ちていない印象だった。しかし注意深く探してみると、プラスチックごみがたくさん砂に埋まっていたのだ。
その内容は、容器の破片、包装用の袋やレジ袋の切れ端、ボトルのキャップ、掃除用スポンジ、醤油が入っていた小さな容器などなど………。他にも、漁業関連だろうと思われるごみも多く見つかった。なかには海の中に留まったまま、海中生物が棲み着いた形跡があるものも! 岩と間違えて棲み着いた生物の、なんと哀れなことだろう。
わずか爪の垢くらいのプラスチック破片も多く見つかった。これらがもっと微細になれば、目に見えないマイクロプラスチックとなり、魚が飲み込んでしまうだろう。海中にはすでに、大量のマイクロプラスチックが存在している。
このビーチクリーンで痛感したのは、小さなプラスチックごみの罪深さだろう。海洋生物が飲み込んでしまうのは、小さなごみの方だ。そしてそれは、巡り巡って私たち人間の体内に戻ってくる。
30分ほどでこれだけの量が集まった。プラスチックごみのほか、ポイ捨てされたビール缶や一般ごみ、なかには外国語表記のオイルバケツまで!
ビーチクリーンは30分ほどで終了。この日は活動がお休み中だった冬の間に溜まったごみや、前日の強風で飛んできたごみで、予想外の多さだった。集められたごみを分別しながら「誰だ〜こんなものを捨てたのは‼️(笑)」と、笑っていた塩原氏だったが、きっとそこにいた誰もが同じ憤りを感じていただろう。
「こんなものも見つかったよ〜」と片足の靴を持って苦笑いする人や、真剣な顔で握りしめたごみを渡していた小さな子も、集められたごみの量やその内容に驚いていた。もし「team530」のビーチクリーン活動が行われなかったら、いくつかは海に流されていたかもしれない。一人ひとりの小さな行動が大きな変化の一歩になると実感できた瞬間だった。
子どもたちは率先して小さな手で砂に埋もれていたプラスチックごみを拾ってくれた
ごみを見ながら、燃やせるごみと燃やせないごみとを分別。改めて見ると、やはりプラスチックごみが多い
茅ヶ崎市の指定ごみ袋には、「ボランティア清掃用ごみ袋」なるものが存在する。自主的に行うごみ拾いに対し、市が全面的にサポートしている証拠だ
最後に塩原氏はこう語ってくれた。「今日のビーチクリーン体験で得た気づきを持ち帰って、家でなるべくごみが出ないようにしてもらえたらいいですね」。
燃えるごみを分別して資源にする
買い物は必要なものだけに留める
過剰包装の物は買わない
ごみを減らすためにすぐにでもできることはいくつもある。プラスチックごみだらけの海なんて誰も見たくないだろうが、残念ながら誰も無関係でいられない。未来の地球を考えるのならば、まずは一人ひとりの心がけが重要なのだ。
撮影/森本修大 取材・執筆/河辺さや香 編集/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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