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金銭や品物を自らの意志で組織や団体、事業に送ることを「寄付」や「寄附」という。これらにはどんな違いがあるかご存知だろうか。「寄付」「寄附」の意味やメリット、さらに「義援金」「募金」「支援金」「寄贈」などとの違いを解説。寄付の方法や種類、控除の手続きについて紹介する。
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寄付とは、公共事業や募金活動をしている組織、または事業などに自らの意思で金銭や品物などを送ることを指す。
例えば災害の被害を受けた地域を支援するために寄付を行う場合、金銭を寄付するほかに食品や日用品などの品物を送る場合もある。品物を送る寄付のことを「物品寄付」ともいう。
寄付と似ている言葉に「寄附」がある。ここでは「寄付」と「寄附」の違いについて解説していく。
寄附とは、公共事業やNPO法人などに金銭や品物を送ることを指す。言葉の意味としては「寄付」と同じである。
「寄付」と「寄附」の意味は同じだが、使用する場面で使い分けがなされている。公的機関や法律関連で用いられる公共文書や法令文書の中で使われる場合は「寄附」を用いることが一般的で、それ以外の場では「寄付」が用いられることが多い。
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「寄付」や「寄附」と似通った言葉に「義援金」「支援金」「募金」「寄贈」などがある。ここでは、それぞれの言葉の意味の違いについて詳しく解説していく。
義援金とは寄付金のひとつで、災害などの被災者一人ひとりに対して分配されるお金のことを指す。被災者個人が公平に受け取れる見舞金のような性質を持っており、被災地での救命・復旧活動には使われない。被害を受けた人たちに「直接金銭を贈って支援したい」と考える人に向いている支援の仕方である。
ただし被災者数や被災状況を把握してから公平に分配されるため、義援金が被災者の手に届くまでには時間がかかるという特徴がある。(※1)
支援金とは寄付金のひとつで、被災地で支援活動を行うNPO法人や団体に送られ、現地での救命や復旧活動に使用されるお金を指す。支援金を贈った機関や団体の判断のもと、人命救助やインフラ整備などに役立てられる。被災者からの要望に応じて各機関や団体が柔軟に使用できるため、すぐに現地で活用されるという特徴を持つ。
ただし支援金の使い道は各機関や団体の判断で決定されるため、支援金の使途や収支報告を確認することが大切である。
募金とは、文字通り「お金を募って集めること」を指す。もともとは「お金を送る」寄付とは反対の意味合いを持つ言葉であるが、「募金活動に協力して寄付を行う」という行為を「募金する」と表現することも多い。「募金」と「寄付」が、同じ意味合いを持つという認識で使われる場面も増えている。
正しくは、募金箱を持ってお金を集める側が「募金」活動を行っているのであり、募金箱にお金を入れる側は「寄付」していることになる。
寄贈とは、公共性の高い組織や事業に対して無償で物品を送ることを指す。例えば学校にタブレット端末や学習教材などを送る場合や、図書館に書籍を送る場合などには「寄贈」という言葉が使われる。寄贈の対象には、お金は含まれず、物品のみだ。
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イギリスに本部を置く慈善団体Charities Aid Foundationが、2022年に世界での寄付の状況調査を行った。(※2)調査は「見知らぬ人を助けた」「寄付を行った」「ボランティア活動をした」という寄付行動に関する3つの質問に答えるものだ。
日本では、「見知らぬ人を助けた」「寄付を行った」「ボランティア活動をした」に回答した人の合計が20%で、調査対象国119カ国中118位で、ワースト2位という結果となった。
この結果を踏まえると、日本における寄付文化は諸外国に比べると十分に浸透していないように見える。しかし日本における個人寄付推計総額は、ふるさと納税を含めると約1兆2,000億円と、10年前の2.5倍になっている。(※3)
2011年の東日本大震災やコロナ禍を経て、災害援助や応援を必要とする団体や事業を支援したいという意識が高まり、寄付をするという行動が身近なものとなりつつあるようだ。寄付を行うことで「困っている人を助けられる」「手をさしのばすことができる」という意味とメリットがあるだろう。
また近年クラウドファンディングやふるさと納税など、寄付をしやすい制度や環境が整えられてきたこと、節税になるといった知識が浸透してきたことも大きな理由のひとつだ。
ひとことで寄付といっても、その方法はさまざまだ。ここでは寄付の方法と種類について詳しく解説する。
寄付の種類で一番オーソドックスなのが、お金を寄付する方法だ。現金の他にクレジットカードを利用して寄付を行うこともできる。また「1回限りの寄付」か、毎月継続して一定金額の寄付をする「定額寄付」を選択することも可能だ。
寄付を受け付けている団体のなかには、現金だけでなく物品の寄付を募っているところもある。例えば消印のない未使用や書き損じのハガキ、使わなくなった服、ランドセルなどが挙げられる。受け付けている品物の種類は団体によって変わるため、寄付を行う前にどんな品物が求められているのかをよく確認しておこう。
現金や物品だけでなく、ポイントを寄付するという方法もある。例えばふだん使っているクレジットカードに付与されるポイントや、NTT DOCOMO、楽天などの各種サービスで溜まったポイントを寄付することもできる。また飛行機をよく利用する人は、溜まったマイレージを寄付に充てることも可能だ。寄付できるポイントの単位や寄付できる団体は各種サービス会社や航空会社によって異なるため、ホームページなどで確認しておこう。
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国や地方公共団体、または特定の法人に寄付を行った場合には「寄附金控除」を受けられる可能性がある。
寄付金控除が制定されたばかりの頃、寄付金控除の対象は「所得控除」のみだったが、2011年に税制改正が行われた後には認定NPO法人、公益社団法人などに対する寄付金のうち、一定のものについて「所得控除」か「税額控除」のいずれか有利な方を選択できるようになった。ここでは寄附控除の仕組みについてさらに詳しく解説していく。
税額控除は確定した所得税額から控除される。税額控除はそれぞれ次の計算で算出できる。
1.認定NPO法人等寄付金特別控除
認定NPO法人等寄付金特別控除額=(寄付金額-2,000円)×40%
ただし、特別控除額はその年分の所得税額の25%相当額が限度となっている。
2.公益社団法人等寄付金特別控除
公益社団法人等寄付金特別控除額=(寄付金額-2,000円)×40%
ただし、1と同様に特別控除額はその年分の所得税額の25%が限度となっているので注意が必要だ。
所得控除は、税率をかける前の課税所得から控除される。所得控除は次の計算で算出することができる。
寄付金控除額=寄付金額-2000円
ただし特定寄付金の合計額には上限があり、所得金額の40%相当額までが限度となっているため注意が必要だ。
寄付金控除は、特定寄付金の支払いを行った場合に受けられる。特定寄付金とは、以下の団体に対して行った寄付のことを指す。(※4)
1.国または地方公共団体に対する寄附金
2.指定寄附金
3.特定公益増進法人に対する寄附金
4.特定公益信託の信託財産とするために支出した金銭
5.認定NPO法人等に対する寄附金
6.政治活動に関する寄附金
寄付を行っただけでは、寄付金控除を受けることはできない。寄付金控除を受ける場合には確定申告を行う必要がある。確定申告は郵送のほか、必要書類を税務署に提出する、e-Taxを利用してインターネット上で手続きを行うなどでもできる。
日本でも身近なものになりつつある寄付。自分の応援したい団体や事業に貢献できるだけでなく、条件を満たせば寄付金控除を受けられるため、節税対策としても注目を集めている。金銭のみならず物品やポイントなどを寄付する方法もあるため、自分のライフスタイルに合った寄付の方法を見つけてみよう。
※1 支援金と義援金の違い|日本財団
※2 CAF 世界寄付指数 2022|Charities Aid Foundation
※3 -Slide Deck 2023-日本の寄付市場予測|©日本ファンドレイジング協会
※4 寄付金控除の概要|内閣府NPOホームページ
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