Photo by Enrico Cano
電気を利用できる人は、人口のおよそ4人に1人という、アフリカのブルキナファソ。乾季には最高気温が40℃を超える日もあるというが、冷房がなくても涼しく快適に保つ建物がある。地元出身のフランシス・ケレ氏がつくりだした、地元の素材を使った粘土について紹介する。
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Photo by Siméon Duchoud
サハラ砂漠の南側、西アフリカにあるブルキナファソ。国の発展レベルの指標となる、国連開発計画(UNDP)の人間開発指数が、191か国中184位と、世界的にも貧困国のひとつだ。
アフリカ開発銀行のデータによると、2020年時点で電気を利用できる人は人口の22.5%と、インフラの整備もまだ不十分である。しかし、乾季には最高気温が40℃以上にも見舞われる。
そんななか、内部を快適な温度に保つ建物がつくられている。それが、ブルキナファソのガンド村出身の建築家、フランシス・ケレ氏がつくったガンド小学校だ。
ケレ氏がデザインした学校や孤児院には、コンクリートはほとんど使われず、泥でつくられている。コンクリートは高価であり、同国では現場まで輸送する必要がある。また製造工程で廃棄物も出てしまう。
そこで、ケレ氏が目をつけたのが、ラテライトと呼ばれる現地の土壌だ。ケレ氏によると、ラテライトの泥を“赤ちゃんのお尻のように”なめらかになるまでたたき、それをレンガとして建材にする。
建物の上部には、非常に軽量な金属製の屋根を設けている。冷えた空気が建物の内部を下から上に流れ、上部の暑い空気を外に押し出すような仕組みだ。これによって、本来なら冷房が必要になるほど暑い時期でも、快適に過ごせて、省エネになる。
この建物のおかげで、内部は快適な温度に保たれ、生徒は授業に集中できるという。またソーラーパネルも設置されていて、その電気によって、生徒は夜間に学校にきて勉強したり、携帯電話を充電したりできるそうだ。
Photo by Erik-Jan Ouwerkerk
ケレ氏は、この学校以外にも、孤児院など地元のさまざまな建物の建築にたずさわってきた。そして、2022年には「建築界のノーベル賞」と言われるプリツカー賞を受賞。アフリカ出身の建築家として初めての快挙となった。
彼は、奨学金でドイツに留学した経験をもつ。しかし、そのときに多くの人が彼の教育にお金を出してくれたことから、「私の現在行っている活動の理由は、コミュニティのため」と語っている。
Photo by Erik-Jan Ouwerkerk
ドイツで学んできたケレ氏が、泥の粘土を提案した際は、地元に驚きをもたらしたに違いない。資金も資材も限られ、インフラも不十分なこの国で、いかに安価で快適な材料をみつけることが大切か。最終的には地元の理解を得て、現在の建物が完成した。
深刻化する気候変動によって、ブルキナファソのような貧しい国の人々は、ますます厳しい気候のなかでの暮らしを強いられることになるだろう。そのようななか、ケレ氏のような知恵が人々を救う光になるかもしれない。
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