ソマリア初、女性がつくる「女性のためのテレビ番組」開始 タブーなテーマも議論

ソマリアの女性ジャーナリストがインタビューする様子

Photo by UNDP

ソマリアで、女性制作チームと女性司会者による、同国で初となる時事番組が始まる。女性の視点から、タブー視されがちなテーマや、女性が直面する課題に焦点を当て、その解決策に向けた議論を展開する。

Kanae Tahara

Freelance PR / Writer

社会貢献×ライフスタイルを軸にした日本国内の企業で広報、PR、コンテンツ制作などの経験を積み、2023年よりフリーに。現在カナダ在住。

2024.02.19
EARTH
編集部オリジナル

地球を救うかもしれない… サキュレアクトが出合った「未来を変える原料」と新たな挑戦

Promotion

スタッフが全員女性 生理などタブーな議題も

ソマリアの女性メディアチーム「Bilan」のうち3名の姿

Photo by UNDP

ソマリア初の女性主導のテレビ番組が、3月8日の国際女性デーからスタートする。
制作スタッフは全員女性。司会も女性が務め、パネリストの少なくとも半数は女性で構成される。番組の形式はイギリスのBBC「Question Time(クエスチョン・タイム)」と同様で、全国を巡りながら視聴者参加型のディベートが展開される。

番組では、タブーとされがちなトピックにも切り込み、女性の視点からさまざまな問題を取り上げる予定だという。政治、文化、経済、環境など、女性が積極的な役割を果たし、自分たちの意見を表現する場がここから広がっていくことを、番組の狙いとする。

ソマリアの女性メディアチーム「Bilan」が取材する様子

Photo by UNDP

2023年12月に行われたパイロット版では、「学校での生理教育」に焦点を当て、その問題を浮き彫りにした。ソマリアでは生理の話題が学校でも家庭でもされることはなく、生理のことを知らずに初潮を迎える若い女性が多いという。知らないこと、つまり情報の不足による女性の不安を取り除くことを強調し、教育現場における改革などを議論した。

番組の司会を務めるナイマ・サイード・サラ氏は、「生理などに関するトピックを公の場で議論することを誇りに思います。これまで女性たちはこういったテーマに触れる機会がほとんどなく、この番組はその一環として重要な役割を果たすでしょう」と述べた。

ソマリア唯一の女性メディアチームが指揮

ソマリア唯一の女性メディアチームによるTV番組制作の様子

Photo by UNDP

番組の制作を担うのは、ソマリアで唯一の女性メディアチーム「Bilan(ビラン)」。2022年に国連開発計画(UNDP)の支援を受けて設立された。

メンバーは、ソマリア全土から集まった女性ジャーナリスト6名。企画、取材、撮影、編集などすべての権限が彼女たちに一任されている。設立の目的は、彼女たち、つまり「女性が伝えたい内容を安全な場所で伝える」ことであり、これまでソマリアでほとんど報道されていなかったことをテーマに扱う。

例えば、HIVとともに生きるソマリア人、児童虐待、産後うつなど、ソマリアで暮らす女性の物語を中心にしている。

ソマリアで深刻な男女格差問題

ソマリア唯一の女性メディアチームによるTV番組制作の様子

Photo by UNDP

ソマリア唯一の女性メディアチームやテレビ番組が立ち上げられる背景には、ソマリアにおける男女格差問題がある。ソマリアでは性別による差別がいまだに大きく、その差は世界的に見ても深刻だ。

経済的にも社会的にも、女性が自立して男性と同等の権利で生活することが難しく、メディア業界においても同様で、男性優位の社会で女性はほとんどいないという。

そのためにメディアで女性にまつわる物語はほとんど取り上げられることはなく、女性の深刻な情報不足につながり、社会問題にもなっている。

「ビラン」はそんな状況下で立ち上がったチームであり、彼女たちの使命感は大きい。彼女たちによって報道された話題はこれまで公にされていなかったことばかりであり、問題提起によって支援や議論を巻き起こし、実際の解決につなげようとしている。

【2023年最新】ジェンダーギャップ指数全ランキング 日本は過去最低の125位

関連記事

ジェンダー平等に向けた一歩

カメラの脚立を持つ笑顔のソマリアの女性ジャーナリスト

Photo by UNDP

現在「ビラン」は欧州連合から3年間の資金援助を受けており、2024年にはさらにメンバーを増やし、活動規模を拡大していくという。

ジェンダー平等の推進に向けて一歩を踏み出すソマリアの女性たちは、多様性と平等が尊重される社会の実現に向けて、歩み出している。このソマリアの女性たちの新しい挑戦を通じて、ジェンダー平等への取り組みを世界中で行っていくことの重要性を再確認できるのではないだろうか。

※掲載している情報は、2024年2月19日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends