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難民問題は年々深刻化しているが、日本の難民受け入れの現状はどうなっているのだろうか。本記事では、世界や日本の現状について触れながら、日本の難民受け入れが少ない理由や、受け入れのメリットやデメリットについて解説する。さらに、個人でできる支援についても紹介していく。
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世界には、故郷を追われ、避難生活を送らざるを得ない状況の「難民」と呼ばれる人々が多く存在している。日本にいると身近な問題として捉えにくい言葉だが、「難民」とはどのような人々を指すのだろうか。
1951年に採択された難民条約の第1条では、難民を「人種、宗教、国籍、政治的意見または特定の社会集団に属するという理由で、自国にいると迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れ、国際的保護を必要とする人々」と定義している(※1)。
わかりやすくいうと、「人種や宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると危害を加えられる、あるいはその可能性があるために他国に逃れた人々」のことである。
2022年のデータによると、約1億840万人が迫害や紛争などで故郷を追われている。これは、世界の74人に1人、世界人口の1%以上の割合である。
約1億840万人のうち、約3530万人が難民。約6250万人が国内避難民(自国の紛争や迫害が原因で家を追われ、国外に出ず国内で避難している人々)。約520万人が、庇護希望者(自身の故郷から逃れて、他の国の避難所にたどり着き、その国で庇護申請を希望する人々)である。
このように難民が発生してしまう原因は、紛争や内戦、人種差別、宗教問題、自然災害などさまざまだ。
世界で一番難民が多い国であるシリアは、2011年にシリアの政府軍と反政府軍との間で衝突した「シリア紛争」の影響で、故郷を離れなければならない市民が多く発生した。
記憶に新しいウクライナの戦争でも、多くの難民が生まれた。ウクライナの難民は、2021年末時点で2万7,300人だったが、2022年末時点で570万人にまで増加。これは、第2次世界大戦以降、全世界でもっとも急速に広がった難民危機といわれている(※2)。
日本ではこれまで、どのくらい難民を受け入れてきたのだろうか。
1982年の難民認定制度導入から、2021年までの申請数は91,664人。そのうち難民認定されたのが1,117人である。また、難民と認定しなかったものの、人道上の配慮を理由に在留を認めたものは5,049人となっている。
日本の難民認定数は極めて少ないとされており、2022年のデータを見ると、難民認定したのは202人。認定率は2.0%であった。もっとも多く受け入れたのは、ドイツ。46,787人を受け入れ、認定率は20.9%。もっとも認定率が高かったのがイギリスで、68.6%の難民を受け入れている。
各国の状況は違うため単純に数字だけで比較はできないが、日本の認定数202人、認定率2.0%という数は、日本としては過去最多であったものの、他国と比較すると非常に少ないことがわかるだろう。
日本の難民受け入れ数が少ない理由は、難民の認定基準と手続き規準が関連しているといわれている。難民条約に難民の定義は書かれているものの、具体的な説明はなく、解釈は各国ごとに異なる。日本の解釈は世界的に見ても非常に厳しく、そのうえ、手続きを行う際にも、証拠集めのむずかしさや言語の問題など、ハードルが高いことが理由として挙げられる(※3)。
日本が難民の受け入れに消極的であることに対して、国内外から批判の声も多い。ここからは、難民を受け入れるメリットについて考えていこう。
難民を受け入れることでの懸念点やデメリットは考えられるものの、シンプルに「困っている人を助ける」という人道的観点だけでいえば、難民は受け入れるべきだろう。
そのほか、前述したように日本は難民の受け入れ数が極めて少なく、国際社会から批判されている状態にある。難民を受け入れ、人道的責任を果たすことで、国家としての信用や発言力が高まることも期待できる。
経済的な観点では、難民を受け入れることで労働力が増えるというメリットが期待されている。
日本は少子高齢化とそれに伴う人口減少によって、労働力人口も減少傾向にある。しかし労働力の需要は増加の傾向にあり、近い将来、労働力不足に陥ることが懸念されている。そのような状況を打開するためにも、難民を受け入れることによって労働力を確保できるというメリットが考えられるのだ。
実際に、近年移民が増加したチリでは、若くて優秀な労働力を獲得できたことから、経済にプラスの影響があったとされている(※4)。
他国が多くの難民を受け入れるなか、非常に少ない認定数である日本。各国ごとに状況が異なるとはいえ、「難民鎖国」といわれ、国際社会から批判されるのも仕方がないだろう。
日本の難民認定制度そのものが、「難民認定申請者に対して差別的な対応を取っているなど」などの理由から、国連の人権条約機関から何度も勧告を受けているそう。日本は国際基準に則って、制度を見直す必要に迫られているのだ。
日本が対応を改善すれば、国際社会からの信頼を得ることができ、国際協力の観点でもプラスになるだろう。
ここからは、難民受け入れに対する懸念や、考えられるデメリットについてみていこう。
難民を受け入れることで、犯罪の増加やテロの危険性も否定できない。
たとえば、2015年11月にフランスで起きたパリ同時多発テロ事件では、難民として欧州に入国した人から2人の実行犯が出ている。
さらに、難民の受け入れは、経済と社会に利益をもたらす「明日のためのチャンス」だとして、2015年には110万人もの難民を受け入れたドイツでは、同年12月31日から2016年1月1日にかけ、「ケルン大晦日集団性暴行事件」が発生した。アラブ人や北アフリカ人ら約1,000人によるドイツ人女性に対する性的暴行や強盗事件が繰り広げられたのだ。
日本の難民審査の厳しさに批判がある一方で、このような事件を受けて、日本の対応は正しいと支持する声も挙がっている。
それぞれの文化や常識、価値観、生活様式、コミュニケーションスタイルなど、社会的習慣が違うことから衝突することも懸念されている。お互い歩み寄ろうとしても言葉の壁や習慣の違いから、摩擦が生まれてしまい、双方にとってストレスとなることも考えられる。
現在快適に暮らしている日本人にとって、新たな文化や価値観を持つ難民を受け入れることは、生活が変化してしまう可能性があり、憂惧するのも理解できる。
難民が自立して生活できるまで支援する衣食住や生活費などは、受け入れた国が負担することになっており、難民支援にコストがかかることも懸念点のひとつだ。
国が払うお金、つまりそれらは税金から捻出されるので、「国の税金を難民支援に回すなら自国民に使うべき」という声も多い。また、難民が増えるほど支援に必要な金額が大きくなるため、社会保障のコストも上がることが予想されている。
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難民認定制度を整えることはなかなかむずかしいかもしれないが、難民支援のために個人でできる取り組みもある。ここでは、個人で難民支援のためにできることについて紹介しよう。
紛争や内戦など、さまざまな理由で故郷を追われる難民は増加傾向にあり、問題は年々深刻化している。現状受け入れ人数が少ないとはいえ、難民を受け入れる側である日本では、多くの人がしっかりとこの問題について理解を深める必要がある。
そして、その正しい知識や理解した内容を人に伝えることで、共感の輪が広がり、より大きな支援が可能になるだろう。
難民が慣れない日本で安心して暮らしていくには、さまざまな支援が必要だ。言語や文化など、生活面でサポートしているNGOやNPOに募金や寄付をすることも、ひとつの支援となる。
寄付や募金以外にも、古着や本などの物資を支援する方法もある。ただし、物資は在庫の管理や扱いがむずかしいことから、受け入れが限られる場合があるので、支援金の方がより難民にとって必要な支援につなげやすいといわれている。
日本で生活をしていると、難民問題を身近に感じることはなかなかむずかしい。だからといって知らん顔をするのではなく、関心を持ち、積極的に理解を深めることが重要だ。そして、難民として日本にやってきた人々が少しでも安心して生活できるよう、できることから支援をしてみてはどうだろうか。
参考
※1 難民の地位に関する1951年の条約|UNHCR Japan
※2 難民の出身国・受入国|国連UNHCR協会
※3 日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から|認定NPO法人 難民支援協会
※4 移民増加がチリ経済に与える効果|J-STAGE
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