生活のために自分の意思で国や地域を離れた人を移民、生きていくために強制的に国や地域を離れた人を難民と呼ぶ。その違いは地域を出てきた理由の違いによって区別される。この記事では、それぞれの言葉の意味や世界の難民問題のなかから2つの事例を取り上げて解説を加える。
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移民と難民は、自らが住む国や地域を出た理由の違いによって区別される。移民は生活のために自分の意思で国や地域を離れた人を指すのに対して、生きていくために強制的に国や地域を離れた人を難民と呼ぶ。
難民とは、戦争や政治的な迫害、武力抗争、人権侵害などが原因で、居住区域を離れた人のことを指す。1951年の「難民の地位に関する条約」では、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受けるおそれがあるために他国に逃れた」人々と定義されている。
一方、移民については正式な法的定義はないが、「移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々」を移民と見なすことが一般的である。移動の期間によって、3カ月~12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住と呼び区別される。
ここでは、現在世界でとくに問題になっている難民問題を取り上げる。なお、データについては国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の「グローバル・トレンズ・レポート(年間統計報告書)」を参照した。
2010年にチュニジアで起こった「ジャスミン革命」に端を発し、北アフリカ全土に広がった「アラブの春」。1963年から軍事独裁政権が敷かれているシリアでも、独立への動きが広まっていくことになる。
ところが、2011年に民主化を求めるデモをアサド政権が弾圧したことから、内戦が始まった。現在では政権側が反政府勢力からほとんどの主要都市を取り返し、紛争は収束に向かいつつあるが、長きに渡る紛争によって国民の大半が住む場所を失った。
報告書によると、この内戦で発生したシリア難民は670万人。これは同国民の3割に相当し、世界最悪の難民発生国となっている。
ロヒンギャは主にミャンマー西部のラカイン州に暮らす約100万人のイスラム系少数民族。インドのベンガル地方(現在のバングラデシュ)にルーツを持ち、イスラームを信仰している。
第二次世界大戦後にラカイン州に流入したロヒンギャだが、1962年に軍事政権が誕生すると差別的に扱われるようになり、1982年には法改正によって国籍が剥奪される。
その後、ロヒンギャへの差別や迫害は激しさを増し、2017年にはロヒンギャの武装集団と警察・軍との大規模な衝突が発生。多くの住民が隣国のバングラデシュに避難した。
報告書は、2019年時点でのロヒンギャ難民数を110万人と推定している。
報告書によると、世界でおよそ7080万人が、難民として故郷を追われている。難民問題は政治や宗教、民族などの対立が原因で発生する場合が多く、どうしても解決には時間がかかってしまう。また、難民への資金援助などは日本や世界各国が行なってはいるものの、金額が不足しており、充分な支援を受けられない難民も多い。
日本に住む私たちが行える難民支援としては、やはり寄付だろう。例えば国連UNHCR協会や国連WFP協会、国境なき医師団などの国際的な団体や、国内のNPOやNGOが、寄付を受け付けている。Webサイト上で少額から募金できるケースがほとんどなので、あなたもぜひ、寄付金を送ってみては?
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