アメリカの公立学校での給食は有料であることが多く、年間1,500ドル(約22万円)近くかかるといわれる。だが8つの州では、朝食と昼食が無料となる「ユニバーサル学校給食プログラム」を導入。子どもの飢えをなくし学力向上につなげる狙いがある。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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現在、アメリカでは8つの州(ミネソタ州、ニューメキシコ州、コロラド州、バーモント州、ミシガン州、マサチューセッツ州、カリフォルニア州、メイン州)で、公立学校の朝食と昼食が無料になる「ユニバーサル学校給食プログラム」が実施されている。さらに、2023年8月中旬にイリノイ州でも同プログラムの法律が可決された。
ユニバーサル学校給食プログラムが拡大する背景には、新型コロナウィルスの影響がある。パンデミックの真っ最中、失業等で経済的に苦しい家庭が増えたことから、アメリカ政府の支援によって、全米の学校で生徒全員に食事を無料提供。そのおかげで、学校に通う生徒が急増した。
しかし、アメリカ政府の支援が終了すると、従来通りの有料の制度に戻した州が多い。アメリカでは、自治体により制度が異なるが、大多数の学区で給食は有料だ。参考までに、筆者が暮らすニューヨーク州の学区内では、公立学校の1食あたりの給食費は以下の通りである。
小・中・高校の朝食:2ドル(約290円)
小学校の昼食:3.55ドル(約520円)
中・高校の昼食:3.75ドル(約550円)
困窮家庭や移民といった要件を満たす場合は、申請すると割引または無料になる(世帯収入による資格給付制限あり)が、ユニバーサル学校給食プログラムが導入されていない州では、多くの家庭が学校給食をまかなうのに苦労する。朝食と昼食を合わせて、生徒1人当たり年間1,500ドル(約22万円)かかる可能性があると専門家は語る。
そこで、上述した9州では公立学校での食事の無料化に踏み切ったのだ。ミネソタ州教育省の栄養プログラム責任者は、「食事で十分な栄養がとれると、生徒の学習能力や集中力が向上することがわかっている。私たちは、子どもの『食事できない』という恐怖を取り除く」と語っている。
学校給食の無料提供は、プログラムの受給資格を満たさないが、経済的な余裕が十分とは言えない家庭にとっても大いに役立つものだ。州より資金が追加されることで、食事内容の質やメニューの改善等にもプラスに働く。
例えば、ニューメキシコ州では新法により、さらに3,000人以上の生徒が無料で食事できるようになっただけでなく、州が学校に調理設備のグレードアップを義務付けている。結果的に、今まで以上に多くの食事を一から調理することが可能となった。
子どもの飢えや栄養不足を撲滅するために、現在複数の州が、世帯の収入に関係なくすべての生徒に無料で学校給食を提供し始めており、さらに多くの州が移行を検討中だ。
2023年5月には、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)とイルハン・オマル下院議員は、学校の無料給食を全州に拡大する法案を議会に再提出。アメリカ全土にこの機運が高まりつつある。誰ひとり取り残さない社会の実現を目指し、この動きは今後さらに加速するだろう。
※参考
Schoolkids in 8 states can now eat free school meals, advocates push for nationwide policy|Aiken Standard
States that Have Passed Universal Free School Meals (So Far)|New York City Food Policy Center
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