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現代社会において、休息の時間をとることは心身の健康にとって大切なこと。最近注目されつつある「ニクセン」という考え方を日常生活のなかに取り入れることで大きな変化が見られるという。その方法や効果をポイントにまとめながらわかりやすく紹介する。
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エレミニスト編集部
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ニクセン(オランダ語ではNiksen)とは、オランダ語で「あえて何もしないこと」「目的を持たずに時間を過ごすこと」を指すリラックス方法のこと。あらゆる忙しさから一旦離れ、1日に5〜10分の休憩をとってリラックスし、あらゆるものから解放されるというものだ。
忙しない現代社会では常にオンの状態になってしまい、気付かぬうちに疲れやストレスをため込んでしまう人も多い。ニクセンは、ストレスや燃え尽き症候群の改善に効果的な手法として注目を集めているだけでなく、想像力を高め、ひらめきを生み出せる方法としても注目されている。
ニクセンが広まった背景には、忙しい毎日を送らなければならない現代社会において、精神的な不調が現れる人が急増したことにある。日本だけでなく、世界で燃え尽き症候群になる人も増加。そんななか、2019年にニューヨークタイムズでニクセンが紹介されたことを機に、数々のメディアが取り上げ、現在では日本語を含む複数の本が刊行されている。これらがきっかけで、何もしないことや目的のない行動を肯定し、忙しい日々から一旦離れることで心の余白を生もうとする人々が増加した。
ニクセンと同様に、ストレスから自分を解放して創造性や生産性を高めるためのアプローチとして「マインドフルネス」が存在する。この2つは似ているかのように思えるが、実は反対のアプローチだと言われている。
マインドフルネスは、「いまこの瞬間に意識を向けて雑念を取り払うこと」を大切にしている一方で、ニクセンは「雑念が生じることや時間がただ過ぎていくことを許し、ありのままのであること」を大切にしている。自分にとってより効果的な方法で始めてみるのがいいだろう。
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専門家等も日々の生活にニクセンを取り入れることを推奨しており、それによって得られる効果はたくさんある。多くの人々がニクセンを自然と取り入れているオランダは、2023年の世界幸福度ランキングで5位にランクインした。実際にどのようなメリットや効果があるのだろうか。
まずは「何もしない」時間を許すことが大切。自分を義務感や生産性から解放することで心身がリラックスできるようになり、ストレスが軽減する。ストレスが減ることによって、燃え尽き症候群を防ぐことにもつながる。
ぼーっとすることで脳内にセロトニンという神経伝達物質が分泌され、自律神経が整い、心が落ち着いてポジティブな気持ちになることができる。自律神経を整えることは、呼吸や内臓の動き、血流にも大きな影響を与えるとされている。血流がよくなれば、体や脳にエネルギーや酸素が行きわたるほか、病原菌やウイルスと戦う免疫細胞も運ばれる。これにより、体が活性化され、免疫力も高まるのだ。
ニクセンを行い、しっかりと心身を休めることで、ストレスや負荷のかかった状態から脳を解放することができる。何もしない時間をとることで、これまで向き合ってこなかったさまざまな思考や感情に気づくことができるのである。仕事の合間や通勤電車の中で、少しの間でもぼーっとする時間を設け、窓の外を眺めてみると、空の色や雲の形など、いままで通り過ぎてしまっていたことに気付かされる。呼吸が整い、頭の中が整理されることでひらめきが生まれたり、生産性を高めたりする効果もあり、仕事の効率を上げることにもつながると言われている。
何もしない時間をつくることで日常に余白が生まれ、ストレスも軽減する。精神的にもリラックスできるため、ニクセンを取り入れることによって穏やかな気持ちで日々を過ごすことができるようになる。
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ニクセンを取り入れる際には、まず「何もしない」ことに罪悪感を持つことからやめてみよう。現代社会において、何かしていなければならないという考え方を一旦手放し、自分のことに集中することが大事だ。
一方で、「何もしない」「何も考えない」というのは意外に難しく、苦手意識を持っている人も多いだろう。もしぼーっとすることが苦手と感じたら、目的なく何かをしてみるのも効果的。例えば、何も考えずに洗い物をしたり、単純作業をすることもニクセンになる。大事なのは、その作業に集中することなく、「セミオートマチック」にできること。
「何もしない」ことが、自分の脳内を整理し、考えを熟成させていると考えるだけでも、ニクセンを行うことをプラスに捉えられるのではないだろうか。自分に合ったニクセンの方法を見つけて、仕事の合間や移動中など、日常生活に取り入れてみよう。
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日常生活のなかですぐに始められるニクセンのやり方を紹介する。日常生活に取り入れやすいやり方を見つけて、1日5分だけでも取り入れてみよう。
家の窓や通勤中の電車の車窓から外の景色をぼーっと眺めてみよう。雲の流れや木々、街並みなど、これまで見過ごしていた何かに気づくことができるかもしれない。
家のソファやベランダ、公園のベンチに座って、心地よい音楽の音色を楽しもう。何もせずに目を瞑るとさまざまなことが頭の中をよぎることもあると思うが、心の赴くままにその様子を観察していると、新たなアイデアや考えが生まれることも。
カフェでコーヒーやお茶を片手に、街の景色や人の動きをぼんやりと眺めてみたり、公園のベンチやベランダに座って温かい太陽の日差しを感じたり自然の音を楽しもう。そうすることで、心身をリラックスさせ、頭のなかを整理することができるだろう。
毎時間、毎分気にしてしまうスマホの通知。画面を見続けてしまうことも、情報過多な現代においては脳が疲れてしまい、ストレスにもつながる。何もせず、何も考えない時間をつくるために、スマホの電源を切るだけでもとても大きな変化があるだろう。
多忙なスケジュールや目の前のことを一旦手放し、仕事が始まる前や終わった後、お昼休憩など自分に合ったタイミングを見つけ、快適な空間のなかで一息つけるリラックスした時間をつくることが大切だ。ニクセンをすることで自然と呼吸が深まり、心に余裕ができ、自分や周りの環境に目を向けることの大切さを思い出させてくれるだろう。
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日常生活に「何もしない」時間を設けるのは、決して怠けているのではなく、必要な時間だ。ただぼーっとしたり、美しい景色を眺めるなど、ニクセンは生活のなかに無理なく取り入れることができるので、少しでも「忙しい」「疲れている」と感じたら、取り入れてみることをおすすめしたい。心身ともにリラックスできるだけでなく、新たなひらめきが生まれたり、仕事の効率が上がったりと、いい効果が得られるだろう。
■書籍のご紹介
週末は、Niksen(ニクセン)。山本 直子 (著)
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