廃棄物の80%リサイクルに成功 オーストラリア「クイーン・ビクトリア・マーケット」の取り組み

“メルボルンの台所”として知られる「クイーン・ビクトリア・マーケット」の外観

“メルボルンの台所”として地元の人々はもちろん、多くの観光客が訪れる「クイーン・ビクトリア・マーケット(QVM)」。オーストラリア産の新鮮なや野菜の他、衣料品、雑貨、飲食など600を超える店舗が軒を連ねている。そんなQVMではさまざまなサステナブルな取り組みを行っている。

夏目 円(なつめまどか)

美容ライター/エディター

オーストラリア在住。大学卒業後、出版社にて編集者を務めたのち独立。美容ライター・エディターとして20年以上のキャリアがあり、50歳を機にメルボルンに移住。現地でのナチュラルコスメ、ビュー…

2023.07.21

コンポストで生ごみを処理 廃棄物の80%リサイクルに成功

オーストラリア「クイーン・ビクトリア・マーケット」の内観

まずQVMで大きな課題となっているのが、青果、生鮮食品店で出る食品ロスだ。QVMで発生する廃棄物全体の大きな割合を占めることから、リサイクルを行うことが重要課題だそう。

QVMでは、生ごみは専門の施設に運ばれ、再生可能なクリーンエネルギーに変換されているという。また、魚介類の内臓は飼料や肥料にし、紙や段ボールはパルプとして再利用。プラスチック包装は、シュリンクフィルムなどに加工されて再び使われるそうだ。

2021年には、QVMが掲げていた「廃棄物の80%をリサイクルする」という目標を達成し、埋立処理量も前年度に比べて848トン削減することに成功したという。

生ごみを大幅に削減 ミミズが暮らすコンポスト

そんなQVMの食品ロス削減に貢献しているのが、マーケットの敷地内に5か所ある「ワームファーム」だ。ワームとはミミズの意味で、ミミズの働きによって生ごみを堆肥化するコンポストが設置されているのだ。

上述の再生可能エネルギーへの変換のほかに、QVMで出る毎日2kgの生ごみが、ここで栄養たっぷりの肥料に変わる。この肥料は、マーケット周辺にある鉢植えや植木に使われているそうだ。

オーストラリア「クイーン・ビクトリア・マーケット」のコンポストでできた堆肥が使われる植木

ワームファームでできた肥料は、マーケット内の植木に使われる。

オーストラリアではメジャーなワームファームは、持続可能でかつ安価、維持費もかからない。環境にやさしく、豊かな肥料を提供する最良な方法と言える。実際にボックスを開けてもらって中をのぞいたら、元気なミミズがうじゃうじゃいた。野菜くずやお茶の葉、コーヒーのかす、卵の殻などいっぱいに入っていたが、不思議なことに悪臭がしなかった。

コーヒーの紙コップもリサイクル

オーストラリア最大のカップリサイクルプログラム“SIMPLY CUPS”のリサイクルステーション

「SHIMPLY CUPS」はカップ、フタ、その他のマドラーなどに分別。QVMの他、セブンイレブンでも同様の取り組みが行われている。

オーストラリアはコーヒー文化が根付いている。QVMでもカフェをはじめとした飲食店が多いことから、紙コップの需要が高いという。そこで採用しているのが、オーストラリア最大のカップリサイクルプログラム「SIMPLY CUPS」のリサイクルステーションの設置。

使用済の紙コップをごみ箱に捨てるのではなく、SIMPLY CUPSの専用スタンドに戻すことで、屋外家具など日常生活で使用できるさまざまな製品に生まれ変わる。このリサイクルステーションは、マーケット内の4カ所に設置されている。

コーヒーかす・魚の骨まですべて分別・リサイクルを徹底

マーケット内を歩いているとよく目にするのがカラフルなごみ箱。以下のように5つに分別されている。

・一般ごみ(赤):プラスチック袋やカキの貝殻、ティッシュなど
・リサイクル(黄):プラスチックのペットボトル、ガラス瓶、アルミニウム缶など
・肉・骨(オレンジ):肉や魚の骨など
・果物・野菜(緑):果物や野菜などの残り
・コーヒー(茶):コーヒーかす

このボックスはいたるところにあり、一般客も分別しなければならない。清掃員がこまめに周辺を掃除しているので、床にごみが散らかっていたり、ニオイがしたりすることもない。

ソーラーパネルで年間1300トン以上のCO2を削減

オーストラリア「クイーンズ・ビクトリア・マーケット」の屋根に設置されたソーラーパネル

知らないとなかなか気づかないソーラーパネル。広いマーケットの屋根一面に設置されていた。

QVMでは、CO2削減の取り組みも行っている。マーケットの屋根には650枚以上のソーラーパネルが設置され、そこから電力が供給されている。この取り組みによって、年間90万kwhを発電。年間1300トン以上のCO2と、10万ドル(約940万円)の電気代を削減できるそうだ。

このソーラー・システムの設置は、2027年までにCO2排出量ゼロの目標に向けて欠かすことのできない取り組みのひとつとなっている。

エコバッグは当たり前 プラントベース由来の袋も

日本でも浸透しているが、QVMでの買い物はエコバッグ持参がマスト。とくにQVMは、使い捨てプラスチックを極力減らすことが公然のルールなので、客は大きな袋をさげたり、カートをひいていたりする人が多い。もしも忘れた場合は、ロゴ入りの洒落たロゴバッグを購入してもいいし、 “Pick -A -Box”にある段ボールを無料でもらって使うのもいいだろう。

オーストラリア「クイーンズ・ビクトリア・マーケット」で使われているプラントベース由来の袋

葉物の野菜やマッシュルームは、プラントベース由来の袋に入れる。

また、野菜などを入れる透明の小さな袋は、オーストラリアのBiogone社製。マイクロプラスチック不使用で、生分解して有機物となり、天然の肥料として利用できるプラントベース由来の袋を設置している。

QVMは新鮮な野菜や果物、おいしいお肉やお魚などが手に入る、メルボルンに暮らしている人々になくてはならない場所。用を済ませばすぐに帰ることが多かったが、今回はマーケットが主催するサステナブル・ツアーに参加。それによって新しい一面を知ることができ、マーケット全体で環境問題に取り組んでいる姿勢を肌で感じることができた。

このようなサステナブルな取り組みを人々に知ってもらうことも、また環境に配慮した生活を送っていくためにも大切なことだろう。

QVMを訪れる機会があれば、ぜひ今回紹介した“サステナブルスポット”を見つけてほしい。

※掲載している情報は、2023年7月21日時点のものです。

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