Photo by Priscilla Du Preez on Unsplash
アンダードッグ効果とは、劣勢・不利な立場にある人が魅力的に見えて、応援したくなる心理現象をいう。「underdog effect」の英語から来た由来や意味を解説。さらに、具体的な例のほか、マーケティング、営業などのビジネスシーンにおける活用例について紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
アンダードッグ効果とは、劣勢や不利な状況にある方を応援したくなる心理現象のこと。例えば、スポーツの試合で一方が劣勢で、誰もが「絶対に負けるだろう」と思う状況になったとき、劣勢な側を応援したくなる気持ちが芽生えることがあるだろう。それが、まさしくアンダードッグ効果だ。
英語の「underdog(アンダードッグ)」には、「勝ち目のない人・チーム」「かませ犬(引き立て役になる弱い相手のこと)」の意味があり、この言葉が由来。日本語では、「判官贔屓(ほうがんびいき)」も同じ意味をもつ。
アンダードッグ効果の具体的な例をあげよう。
体の大きな選手と、身長も体重も小さい小柄な選手が対戦するとき。観客が明らかに劣勢となる小柄な選手の方を応援したくなるのは、アンダードッグ効果のいい事例だ。
ある候補者に関して「当選はとても無理」という内容が報じられると、その候補者が予想外に当選することが起こる。これは、アンダードッグ効果でその人に同情する票が集まったことが理由だ。
営業成績が伸び悩んでおり、なかなか目標の売上に達することができない営業マンがいるとしよう。成績が抜群の営業マンからある商品について売り込みを受ける場合に比べて、お客さんは前者の営業マンから商品を購入して、応援したくなる気持ちが生まれるだろう。これは、ビジネスシーンや営業の場面で生まれるアンダードッグ効果によるものと考えられる。
外では仕事をこなし、部下や後輩を引っ張る頼りがいのある男性が、女性の前で自分の弱みを見せると、女性はその男性を応援して共感する心が生まれる。これもアンダードッグ効果の例だ。
アンダードッグ効果と相反する言葉に「バンドワゴン効果」がある。バンドワゴン効果は、多数の人が支持している物事は、その支持がよりいっそう高くなる現象だ。例えば、世間の多くの人から好かれる人気俳優は、人々にさらに魅力的に映り、その人気がどんどん高まっていくことがある。
アンダードッグ効果とバンドワゴン効果はどちらも、事前に人々にもたらせる情報によって、人々の心理が影響を受けるものだ。これらを「アナウンスメント効果」という。
Photo by Alex Gorin on Unsplash
アンダードッグ効果が生まれるのは、なぜだろう。人々の心理には、次のような感情が芽生えると考えられる。
劣勢の人やチームがすでに勝負をあきらめていては、アンダードッグ効果は生まれない。たとえ厳しい形勢にあっても、一生懸命に頑張ると、その姿を見た人々は心をゆすぶられ、応援したい気持ちが生まれてくる。
赤ちゃんや高齢者を見ると、私たちは「守らなければならない」という気持ちが働く。私たちには、弱いものは守るべきという本能のような考えがあると言われている。アンダードッグ効果では、そのような心理と似ており、弱い側を応援して守りたくなるのだ。
明らかに不利な人やチームが必死に頑張っていく姿には、人々を感動させる力がある。仮に逆転勝利することができれば、ドラマチックな結果となって、さらなる感動を生むだろう。
では、アンダードッグ効果が生じるためには、どんな条件が必要となるだろう。
勝負が見えているような逆境にあれば、あきらめてしまうことがあるかもしれない。しかし、そんな苦しい状況であっても一生懸命に立ち向かう姿を見ることで、人々のなかには「応援したい」というアンダードッグ効果が生まれる。
さらに、ふだんの行動を知っていることもアンダードッグ効果には必要だ。不利な状況になる前のふだんの姿を知っているからこそ、不利になったときに頑張る姿を見て、人々は「頑張ってほしい」と思うものだ。
Photo by Austin Distel on Unsplash
アンダードッグ効果は、ビジネス(営業やマーケティング)のほか、恋愛など、さまざまな場面で活用できる。具体的な例を挙げてみよう。
「誤って商品を多く発注し、商品が大量にあまってしまっている」「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でお客さんがぱったりこなくなってしまった」など、厳しい状況にある店舗が、それを正直にSNS等で明らかにして「応援してほしい」と呼びかけたところ、多くの客が集まったというケースがある。これは、本来なら店としては明らかにしたくない弱みや逆境にあることを明かすことで、人々の心理が「それなら応援しよう」という気持ちになるアンダードッグ効果の例だ。
アンダードッグ効果は、企業や店舗のマーケティングでもよく使われる。例えば、企業や店舗のWebサイトやブログで、新入社員が担当することになったら、あえて新人であることを明らかにして記事をつくっていくことが、手法のひとつだ。まだ一人前にはなっていない新人が、失敗をしながらも成長していく様子を配信することで、顧客の「応援したい」「成長を見守っていきたい」という気持ちを生み出せるだろう。
不利な情勢にあっても、アンダードッグ効果で予想外に逆転することだってあり得る。そんなアンダードッグ効果は、狙ってできるものではなく、逆境に追い込まれたときに自然とできる手法だ。企業のマーケティングや営業のシーンや、SNSでのブランディング、広告などとも関連性のある手法のため、覚えておいて損はないだろう。
ELEMINIST Recommends