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WHOが発表したデータにおいて、2022年版の世界平均寿命ランキングが公開された。日本の順位に注目してみよう。また平均寿命が長い国・短い国、それぞれが抱える「課題」にも注目。ランキングから透けてみえる社会の実情に迫る。
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平均寿命とは、「0歳時点での平均余命」を意味する言葉だ。0歳の子どもがあと何年生きられるのか、その平均値を求めた数値である。日本は世界的にみても、「平均寿命が長い国」と注目されている。
一方で、寿命を迎えるそのときまで、すべての人が健康に過ごせるわけではない。だからこそ、昨今注目されているのが健康寿命である。厚生労働省によると、健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のこと。当然、健康寿命は平均寿命よりも短くなる。両者の差を縮めることが、社会の安定化や社会保障費の圧縮につながるだろう。(※1)
世界の平均寿命に関するデータは、世界保健機関(World Health Organization:WHO)が公開している。WHOはすべての人々の健康を増進し保護するため、互いにほかの国々と協力する目的で設立された国際団体であり、世界194の国と地域が加盟。このコラムで紹介する統計は、WHO加盟国を対象にしたものだ。
WHOが発表する「World health statistics 2022: monitoring health for the SDGs, sustainable development goals」より、世界各国の平均寿命をランキング形式で紹介する。参照データは2022年のもので、数値は男女合わせている。(※2)
順位 | 国名 | 平均寿命 |
1位 | 日本 | 84.3歳 |
2位 | スイス | 83.4歳 |
3位 | 大韓民国 | 83.3歳 |
4位 | シンガポール | 83.2歳 |
5位 | スペイン | 83.2歳 |
6位 | キプロス | 83.1歳 |
7位 | オーストラリア | 83歳 |
8位 | イタリア | 83歳 |
9位 | イスラエル | 82.6歳 |
10位 | ノルウェー | 82.6歳 |
11位 | フランス | 82.5歳 |
12位 | ルクセンブルク | 82.4歳 |
13位 | スウェーデン | 82.4歳 |
14位 | アイスランド | 82.3歳 |
15位 | カナダ | 82.2歳 |
16位 | ニュージーランド | 82歳 |
17位 | マルタ | 81.9歳 |
18位 | アイルランド | 81.8歳 |
19位 | オランダ | 81.8歳 |
20位 | ドイツ | 81.7歳 |
21位 | オーストリア | 81.6歳 |
22位 | フィンランド | 81.6歳 |
23位 | ポルトガル | 81.6歳 |
24位 | ベルギー | 81.4歳 |
25位 | イギリス | 81.4歳 |
26位 | デンマーク | 81.3歳 |
27位 | スロベニア | 81.3歳 |
28位 | ギリシャ | 81.1歳 |
29位 | クウェート | 81歳 |
30位 | コスタリカ | 80.8歳 |
31位 | チリ | 80.7歳 |
32位 | ペルー | 79.9歳 |
33位 | モルディブ | 79.6歳 |
34位 | コロンビア | 79.3歳 |
35位 | パナマ | 79.3歳 |
36位 | チェコ | 79.1歳 |
37位 | エストニア | 78.9歳 |
38位 | クロアチア | 78.6歳 |
39位 | トルコ | 78.6歳 |
40位 | アメリカ合衆国 | 78.5歳 |
41位 | エクアドル | 78.4歳 |
42位 | ポーランド | 78.3歳 |
43位 | スロバキア | 78.2歳 |
44位 | アルバニア | 78歳 |
45位 | ヨルダン | 77.9歳 |
46位 | キューバ | 77.8歳 |
47位 | タイ | 77.7歳 |
48位 | 中国 | 77.4歳 |
49位 | イラン(イスラム共和国) | 77.3歳 |
50位 | カタール | 77.2歳 |
51位 | アルジェリア | 77.1歳 |
52位 | ウルグアイ | 77.1歳 |
53位 | チュニジア | 77歳 |
54位 | スリランカ | 76.9歳 |
55位 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 76.8歳 |
56位 | アルゼンチン | 76.6歳 |
57位 | アンティグア・バーブーダ | 76.5歳 |
58位 | ハンガリー | 76.4歳 |
59位 | レバノン | 76.4歳 |
60位 | トリニダード・トバゴ | 76.1歳 |
61位 | アラブ首長国連邦 | 76.1歳 |
62位 | アルメニア | 76歳 |
63位 | バルバドス | 76歳 |
64位 | ジャマイカ | 76歳 |
65位 | リトアニア | 76歳 |
66位 | メキシコ | 76歳 |
67位 | ブラジル | 75.9歳 |
68位 | モンテネグロ | 75.9歳 |
69位 | セルビア | 75.9歳 |
70位 | バーレーン | 75.8歳 |
71位 | リビア | 75.8歳 |
72位 | パラグアイ | 75.8歳 |
73位 | ルーマニア | 75.6歳 |
74位 | ラトビア | 75.4歳 |
75位 | ブルガリア | 75.1歳 |
76位 | エルサルバドル | 75歳 |
77位 | ニカラグア | 75歳 |
78位 | ベラルーシ | 74.8歳 |
79位 | 北マケドニア | 74.8歳 |
80位 | マレーシア | 74.7歳 |
81位 | ベリーズ | 74.4歳 |
82位 | バングラデシュ | 74.3歳 |
83位 | ブルネイ ダルサラーム | 74.3歳 |
84位 | セントルシア | 74.3歳 |
85位 | サウジアラビア | 74.3歳 |
86位 | キルギスタン | 74.2歳 |
87位 | モーリシャス | 74.1歳 |
88位 | カーボベルデ | 74歳 |
89位 | カザフスタン | 74歳 |
90位 | オマーン | 73.9歳 |
91位 | ベネズエラ (ボリバル共和国) | 73.9歳 |
92位 | ベトナム | 73.7歳 |
93位 | グルジア | 73.3歳 |
94位 | モルドバ共和国 | 73.3歳 |
95位 | セーシェル | 73.3歳 |
96位 | バハマ | 73.2歳 |
97位 | ロシア連邦 | 73.2歳 |
98位 | セントビンセントおよびグレナディーン諸島 | 73.2歳 |
99位 | ブータン | 73.1歳 |
100位 | モロッコ | 73歳 |
101位 | ウクライナ | 73歳 |
102位 | ウズベキスタン | 73歳 |
103位 | グレナダ | 72.9歳 |
104位 | ドミニカ共和国 | 72.8歳 |
105位 | シリア・アラブ共和国 | 72.7歳 |
106位 | 朝鮮民主主義人民共和国 | 72.6歳 |
107位 | トンガ | 72.6歳 |
108位 | イラク | 72.4歳 |
109位 | ボリビア(多民族国家) | 72.1歳 |
110位 | グアテマラ | 72歳 |
111位 | ホンジュラス | 71.9歳 |
112位 | エジプト | 71.8歳 |
113位 | スリナム | 71.5歳 |
114位 | アゼルバイジャン | 71.4歳 |
115位 | インドネシア | 71.3歳 |
116位 | ネパール | 70.9歳 |
117位 | インド | 70.8歳 |
118位 | サモア | 70.5歳 |
119位 | フィリピン | 70.4歳 |
120位 | サントメ・プリンシペ | 70.4歳 |
121位 | カンボジア | 70.1歳 |
122位 | トルクメニスタン | 69.7歳 |
123位 | 東ティモール | 69.6歳 |
124位 | タジキスタン | 69.5歳 |
125位 | ミャンマー | 69.1歳 |
126位 | ルワンダ | 69.1歳 |
127位 | スーダン | 69.1歳 |
128位 | エチオピア | 68.7歳 |
129位 | セネガル | 68.6歳 |
130位 | ラオス人民民主共和国 | 68.5歳 |
131位 | モーリタニア | 68.4歳 |
132位 | モンゴル | 68.1歳 |
133位 | フィジー | 68歳 |
134位 | コモロ | 67.4歳 |
135位 | タンザニア連合共和国 | 67.3歳 |
136位 | ウガンダ | 66.7歳 |
137位 | イエメン | 66.6歳 |
138位 | ガボン | 66.5歳 |
139位 | ガーナ | 66.3歳 |
140位 | ケニア | 66.1歳 |
141位 | ジブチ | 65.8歳 |
142位 | ガイアナ | 65.7歳 |
143位 | マラウイ | 65.6歳 |
144位 | パキスタン | 65.6歳 |
145位 | ガンビア | 65.5歳 |
146位 | マダガスカル | 65.3歳 |
147位 | パプアニューギニア | 65.3歳 |
148位 | 南アフリカ | 65.3歳 |
149位 | バヌアツ | 65.3歳 |
150位 | ソロモン諸島 | 65.2歳 |
151位 | コンゴ | 64.7歳 |
152位 | ナミビア | 64.6歳 |
153位 | トーゴ共和国 | 64.3歳 |
154位 | エリトリア | 64.1歳 |
155位 | ハイチ | 64.1歳 |
156位 | リベリア | 64.1歳 |
157位 | ブルンジ | 63.8歳 |
158位 | ベナン | 63.4歳 |
159位 | ニジェール | 63.3歳 |
160位 | アフガニスタン | 63.2歳 |
161位 | アンゴラ | 63.1歳 |
162位 | ミクロネシア連邦 | 63歳 |
163位 | コートジボワール | 62.9歳 |
164位 | マリ | 62.8歳 |
165位 | 南スーダン | 62.8歳 |
166位 | ブルキナファソ | 62.7歳 |
167位 | ナイジェリア | 62.6歳 |
168位 | ザンビア | 62.5歳 |
169位 | カメルーン | 62.4歳 |
170位 | コンゴ民主共和国 | 62.4歳 |
171位 | ボツワナ | 62.2歳 |
172位 | 赤道ギニア | 62.2歳 |
173位 | ギニア | 61歳 |
174位 | シエラレオネ | 60.8歳 |
175位 | ジンバブエ | 60.7歳 |
176位 | ギニアビサウ | 60.2歳 |
177位 | チャド | 59.6歳 |
178位 | キリバス | 59.4歳 |
179位 | モザンビーク | 58.1歳 |
180位 | エスワティニ | 57.7歳 |
181位 | ソマリア | 56.5歳 |
182位 | 中央アフリカ共和国 | 53.1歳 |
183位 | レソト | 50.7歳 |
- | アンドラ | データなし |
- | クック諸島 | データなし |
- | ドミニカ | データなし |
- | マーシャル諸島 | データなし |
- | モナコ | データなし |
- | ナウル | データなし |
- | ニウエ | データなし |
- | パラオ | データなし |
- | セントクリストファー・ネイビス | データなし |
- | サンマリノ | データなし |
- | ツバル | データなし |
今回紹介したランキングにて、平均寿命を把握できたのは183の国と地域である。これらの数値から平均値を求めると「72.53」。WHOに加盟していない国や、データを取得できなかった国を除いた世界全体の平均寿命は「約72.5歳」である。平均寿命は、ここ数十年で大きく変化した。生まれてから死ぬまでの平均期間は、非常に長くなってきている。
「長寿国」というイメージも根強い日本のランキングは、世界1位。平均寿命は84歳を超えている。「World health statistics 2022: monitoring health for the SDGs, sustainable development goals」によると、日本人男性の平均寿命は81.5歳、日本人女性の平均寿命は86.9歳である。男女間に差がある様子がみてとれる。
平均寿命は、今後もさらに延びていくと予測される。人々の健康に関与する技術や知識は、いまだ発展途上であり、さらに進化するだろう。あらゆる病気を早期発見できるようになれば、初期治療が可能になり、リスクを最小限にできる。病気を理由に、若い時期に命を落とす可能性は低くなっていくはずだ。
一方で、ランキングからもわかるとおり、いまだ平均寿命が短い国は多い。こうした国々をどうサポートしていくのかが、世界の平均寿命を延ばすための鍵となるだろう。
ランキング上位には、経済的に豊かな国々が目立つ。社会保障が充実している国では、不調を感じたタイミングで病院にかかりやすい。手遅れになる前に治療を受け、完治に至るケースも多いだろう。国全体の医療レベルが高ければ、受けられる治療の質も申し分ない。幼い時期に亡くなる子どもの数が減少すれば、その分平均寿命は長くなる。
とはいえ、平均寿命が長い国にも問題はある。寿命が長くなれば、その分、社会保障費の負担は重くなるだろう。日本をふくめ、経済的に豊かな先進国のなかには、「少子化」という課題を抱える国も多い。平均寿命が延びれば延びるほど、「多くの高齢世代を少ない若者世代が支える」という状況が深刻化する。
また高齢者自身が抱える問題も多い。仕事から引退したあと、いわゆる「老後」の生活費をどう工面するのか、悩む人も増えるだろう。経済的に不安定な高齢者が増えれば、さまざまな社会問題を引き起こす可能性がある。
さらに、平均寿命と健康寿命はイコールではない。寿命だけが延びたところで、ずっと寝たきりでは「生きがいを感じられない」と思う人も多いはずだ。平均寿命と健康寿命の差を、できるだけ小さくするための工夫も求められるだろう。
ランキング下位には、アフリカの開発途上国の名前が目立つ。アフリカ地域の平均寿命は64.5歳。地域別で比較した場合、もっとも低い数値である。平均寿命が短い理由は、以下のとおりだ。
・貧困
・飢餓
・紛争
・衛生面での問題
これらの理由は、すべてが複雑に絡み合っている。長く紛争で悩まされてきた地域で、安定した仕事をみつけるのは難しいだろう。貧困で食べるものを入手できなければ、社会的弱者から亡くなっていく。衛生環境を整える余裕がなければ、感染症リスクも高まるだろう。これらの影響をもっとも受けてしまうのも、まだ幼い子どもたちだ。
教育が不十分なまま成長しても、貧困から抜け出すのは難しい。飢餓や衛生面の問題は、次世代へと受け継がれていく。安定した社会情勢のなか、持続的な経済発展を遂げ、人々の暮らしを安定させることが求められるだろう。
また急激な気候変動も、平均寿命を押し下げる原因の一つである。熱波や洪水といった災害に見舞われれば、国内の食料事情は悪化。亡くなる人が増えるだけではなく、紛争リスクの上昇も予測される。ひとたび紛争が勃発すれば、その影響は長期にわたって続いていくだろう。
平均寿命が短い国においては、「平均寿命が長い国であれば問題なく治癒できる原因」によって、命を失う人も多い。死因の例としては、肺炎や下痢、結核に麻しんなどが挙げられる。特に、5歳未満の幼い子どもたちの命をどう守っていくのかが、平均寿命を延ばすための鍵になるだろう。
2022年版のWHO発表データにおいて、日本の平均寿命は世界トップである。90歳、100歳を迎えるのが「普通」になっている今、少子高齢化や社会保障費の負担、老後の不安解消、健康寿命との差など、これまでにはない「課題」と向き合わなくてはならないだろう。
一方で、世界にはいまだ、平均寿命が60歳に満たない国もある。ランキングからもわかるとおり、国や地域別の「命の格差」は決して小さくないのだ。各国が抱える課題から目を背けず、それぞれの「課題」を知るきっかけにしてみてほしい。
※1 平均寿命と健康寿命|e-ヘルスネット
※2 World health statistics 2022: monitoring health for the SDGs, sustainable development goals|WHO
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