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EUが充電端子を「USBタイプC」へ統一する法案を可決。電子廃棄物の大幅削減を目的とした取り組みだ。スマートフォンやタブレット、カメラなどの小型電子機器を中心に、メーカーを問わず適用される。EUの決定を受け、アップルはライトニングからUSBタイプCへの対応の意向を示している。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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2022年10月、欧州議会で電子機器の充電端子を「USBタイプC」に統一する法案が可決された。同法案は2021年9月に欧州委員会から提出されたもので、賛成602票、反対13票の圧倒的多数で承認に至った。電子ごみ(E-waste)の大幅削減を目的とした、世界初の取り組みとして注目を集めている。
電子ごみ(E-waste)とは、電化製品や電子機器が廃棄物となったときの総称である。身近なもので言えば、スマートフォンやイヤフォンなどの電子機器、冷蔵庫や洗濯機などの家電が挙げられる。電子廃棄物は有害物質を含み、不適切に処理されることで環境と健康に被害がおよぶため、世界的に問題視されている。
そして電子ごみのなかでも規格統一の必要性が叫ばれていたのが、電子機器の充電ポートだ。EUでは、廃棄された充電器のうち未使用のものが年間約11,000トンにもおよぶ。商品買い替えの際に規格が合わなくなったり、不必要に同じ規格のものを所持したりすることが廃棄につながっているという。
今回の法案では、充電端子の統一は段階的に進められる。まずは2024年までに、携帯電話、タブレット、デジタルカメラ、ヘッドフォン、スピーカー、小型ゲーム機、電子書籍端末、キーボード、マウス、ポータブルナビの充電端子が統一される。その後、2026年までにノートパソコンも対象となる予定だ。
同時に、商品購入時には充電器の有無が選べるようになる。消費者は不要な充電器を購入せずに済むため、出費を抑えることにもつながる。金額にすると、EU全体で年間2億5千万ユーロ(約369億円)もの節約になると言われている。
国連訓練調査研究所(UNITAR)が発表した「グローバルE-wasteモニター2020」によると、2019年に世界で排出された電子ごみは5,360万トン。このうち、回収・リサイクルされたのはわずか17.4%だった。2014年のリサイクル量と比較すると1.8トン増加しているものの、電子廃棄物はそれを上回る9.2トンも増えており、リサイクルが追いついていないことがわかる。
日本では、同じ2019年に生じた電子廃棄物は256.9万トン。日本の電子廃棄物の管理システムは他国に比べて整っていると言われる。それでも、2017年時点での電子廃棄物のリサイクル率は22%に留まっている。
現代において、スマートフォンをはじめとした電子機器は多くの人にとって必要不可欠な存在だ。最新型を求めて、まだ使えるうちに買い替える人もいるだろう。リサイクル促進も大切だが、そもそもの消費や不用品の配布を減らすことが問題解決への近道になるかもしれない。
今回のEUの決定は、多くの電子機器や電化製品のメーカーにも影響を与えるだろう。すでに、AppleはiPhone用の充電端子をライトニングからUSBタイプCへ変更する意向を示している。同様の取り組みが、世界各国へと広まる日も遠くはないかもしれない。
※参考
Long-awaited common charger for mobile devices will be a reality in 2024|European ParParliament
The Global E-waste Monitor 2020|United Nations Institute for Training and Research
Global E-waste Data|The Global E-waste Statistics Partnership
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