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温室効果ガスは地球温暖化の原因のひとつである。従来であれば、地球の平均気温を適切に保つ無害な物質だ。だが産業革命以降の人類の発展により温室効果ガスの排出量が増加し、平均気温の深刻な上昇を招く事態になった。世界では温室効果ガス排出量の削減を目指し、数々の取り組みがおこなわれている。
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現在、地球上で排出される温室効果ガスはどれくらいなのだろうか。国立研究開発法人国立環境研究所がリリースした「附属書I国のガス別分野別温室効果ガス排出量データ(1990~2020年)」をもとに、2020年の温室効果ガス排出量上位15ヶ国と排出量を抽出した。(※1)
順位 | 国名 | 排出量 |
1位 | アメリカ | 5,222,411kt |
2位 | ロシア | 1,482,200kt |
3位 | 日本 | 1,096,112kt |
4位 | ドイツ | 717,473kt |
5位 | カナダ | 665,593kt |
6位 | オーストラリア | 487,591kt |
7位 | トルコ | 466,950kt |
8位 | イギリス | 409,524kt |
9位 | フランス | 384,792kt |
10位 | ポーランド | 355,062kt |
11位 | カザフスタン | 351,244kt |
12位 | イタリア | 348,847kt |
13位 | ウクライナ | 315,941kt |
14位 | スペイン | 239,194kt |
15位 | オランダ | 167,446kt |
トップの5ヶ国中、4ヶ国がG7加盟国である。とくにアメリカ(1位)と日本(3位)は他国と桁違いの温室効果ガス排出量をマークしている。ほかの3ヶ国も上位15ヶ国にランクインした。G7非加盟国の排出量も少ないとは言いがたい。
しかし調査開始年(1990年)と比較すると、一部を除き、排出量は少しずつ減少している。排出量を減らすための世界的な取り組み(後述)が功を奏した可能性が高いだろう。
とはいえ、いまだ地球温暖化が大きな懸念であることはたしかだ。原因のひとつである温室効果ガス排出量の減少のためには今後も積極的な施策が求められる。
温室効果ガスの種類は複数あり、排出される原因もさまざまだ。代表的な温室効果ガスと排出される原因を見てみよう。
二酸化炭素は、地球温暖化にもっとも悪影響がある温室効果ガスである。化石燃料(石炭・石油・天然ガスなど)の燃焼で発生する。近年は二酸化炭素排出の減少意識がグローバルスタンダードになっており、多数の取り組みがおこなわれている。
メタンは二酸化炭素の次に大きな地球温暖化の原因だ。湿地で枯れた植物が分解されるときや家畜のげっぷ、天然ガスの採掘時など、自然環境のサイクルのなかで発生する。
二酸化炭素のような害はないが、一酸化二窒素はやはり地球温暖化の一面で大きな要因を占めている。燃料の燃焼、工業過程、窒素肥料の利用、家畜堆肥の製造など、人間の産業プロセスが発生にかかわる。
ハイドロフルオロカーボン類はフロンの一種だが、オゾン層を破壊することはない。温室効果ガスとしては強力な部類に入る。自然界には存在しない物質である。発生原因はスプレー類の使用、エアコン・冷蔵庫の冷却、化学物質の製造が挙げられる。
六ふっ化硫黄は、強力な温室効果ガス。HFCsと同様、オゾン層を破壊せず、自然界には存在しない。高電圧の絶縁体として利用される。二酸化炭素の22,800倍に相当する温室効果があるとされている。
産業革命以降、人々の暮らしの利便性は急激な発展を遂げた。誰もが歓迎するよりいい生活の実現の一方で、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出量が激増したこともまた事実であり、日本も例外ではない。
日本は温室効果ガス排出量のランキングでトップ3に入る。排出する温室効果ガスの内訳では二酸化炭素が突出して多く、総排出量の90%以上をシェアしている。
2020年、日本の二酸化炭素の排出量は約10億4,400万t。温室効果ガスの総排出量の90.8%だった(※2)。日本における温室効果ガス排出量問題は、二酸化炭素の排出量問題と非常に親密だと言える。
温室効果ガス、そのなかでもメインを占める二酸化炭素の排出量の激増の理由は、ひとえに経済の成長と電力利用量の増加だ。
とくに産業分野における二酸化炭素の排出量の多さはフォーカスされ続けている。排出量が多い業種とそのシェアを見てみよう。2020年の二酸化炭素の排出量10億4,400万Tのうち、業種別シェアは以下のようになる。
業種 | シェア |
---|---|
エネルギー転換部門(発電所、製油所等) | 40.4% |
産業部門(工場等) | 24.3% |
運輸部門(自動車等) | 17.0% |
業務その他部門(商業・サービス・事業所等) | 5.5% |
家庭部門 | 5.3% |
非エネルギー起源CO2(工業プロセス・使用、焼却、その他) | 7.4% |
発電所や製油所から排出される二酸化炭素は全体の40.4%にのぼる。これは原材料となる化石燃料の燃焼が起因している。24.3%の産業部門は工場等の作業プロセスが発生源になる。17.0%の運輸部門は自動車をはじめとした陸海空における移動手段(輸送手段)で使用する燃料が原因である。
いずれも経済成長と切っても切り離せない産業であり、われわれの豊かな生活を成り立たせている重要なカテゴリーの業種だ。とは言え、地球温暖化の原因であることも間違いない。
しかし各産業部門は地球温暖化の危機に気づき、温室効果ガス排出量の削減に大きな意欲を持っている。
二酸化炭素ひとつを見ても、2013年から2020年の間に20.8%の削減に成功している。2019年からわずか1年の間だけでも5.8%削減した。各企業の熱意ある努力の成果であり、今後も数々の取り組みが積極的に継続されるはずだ。(※4)
いっぽう、残念ながら増加傾向を見せる温室効果ガスもある。とくに目立つのはハイドロフルオロカーボン類(HFCs)だ。2013年と比較すると61.0%、2019年との比較では4.0%の増加がマークされている。
前述のとおり、ハイドロフルオロカーボン類は強力な温室効果を持つ物質であり、スプレー類や冷媒、化学薬品の製造に幅広く利用されている。オゾン層を破壊しないため、破壊成分を持つ従来の物質・フロンの代替成分として利用が広がった。
その結果、オゾン層破壊の危険性を遠ざけることに効果を見せた反面、地球温暖化問題の大きなネックになってしまっている。二酸化炭素だけではなくハイドロフルオロカーボン類の削減にもフォーカスし、強く力を入れるべきだろう。
温室効果ガス排出量の削減を目指す取り組みは世界でもおこなわれている。そのきっかけは1970年代にまでさかのぼる。科学の発展により地球環境についての研究が進み、地球温暖化が深刻な状態にあるという事実に有識者たちが気づいたのだ。
その流れを受け、1985年にオーストリアで開かれたフィラハ会議で地球温暖化問題を取り上げ、世界で問題意識が共有されるようになった。
続いて1988年には国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)によって「気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)」が設立された。地球温暖化に関する科学的なデータを各国の政府間で検討するための場であり、現在も定期的な報告書をリリースしている。
そして昨今では、温室効果ガス排出量の削減はSDGsのゴール13「気候変動に具体的な対策を」とも深い関わりを持つ。地球温暖化による気候の変動を防ぐことが目的であるゴール13は、温室効果ガスの排出量削減とダイレクトな関係であることは言うまでもない。
SDGsは人類共有の課題を解決するためのグローバルな取り組みだ。有識者の気付きからおよそ半世紀経過したいま、世界の人々があらためて温室効果ガスと地球温暖化に向き合うことが望ましいだろう。
そのためには具体的なアクションが必要だ。世界では温室効果ガス排出量の削減に向け、数々の取り組みをおこなっている。
2015年、国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP21)において採択された協定。2016年より効力を発揮した。内容は以下のとおりである。
1:産業革命以前と比較し、世界の平均気温の上昇を2℃より低く保ち、かつ、1.5℃内に抑える
2:そのために世界の温室効果ガス排出量のピークアウトを早急に実現し、21世紀後半までに温室効果ガスの排出量と森林による吸収量のバランスを取る
2020年以降の温室効果ガス排出量削減目標の骨子として、各国政府が重要視する協定である。
温室効果ガス排出量が世界1位のアメリカでは、1500億ドルを投じたクリーン電力プログラムに着手した。従来の化石燃料からクリーンエネルギーにシフトする企業にリターンをもたらす内容である。
同時に2030年までに二酸化炭素の排出量を50%削減(2005年比)、2030年までに新車の半数を電動化、2050年までにカーボン・ニュートラルを実現するとの目標を掲げている。
日立物流では二酸化炭素の排出量の削減に注力している。目標は2030年までに2018年比の30%削減だ。
そのために、再生可能エネルギーの利用や省エネ設備の導入、電気運用の改善、業務の主軸となる車輌にエコカーの導入やエコドライブの推進をおこなっている。
1970年代に温室効果ガスの危険性が提唱されてから約半世紀が経過した。当時と比較すればはるかに発達した産業や人々のライフスタイルは温室効果ガス排出量を増加させた。
しかし同様に、発達した技術によっての削減が可能なはずだ。実際、すでに排出量削減の効果が実感できるデータも生まれはじめている。
現状では二酸化炭素の削減がフォーカスされることが多いが、温室効果ガスは多種類におよぶ。いずれも削減を目指す必要がある。
国家や企業が主導となる対策のほか、個人でもはじめられるアクションがあるはずだ。マイバッグの利用、紙ストローへのシフトなど、人によっては小さなことに思えるかもしれない。
だが小さいと思えることでも、人々の行動が積み重なれば、温室効果ガス排出量の削減、ひいては地球温暖化の解決につながっていく。ライフスタイルのなかで無理なく取り入れられることからはじめてみよう。
※1 日本の温室効果ガス排出量|国立環境研究所
※2 2020 年度(令和 2 年度)の温室効果ガス排出量(確報値1)について(3ページ目)|環境省
※3 2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要(5ページ目)|環境省
※4 2020年度温室効果ガス排出量(確報値)概要(4ページ目)|環境省
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