2月20日の「世界社会正義の日」とは? 目的を知り社会正義の実現へ

スーツを着た男性の後ろ姿

Photo by Saulo Mohana on Unsplash

2月20日は国連が定めた「世界社会正義の日」である。日本ではあまりよく知られていないが、社会正義の実現は、世界が抱える共通課題と言えるだろう。世界社会正義の日が制定された経緯や目的、社会正義が直面する課題について解説する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.11.17
ACTION
編集部オリジナル

知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート

Promotion

2月20日の「世界社会正義の日」とは

世界社会正義の日とは、毎年2月20日にやってくる国際デーである。国連で採択されたのは2008年、実際に祝われるようになったのは2009年である。比較的歴史の浅い記念日であり、日本での知名度もまだまだ低い。ちなみに英語表記は「World Day of Social Justice」だ。

世界社会正義の日が制定された目的は、「社会正義の必要性の啓発」である。社会正義とは、法の下の平等や同一労働・同一賃金など、社会通念上正しいと判断される道理を指す。少し難しいが、公正で平等な社会を実現するため、欠かせない視点と言えるだろう。

世界はさまざまな問題を抱えており、21世紀以降、問題が深刻化するスピードは加速している。

・貧困問題
・特定の集団による他集団や個人の排除
・男女間の不平等
・失業問題
・人権にまつわるさまざまな確執や差別

解決に向けた取り組みは決して少なくないものの、不平等で不公正な状況の完全な解決には至っていない。2008年の採択は、こうした状況に世界中があらためて目を向け、その取り組みを推進させていくことを大きな目的としていた。

国連の専門機関のひとつである国際労働機関(ILO) は、社会正義の拡大やディーセント・ワークの推進を目的にさまざまな取り組みを行っている。世界社会正義の日には、毎年ILO事務局長によるメッセージを発信。社会正義の重要性を説いている。

ディーセントワークとは SDGsとの関係と日本が抱える課題

関連記事

過去の世界社会正義の日に関連した取り組み

世界社会正義の日がスタートしてから10年以上が経過した。社会正義の重要性とその拡大に向けて、毎年さまざまなテーマが設定されている。それぞれの年のテーマには、世界が抱える問題を色濃く反映。解決に導くため、多くの取り組みが行われてきた。

最近のテーマと実際の取り組み内容に注目してみよう。

2019年|平和と発展、社会正義が大きなテーマに

世界社会正義の日の重要性を説くILOにとって、2019年は設立から100年という節目の年であった。この記念の年に設定されたテーマは、「平和と発展を望むならば、社会正義に向けて努力せよ」だ。

社会正義は、それ自体が永続する平和の基礎となる。また自分自身が自由に選択した仕事に就き、生き生きと働くことも重要だと言えるだろう。当時のILO事務局長は、社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、両者の重要性を説くメッセージを世界に向けて発信した。

2021年|デジタル経済と社会正義

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるった2021年。この年のテーマは「デジタル経済における社会正義の呼びかけ」であった。コロナ禍の影響で、社会構造は急激に変化。世界の最貧層の増加や多くの女性のキャリアへの影響、さらにさまざまな産業分野での後退が注目された。

日本においても、デジタル経済が急激に発展する一方で、社会正義にまつわるさまざまな課題が取り上げられた。リモートワークに携わる人々の労働条件や、会社による過度な監視などが挙げられるだろう。

また地域ごとの産業はもちろん、教育面においても、地域ごとのデジタル格差が指摘された。こうした問題をまずは把握し、認識することの重要性を説いたのだ。

2022年|正規雇用と社会正義

2022年の世界社会正義の日のテーマは、「正規雇用による社会正義の実現」である。新型コロナの影響が、まだまだ色濃い2022年。正規雇用とそれ以外の人々との格差は、急激に拡大している。

貧困や不平等といった問題を解決するために、雇用の正規化は前提条件と言えるだろう。社会的保護や雇用関連の給付を一切受けられない非公式(インフォーマル)労働者は、貧困状態に陥りやすい。日本においても、決して他人事ではない問題である。問題解決に向けた、さらなる努力が求められている。

社会正義が直面するさまざまな課題

社会正義の実現は、公正・公平な社会を実現するために欠かせないものだ。世界中の多くの人々が、社会正義の実現を望んでいると言えるだろう。しかし現実には、さまざまな課題に直面し、実現に向けた動きが停滞してしまうケースも少なくない。

社会正義が直面する課題には、具体的にどういったものが挙げられるのか。3つの事例を紹介しよう。

世代を超えて連鎖する貧困問題

社会正義の実現に向けて、解決するべき問題のひとつが貧困問題である。日々の食料を入手することさえ難しく、非常に厳しい状況に置かれている人も多い。日本では、絶対的貧困が問題視される機会は少ないが、誰にとっても他人事ではないのが相対的貧困問題だ。とくに「子どもの貧困」は深刻化している。

貧困が原因で十分な教育を受けられなければ、その子どもたちが貧困層から抜け出すのは困難である。結果として、貧困は次世代へと連鎖していく。貧困状態にある人々をどう支援し、どのように教育の機会を保証するのかが、非常に大きな課題と言えるだろう。

人々の心に根強く残る差別意識や不寛容さ

社会正義の実現を阻む課題は、我々の心のなかにも潜んでいる。自分とは違う相手に対する差別意識や不寛容さが、社会不正義の原因のひとつだ。

はっきりした差別意識はもちろん、無意識のジェンダー観も課題と言えるだろう。たとえば、「家事や育児は女性の仕事」といった古い価値観は、女性の社会進出や自己実現を阻む要因になり得る。無意識であればあるほど、意識改革は難しいだろう。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック

2020年から、世界でパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、社会正義の実現を阻む大きな壁となった。経済状況の悪化により、収入の低下や失業に悩む人が増加。また主に女性に対するケアワークの負担が上昇し、仕事との両立に悩んだ人も少なくない。

また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発端とする、アジア系人種に対するヘイトクライムも記憶に新しい。格差や差別、貧困にジェンダー問題など、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに、あらゆる課題が表面化した。

世界社会正義の日に「社会正義」を知ろう

日本では、まだまだ知名度が低い「世界社会正義の日」。社会正義と言われても、具体的なイメージが浮かばない人も多いのかもしれない。だからこそ重要なのは、まず興味を持ち、知ることである。世界社会正義の日は、そのきっかけになるだろう。

日本で開催されるイベントはまだ少ないが、テーマに注目するだけでも、十分に意味がある行動だ。世界が抱える社会正義に関する課題に注目してみてほしい。

※掲載している情報は、2022年11月17日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends