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2月20日は国連が定めた「世界社会正義の日」である。日本ではあまりよく知られていないが、社会正義の実現は、世界が抱える共通課題と言えるだろう。世界社会正義の日が制定された経緯や目的、社会正義が直面する課題について解説する。
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世界社会正義の日とは、毎年2月20日にやってくる国際デーである。国連で採択されたのは2008年、実際に祝われるようになったのは2009年である。比較的歴史の浅い記念日であり、日本での知名度もまだまだ低い。ちなみに英語表記は「World Day of Social Justice」だ。
世界社会正義の日が制定された目的は、「社会正義の必要性の啓発」である。社会正義とは、法の下の平等や同一労働・同一賃金など、社会通念上正しいと判断される道理を指す。少し難しいが、公正で平等な社会を実現するため、欠かせない視点と言えるだろう。
世界はさまざまな問題を抱えており、21世紀以降、問題が深刻化するスピードは加速している。
・貧困問題
・特定の集団による他集団や個人の排除
・男女間の不平等
・失業問題
・人権にまつわるさまざまな確執や差別
解決に向けた取り組みは決して少なくないものの、不平等で不公正な状況の完全な解決には至っていない。2008年の採択は、こうした状況に世界中があらためて目を向け、その取り組みを推進させていくことを大きな目的としていた。
国連の専門機関のひとつである国際労働機関(ILO) は、社会正義の拡大やディーセント・ワークの推進を目的にさまざまな取り組みを行っている。世界社会正義の日には、毎年ILO事務局長によるメッセージを発信。社会正義の重要性を説いている。
世界社会正義の日がスタートしてから10年以上が経過した。社会正義の重要性とその拡大に向けて、毎年さまざまなテーマが設定されている。それぞれの年のテーマには、世界が抱える問題を色濃く反映。解決に導くため、多くの取り組みが行われてきた。
最近のテーマと実際の取り組み内容に注目してみよう。
世界社会正義の日の重要性を説くILOにとって、2019年は設立から100年という節目の年であった。この記念の年に設定されたテーマは、「平和と発展を望むならば、社会正義に向けて努力せよ」だ。
社会正義は、それ自体が永続する平和の基礎となる。また自分自身が自由に選択した仕事に就き、生き生きと働くことも重要だと言えるだろう。当時のILO事務局長は、社会正義とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、両者の重要性を説くメッセージを世界に向けて発信した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるった2021年。この年のテーマは「デジタル経済における社会正義の呼びかけ」であった。コロナ禍の影響で、社会構造は急激に変化。世界の最貧層の増加や多くの女性のキャリアへの影響、さらにさまざまな産業分野での後退が注目された。
日本においても、デジタル経済が急激に発展する一方で、社会正義にまつわるさまざまな課題が取り上げられた。リモートワークに携わる人々の労働条件や、会社による過度な監視などが挙げられるだろう。
また地域ごとの産業はもちろん、教育面においても、地域ごとのデジタル格差が指摘された。こうした問題をまずは把握し、認識することの重要性を説いたのだ。
2022年の世界社会正義の日のテーマは、「正規雇用による社会正義の実現」である。新型コロナの影響が、まだまだ色濃い2022年。正規雇用とそれ以外の人々との格差は、急激に拡大している。
貧困や不平等といった問題を解決するために、雇用の正規化は前提条件と言えるだろう。社会的保護や雇用関連の給付を一切受けられない非公式(インフォーマル)労働者は、貧困状態に陥りやすい。日本においても、決して他人事ではない問題である。問題解決に向けた、さらなる努力が求められている。
社会正義の実現は、公正・公平な社会を実現するために欠かせないものだ。世界中の多くの人々が、社会正義の実現を望んでいると言えるだろう。しかし現実には、さまざまな課題に直面し、実現に向けた動きが停滞してしまうケースも少なくない。
社会正義が直面する課題には、具体的にどういったものが挙げられるのか。3つの事例を紹介しよう。
社会正義の実現に向けて、解決するべき問題のひとつが貧困問題である。日々の食料を入手することさえ難しく、非常に厳しい状況に置かれている人も多い。日本では、絶対的貧困が問題視される機会は少ないが、誰にとっても他人事ではないのが相対的貧困問題だ。とくに「子どもの貧困」は深刻化している。
貧困が原因で十分な教育を受けられなければ、その子どもたちが貧困層から抜け出すのは困難である。結果として、貧困は次世代へと連鎖していく。貧困状態にある人々をどう支援し、どのように教育の機会を保証するのかが、非常に大きな課題と言えるだろう。
社会正義の実現を阻む課題は、我々の心のなかにも潜んでいる。自分とは違う相手に対する差別意識や不寛容さが、社会不正義の原因のひとつだ。
はっきりした差別意識はもちろん、無意識のジェンダー観も課題と言えるだろう。たとえば、「家事や育児は女性の仕事」といった古い価値観は、女性の社会進出や自己実現を阻む要因になり得る。無意識であればあるほど、意識改革は難しいだろう。
2020年から、世界でパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症(COVID-19)も、社会正義の実現を阻む大きな壁となった。経済状況の悪化により、収入の低下や失業に悩む人が増加。また主に女性に対するケアワークの負担が上昇し、仕事との両立に悩んだ人も少なくない。
また新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を発端とする、アジア系人種に対するヘイトクライムも記憶に新しい。格差や差別、貧困にジェンダー問題など、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をきっかけに、あらゆる課題が表面化した。
日本では、まだまだ知名度が低い「世界社会正義の日」。社会正義と言われても、具体的なイメージが浮かばない人も多いのかもしれない。だからこそ重要なのは、まず興味を持ち、知ることである。世界社会正義の日は、そのきっかけになるだろう。
日本で開催されるイベントはまだ少ないが、テーマに注目するだけでも、十分に意味がある行動だ。世界が抱える社会正義に関する課題に注目してみてほしい。
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