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毎年12月5日は、世界土壌デーに制定されている。世界の土壌が抱えている問題や、危機的状況にあらためて注目してみよう。世界土壌デーが制定された目的や、具体的な土壌問題についてわかりやすく解説。まずは「知る」ことからスタートしよう。
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世界土壌デーとは土壌資源に対する理解を深め、その認知度を高める目的で制定された国際デーである。英語表記は「World Soil Day」で、国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)が2013年に制定した。
世界土壌デーを前に、「なぜ土壌に注目するのか?」と疑問を抱く人もいるかもしれない。我々の足元に広がる土壌は、あらゆる生物や植物を支える基盤である。またよりいっそうの農業開発と安定した食料供給のためにも、質の高い土壌を確保することは極めて重要と言えるだろう。
しかし実際には、世界が抱える土壌問題は年々深刻化している。2015年にFAOが発表した「世界土壌資源報告」では、全世界の土壌のうち33%が侵食や塩類集積、圧密や酸性化および化学物質による汚染が原因で劣化していると報告された。FAOは、これ以上肥沃な土壌が失われれば、近い将来、深刻な食料危機が訪れるだろうと警告したのだ。(※)
日本で12月5日を世界土壌デーだと認識している人は、決して多くはないだろう。とはいえ、世界の土壌が抱える問題は、我々人類にとって極めて重要なものである。また残念ながら、決して楽観視できる状況ではない。こうした状況をまずは知り、関心を寄せ、具体的な行動に移していくことこそが、この国際デーの目的なのだ。
世界土壌デーが制定されたのは、2013年のことであった。12月に行われた国際連合総会において、決議文を採択。また同時に、2015年を「国際土壌年」と制定した。土壌に関する問題は、たとえ何らかの対策を施したとしても、一朝一夕で結果に結び付くわけではない。継続的な認知度向上の機会を持つとともに、将来に向けて、よりいっそうの対策をスタートする時期を明確化したのである。
その後、2015年の国際土壌年が終わる際に、ふたたび大きな流れが生まれる。世界の土壌改善に向けた取り組みをたった1年で終了させないため、国際土壌科学連合(International Union of Soil Sciences:IUSS)は、2015年から2024年までの10年間を「国際土壌の10年(International Decade of Soils)」とすることを宣言した。つまり2022年現在、いまだその最中である。
日本においても、世界土壌デーに関連したイベントや取り組みは数多く行われている。日本の土壌を知るための土壌標本「モノリス」を展示する博物館は多い。また、日本の土壌が抱える深刻な問題をより広く知ってもらうための啓もう活動も盛んに行われている。
世界土壌デーを前に、世界の土地がどのような危機に直面しているのか、具体的に学んでみよう。とくに近年深刻化している問題点を、3つ紹介しよう。
土のなかに存在している土壌微生物は、有機物を分解して土壌有機物をつくり出す。土壌有機物の主な成分は有機炭素である。近年、この有機炭素の減少が深刻化しているのだ。これによって作物の生産性は低下し、収穫された作物に含まれる栄養素も少なくなってしまう。農薬や化学肥料を使った農業が一般化した弊害だと指摘される。
また近年注目されているのが、地球温暖化との関連性である。土壌中の炭素が空気中に放出されれば、温室効果ガスへと変化する。いかに土壌中の有機炭素量を増やし、空気中の温室効果ガスを減少させるかが非常に大きな課題となっているのだ。
土壌の表面に塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウムといった塩類が集積する「塩類化」も、土壌の劣化を促進する深刻な問題である。乾燥地域における不適切な“かんがい”は、深刻な塩類集積を招く原因のひとつだ。インドやパキスタン、アメリカや中国など、かんがい農業が広く行われている国において、とくにその被害は深刻である。
とはいえ塩類化は、自然科学的な要因によってももたらされる問題で、そのメカニズムは複雑であり解決は非常に難しい。急激な土壌劣化を食い止めるために、具体的な取り組みが求められる。
雨や風によって土壌表面の土が流出してしまう問題を、土壌侵食と言う。土壌表面の土は作物を生産する上で、非常に重要な役割を果たす。それが侵食されれば、作物の生産性は大幅に低下する。主に開発途上国で深刻化している問題だ。さらに土壌が流出する先にある湖や貯水池で洪水や水質汚染を引き起こしてしまう原因にもなり得る。
土壌侵食の原因は、無計画な木材の伐採や限度を超えた耕作と言われている。危機的状況を改善させるため、森林再生に向けた取り組みを行っても、そもそも生産性が低下した土地では森林再生が難しい、という悪循環が生じているのだ。
世界が抱える土壌問題は、食料問題や環境問題とも直結している。つまり我々日本人にとっても、決して他人事ではない。とはいえ農業従事者でない限り、ふだん「土壌の状態」に気を配る機会は少ないものだ。
世界土壌デーは、1年に一度の機会でもある。世界の土壌が抱えている問題を知り、どう解決していくべきか考えてみよう。たとえ小さな1歩だとしても、ひとりひとりにできる行動が見つかるかもしれない。
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