【後編】有機栽培の第一人者・橋本力男氏が伝授 失敗しない自作コンポストのコツ

インスタライブ番組「JUICY TALK ONLINE」の5月31日配信回のゲストに、堆肥化リサイクルや土壌の研究に携わってきた橋本力男氏らが登場した。橋本氏は、家庭でコンポストを続けるコツやおいしい野菜づくりの秘訣などを披露。日本の有機農業を救うためには、味のわかる消費者が増えることが大事だと語った。

2020.07.10

Sunshine Juice(サンシャインジュース)のコウノリ氏が、さまざまな業界の専門家をゲストに招き、「健康」をテーマにクロストークを展開するインスタライブ番組「eatrip seed club presents "JUICY TALK ONLINE"」。5月31日配信回には、堆肥化リサイクルや土壌の研究に携わってきた橋本力男氏と料理人の野村友里氏がゲストとして登場した。

前編では、堆肥化の基本のキを語った模様をお届けした。後編は、視聴者からの質問を中心に、有機農業のレベルをあげるための提言や日本でリサイクルを根づかせるための仕組みなどを語った。

植物性堆肥と動物性堆肥の違い

橋本力男氏(以下、敬称略):コウさん、そういえば(最近は)ビーツ、つくっているよ。

コウノリ氏(以下、敬称略):ほんとですか!

橋本:いまうちでつくっている。

コウ:僕、ビーツが大好きで。いろんなビーツがほしいんです。

橋本:大きさはどれくらい? 10cmくらい?

コウ:それは任せます。一番ベストな状態で。ありがたいです。それこそ、僕らのサンシャインジュースの残渣(ざんさ)でつくった堆肥と牛糞の堆肥を使って、土と肥料だけを変えて、ビーツをつくったんですよ。

ジュースの残渣を混ぜた堆肥

ジュースの残渣

それでジュースを絞って、飲み比べをやったんですけど。入れている堆肥が動物性の牛糞堆肥か、植物性のサンシャインジュースの残渣を発酵させてつくった完熟堆肥かの違いで、できあがるビーツのサイズも違ったし、味も違ったんですよね。同じ場所でやったんですけど。

橋本:味が違ったんですか?

コウ:はい。ジュースはすごい正直に味が出るので、わかりやすかった。あと僕がすごく思ったことは、動物性の牛糞堆肥を使ってできたほうが、量も多いし、一個一個がパワフルでモリモリしているんですよ。

サンシャインジュースの残渣の堆肥のほうは、もうちょっとスカスカという感じなんですけど。でも飲み比べたお客さんに「どっちがおいしいですかね?」と聞くと、ほとんどが「サンシャインジュースのほうがおいしい」と答えたんですよ。

人間と似ているというか、動物性の栄養素が多い土で育ったほうが、サイズも大きくなって。プロテインをバンバン飲んでトレーニングをして筋肉モリモリになった人と、ヴィーガンでいい野菜を食べて(体をつくって)いる人、それと同じことが、植物世界でも行われているんだなと感じました。

サンシャインジュースでつくったコンポスト

サンシャインジュースでつくったコンポスト

有機農業を救うのは「味がわかる消費者」

橋本:ベジタリアン堆肥と肉食堆肥との違いなんですよ。何を畑に投入するかによって、味は全部変えられるということなんですよ。質のいいものも、質の悪いものもつくることはできるんですけど、もちろん有機で、やっぱりベジタブル。落ち葉とか草とか、植物性素材の堆肥でつくったほうが、香りから持ちから全部が違う。

自然界の山でも、鹿の糞とか、コウモリの糞とか、カブトムシの糞があるように、自然界の森林でも、2%ぐらいの糞尿が還元されているなと思います。

ベジタリアン堆肥だけで栽培するのが正しいのかというと、僕はいろいろやったうえで、5%以上の糞尿を畑に還元してるんですよ。あとは植物性の堆肥です。

味も変えるの簡単です。ただその味がわかる人がいるかいないかというのが問題。ほとんど97%の人は、味はわかんないと思うよ。

だから味がほんとにわかる人相手に、いい堆肥をつくって、いい野菜をつくるっちゅうことをやっていかないと、日本の有機農業のレベルはいつまでも、うんこ堆肥で終わってしまうと思うんだよね。だけど何を投入したかによって、野菜の味はすべて変えられるということなんですよ。

とくに根菜類なんかは正直。土そのものを吸うからね。いま言ったように牛糞堆肥でつくったビーツとベジタリアンの……米ぬかも基礎で入ってるんだけど、それでつくった堆肥のビーツは、絶対違うんですよ。

深い香りなり、味なり、それを全部嗅ぎ分けられる人物がいないと有機農業は死んでしまうということですよ。

野村友里氏(以下、敬称略):先生に質問です。魚はどうですか?

橋本:堆肥に?

野村:はい。

橋本:魚を入れても大丈夫ですよ。魚も卵も、鶏一匹堆肥とかでも問題ないですよ。

野村:馬の堆肥はどうですか?

橋本:馬は草食動物なので、全然いいと思いますね。ただ馬だけではうんこ堆肥なので、少し米ぬかなり、少しコーヒーかすなり、そういう植物性のものも加えてあげないと、バランスが取れないと思いますね。

友里さんは料理をつくっているわけだけど、どれくらいのレベルの料理をつくりたいのかと、僕らがどれくらいのものを出荷したいのか、その感性しだいなんですよ。味のわからない人がおいしいラーメンをつくれないように、味のわからない人がおいしい野菜はつくれないと思います。

堆肥とは、畑の料理

コウ:あともうひとつすごく興味深いと思っているのが、動物性堆肥の糞も、その動物によってもだいぶ違ってくるんですよね? そのへんは食べているものによって違うんですか? 

橋本:養分が一番高いのが、鶏糞なんですよ。だから鶏糞は肥料なんです。その次に高いのが豚糞。その次に養分が高いのが馬の糞。最後が肉牛の糞です。どれくらいカロリーがあるのかというと、牛のカロリーを1とすると、豚糞が3で、鶏糞が4なんですよ。

だからこれまでの長い間の蓄積として、冬の間に牛糞をばらまいて、春になったら鶏糞なり豚糞なりをばらまいて肥料として使うというね。土づくりと肥料の違いを考えてやってきたんですけど、まあどちらも生のもんですから、ある程度完熟してから使おうと思って。

僕はすべての糞も入れて、籾殻も入れて、草も入れて、バランスをつくってから畑に入れているっちゅう方法なんですよ。

私たちは畑の料理をつくっているんですよ。5種類ぐらいある堆肥をつくって畑をコントロールしてきた。投入するものによって、味が変わるのはものすごくわかるし、投入する肥料によって変わるということなんですよね。

だから化学肥料だったら必ず栄養バランスが崩れるので、農薬は絶対に必要なんですよ。だからセットなんですよ。

日本では16品目の農薬が認可されてるんですね。だからどうしても防虫ネットが必要だとか、大量の消毒が必要だとか、いろんな問題が次から次へと出てくるんですよ。有機といえども。

野村:なるほど。

橋本:自然界っちゅうのは正直だからね。ちゃんと観察して対応すれば、ちょっとずつチャレンジしておいしい野菜ができるということなんですよ。ただその基本がバラバラだったら、すごく腐りやすくて、病気に悩まされる。そういう現象が起きますね。

野菜の品質を決める、微生物と病原菌のバランス

野村:話が戻るんですが、さっきのおいしい水というのは、そういうおいしい土をつくって、ろ過した雨水が地下水になっていくということ?

橋本:いや、畑のなか(の水のこと)。畑のなかの95パーセントが水分なんですよ。根っこから吸うんだけど、腐敗したものも吸うし、発酵したものも吸うんですよ。畑に臭いものを入れたり、生のものを入れたら必ず腐ったものが吸収されて、植物や野菜は腐りやすくなるということなんですよ。

病原菌も微生物も全部、土から植物のなかを行き来しているんですよ。人間は、植物を食べたら微生物がお腹のなかにいっぱいいるのと同じように、植物も根っこから吸った微生物が行き来してるんですよ。

だからそこに腐敗菌が入るのか、発酵菌が入るのかの違いで、野菜の品質も変わるんですよ。病気もどんな害虫がくるかも、全部決まっちゃうんです。

それがね、かなり最近増えてきたので、農水の研究でだいぶ突き止められて研究して、だいたいのことはわかったと言っていましたけどね。

野村:「腐った土の再生方法を知りたい」という質問がきています。

橋本:腐った土をどうやったら再生できるかも一緒のことで、腐った味噌汁をどうやって再生させますか? という問題と同じなんですけどね。

食べ物ぐらいまでいかないですけども、腐った土を発酵型に持っていくために、いっぺん高温で発酵させてから使わないと、腐った畑であれば全部堆肥にすることはできない。

そこにライ麦とか、小麦とかのイネ科植物をつくって。それをクリーニングクロップというんですよ。クロップは作物ですけど、畑を浄化する。

浄化して畑をつくる。きれいにして腐敗菌を少なくしようということですね。そういうふうにして畑をきれいにする。腐敗したのと、いい微生物とのバランスだと思うんですよね。

家庭のコンポストで注意すべきは、十分な水切り

野村:あと、木酢(もくさく)はどうなんでしょう?

橋本:木酢というのは、一部は植物ホルモンとして使ったりはしますけど、だいたいは殺虫剤として使用されているんですよね。殺虫剤として使う場合に、だいたい一年間ぐらい置いておかないと、木酢のタール分が分離しないんですよ。

だから新鮮な木酢だと、タール分が葉っぱにかかる。タール分には発がん性物質があるので、少なくとも一年くらい置いて生成してから、使ったほうがいいと思います。

野村:なるほど。

橋本:でも木酢はあまり使う必要はないと思うんですよ。なぜ害虫が発生するかをきちんと理解していないと、虫が発生するか、病気が発生するかという考え方になるので。僕の考え方が良いか悪いかは別として、木酢は品質がピンキリなので、注意したほうがいいと思います。

コウ:あと「家庭で一次処理、コンポストをやるにあたって入れないほうがいいものはありますか?」という質問がきています。

橋本:入れないのは金属系とプラスチック系ぐらいで、あとは貝でも魚でも骨でも、何でも入れていいと思いますよ。

コウ:注意すべきことはあるんですか?

橋本:生ごみ入れるときに注意したほうがいいことは、できるだけ水切りをして入れるということです。

野村:あと先生のご本(『畑でおいしい水をつくる』(北星社)を購入したがっている方がいらっしゃるんですけど。

テスト

橋本:もうあと(手元にあるのが)15冊しかないと思う。まだ(出版社に)注文したらあるとは思う。

野村:じゃあeatrip soil(の物販エリア)でもあとでお願いをして置かせていただくようにします。

eatrip soilの物販ブース

生ごみの堆肥化に「屋上」が最適な理由

コウ:あと10分くらいなんですけど、もう一つ先生の本に書かれている内容で好きなコンセプトがあります。「健康な環境、健康な体は堆肥から」という。

野菜づくりもすべて土から始まっているということでやられているんだと思うんですけど。僕らはお店をやっていて、できるだけいい土をつくるところに携わっていけないかなという試行錯誤で、コンポストをやっています。

生ごみを自分たちのベランダのプランターとかで活かしていくというのも、ある意味そういう流れになっていくんじゃないかなと思うんですけど、やっぱり家で始めるにはハードルが高いと思うんですよ。そこを何とかうまく解決できる方法はないかなと思います。

橋本:いまはね、生ごみ堆肥化をするのは屋上が一番適していると思うんですよ。ケースには太陽光が必要なので、(eatrip soilのように)屋上でそのケースを並べてやれば一番いい。簡単に処理ができると思いますよ。温度も高いし。

テスト

一番難しいのは、マンションとか一日中光が当たらないところで、ケースでやっても、何をやっても腐ってしまうと思うんですよ。風通しがよくて日当たりがいいところで、生ごみ処理なり堆肥づくりをするのがベストなんです。

※掲載している情報は、2020年7月10日時点のものです。

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