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【前編】土がテーマのディープな鼎談 橋本力男氏がひもとく「コンポスト」への誤解

インスタライブ番組「JUICY TALK ONLINE」の5月31日配信回のゲストに、堆肥化リサイクルや土壌の研究に携わってきた橋本力男氏らが登場した。橋本氏は土づくりをテーマに、家庭でコンポストを続けるコツやおいしい野菜づくりの秘訣などを披露。この記事では、「堆肥化」の基本のキを語った模様をお届けする。

2020.07.03

Sunshine Juice(サンシャインジュース)のコウノリ氏がMCを務めるインスタライブ番組「eatrip seed club presents "JUICY TALK ONLINE"」。さまざまな業界の専門家をゲストに招き、「健康」をテーマにクロストークを展開する一時間番組だ。

5月31日配信回のゲストは、有機栽培の第一人者である橋本力男氏と料理人の野村友里氏。長年、堆肥化リサイクルや土壌の研究に携わってきた橋本氏が、コンポストの基本知識や発酵と腐敗の違い、日本の有機農業への提言など、“土”をテーマに大いに語った。

前編後編に分けて、配信内容の書き起こしをお届けする。

橋本力男氏らが“土”について語る

コウノリ氏(以下、敬称略):みなさん、こんにちは。早速自己紹介をします。「サンシャインジュース」のコウノリです。

野村友里氏(以下、敬称略):「eatrip(イートリップ)」の野村友里です。(ライブ配信の出演が)初めてでわからないから、よろしくお願いします。

コウ:毎週、人としゃべるスタイルなんですけど、こういうふうにやるのは初めてなので、よろしくお願いします。今日は、友里さんとeatrip soilにいます。(背景を映して)こんなすばらしいガーデンがついています。東京は原宿です。

野村:で、コンポストの上に座っています。

コウ:今日のテーマは、土についてです。いろいろ説明させてもらいたいんですけど、まずゲストをお招きしたいと思います。(画面をみながら)あっ、橋本先生がいない!

野村:うふふ(笑)。

コウ:橋本さん、もしもし! 先生につなげていきたいなと思うんですが、先生がつかまりません。先生がね、インスタ(を使うの)が初めてなんですよね。

では、簡単に説明したいと思います。僕、サンシャインジュースというジュース屋さんをやっていまして、ジュースをつくると残渣(ざんさ)がいっぱい出るんですよ。そのカスをどうしようかと思って、再利用したいなと思っていました。(実際に着ている服を差しながら)そのうちの一つが染色に使ったり。

野村:(eatrip soilで販売している)私のこのエプロンも!
エプロンの画像

コウ:あとはカレーをつくったり、スープをつくったりしていたんですけど、一番いい使い方は、土に還していい土をつくることだろうと行き着きまして。

でも、そのやり方が最初全然わからなくて、Googleで調べたら一番最初に(橋本先生の記事が)出てきた。日本でコンポストといえばこの人! というのが、今日登場する橋本先生なんですよ。

三重県にいらっしゃるんですけれども、すぐに連絡先をうかがって、いろいろ話を聞かせてもらって勉強しました。すごく参考になる話とおもしろい話がたくさんあるので、今日はその話を聞きたいなというのが一つ。

あと友里さんに登場してもらっている理由としては、このeatrip soilで、そういう土づくりとかガーデンづくりとかをしっかりやりながら、都会の飲食店で出る生ごみをきちんと土に還して、より循環させて野菜をつくれる仕組みを一緒につくれたらいいですよねと。いま、実際に一緒に堆肥をつくっているんです。

そういったことも一緒にやっているので、今日はその三人で土の話をしていきたいなと思っています。早速、橋本先生を探して……。

(橋本氏と通話をしながら、コウ氏らが参加方法を教える)

農家も陥る「コンポスト」への誤解

コウ:表示されました!

橋本力男氏(以下、敬称略): はーい。 (愛猫と一緒に映って)これ、マリー。

コウ:(マリー以外にも)4匹おる!

野村 : こんにちは!  じゃあ、どんどん質問を。「コンポストをなかなか続けられません」という方が多いですね。

橋本:続けられない?

コウ:はい。家庭で堆肥化に興味を持たれている方が多いなという印象なんですけど。そのコツというか、どういうことに気をつけるべきなのかと、そもそもみなさんが興味があることが「生ごみを堆肥化する、土にするということはどういうことなのか」ということも、簡単に教えてもらえたらなと思うんですど。

橋本:この間、『いいね』(クレヨンハウス刊)という雑誌に僕の記事が出たんですけれども、そのなかでリサイクルで生ごみが一番難しい分野で(と語っていて)、非常に腐りやすい生ごみをいかに堆肥化するか。

やっぱり基本的に知識がないと、堆肥づくりをすることって、できないんですね。一般の人が、例えば生ごみ処理機とかEMボカシ*とか、ダンボールコンポストとか、バッグに入れるとかなどの処理方法はあるんですけど、それはあくまで堆肥づくりではなくて、生ごみを原料化するとか、小さくすること。腐らせないで、原料化する仕組みなんですね。
* 米ぬかなどの有機資材をEM-1 (またはEM活性液)で発酵させ熟成・乾燥した粉状の発酵有機資材

その仕組みの後に、ほんとうにそこから微生物を分解して、少なくとも60、70℃前後の温度で、有機物を、生ごみを分解する過程を経ないと堆肥にはならないんですよ。

だけど一般の認識では、コンポストというのは、なにかに生ごみを放り込んで攪拌して、堆肥ができるというイメージがあって。水分とか微生物の分解能力を認識していないので、失敗する確率が高いんですよね。

堆肥づくりに欠かせない、水分管理と温度管理

コウ:失敗しないためには一次処理というか、きちんと原料化するプロセスのあと、二次処理と言われる微生物による活動をしてもらわないといけないということ。あと水分処理のコントロールが重要ということですか?

橋本:日本の有機農業では、1万人ぐらい(堆肥づくりに)取り組む人がいるんですけれども。堆肥というものは、そもそも農家でも全然わからない状態で。

微生物を使って高温でやるということすらわからなくて、鶏糞とか、油粕とか、それを使ってやれば土づくりができるというイメージがあるんですけれども、実際は違うわけですわ。

農家の学校の講師をしているんですけれども、全くそれが伝わらないんですよ。理解できない。そのために18年間、コンポスト学校というのをやって、年間22回で100時間の講座と実習を兼ねてやっているんですけど、それぐらいしないと。

堆肥というのは、一般的にはなかなか理解しにくいと思います。だからその以前に失敗するのはよくわかる。適当ではできないということなんですよ。きちんと水分管理と温度管理をしないとできないということですね。

屋上庭園で試行錯誤

コウ:僕たちがいまやろうとしていることは、お店で出た生ごみを土に還して、それでいい野菜をつくるという循環をつくれたらいいなと思ってやっています。それはたぶん家庭でも一緒で、生ごみっていっぱい出るじゃないですか。

それをただ燃やすんじゃなくて、きちんとよりよいかたちにつなげていけたらいいんじゃないかなと、自分は思っているんですけど。橋本さんも一緒にeatrip soilに来られましたよね?

野村 : 来ていないです。レストラン(eatrip)のほうなんですよ。

橋本:レストランに行きました。

コウ:(今日は)友里さんのもう一つのお店(eatrip soil)のほうに来ているんですけど。

橋本:屋上?

コウ:ここもまたすばらしいんですよ。

橋本:ほんとうだ! ここ、屋上庭園?
eatrip soil4階のコンポスト

eatrip soilの屋外ガーデンでつくっているコンポスト

野村 : 4階なんです。この間ちょうど、コンポストのなかからレモンの種の芽が出たんです! 昨日一回目の土を蒔いてみたんですけど、けっこう試行錯誤をしました。何回かいろいろ試して、乾燥させた生ごみと落ち葉、籾殻で、この米袋に入れて、キュッと締めて。何回か攪拌させながらやったのが、うまくいったんですけど。

橋本:泥袋入れるのがめんどくさいですよね。

野村 : そうなんですよ。あと量がそんなにできないですよね。

橋本:太陽熱を使ったケースが一番楽なんだけど。

野村:これですね。

橋本:それ、反対向きやね。

野本 : でも、水分が出るように……。

橋本:上の蓋が反対なんですよ。

コウ:(蓋の向きを直して)こういうことですね!

橋本:そうそう。雨が入っちゃう。(別なケースを差して)そっちはどうなの?

野村:これはまだ新しいんですけども、すぐ分解できるようにハサミで切ったりしています。あと生ごみもなるべく水分をなくそうと思って、少し乾燥させてから入れてます。

橋本:それはベストやね!

橋本氏が教える、床材づくりの黄金比

コウ:ここに床材(とこざい)を入れたんですよ。

橋本:だいたい最初40%ぐらい入れてからスタートして、表面だけでかき混ぜながら、そこから(深く)かき混ぜないとダメなんですね。表面をかき混ぜながら、水分が多くなってきたら予備の床材を入れてもらうんですよ。

コウ:聞いてもらっているみなさんにお伝えしたいのですが、「床材」というのは何ですか?

橋本:生ごみを腐らせないで、発酵分解するための資材なんですね。容積比で籾殻8:米ぬか2と、いっぱいの落ち葉と土を材料に、水分40%で発酵させたのが床材です。だいたい10日間くらいでできますよ。2日に一回くらい、切り直して。

コウ:10日間で生ごみが堆肥になる。

橋本:いやいや、床材ができます。床材をつくって微生物量を増やしたものに入れて混ぜると、生ごみが腐らずに分解できるということなんですね。

コウ:僕らのサンシャインジュースの残渣も、基本的な構造は一緒で。橋本さんが考案した床材ブレンドに、ジュースの絞りかすをどんどん投入していって、約4ヶ月ぐらいですかね。完全なブラウン色になって、堆肥の状態になって、それをまた畑で使ったりしているんですけれども。

橋本:ジュースの残渣を床材で分解したあとに一次処理という段階に移って、そこで完全な堆肥をつくって、ブラウンのができるんですよ。だから生ごみを一次処理をして、処理工程が終わったら、二次処理という工程に移る必要があるですよ。それがなかなか理解ができないんですね。

コウ:見ていないとなかなか難しい部分がある……。

発酵と腐敗の決定的な違い

橋本:そうそう。今回のコロナ騒動でも、家庭ごみをなんとかリサイクルしたいと関心を持った人が多いと思うんですけども。リサイクルの分野で、生ごみが一番難しい分野なんですよ。

ほかのプラスチックとか金属は、死んでいて腐らないから管理は分別だけ。簡単なんです。生ごみだけは水分があって腐りやすくて、腐敗したら悪臭がするし、ハエもたかるし、非常に難しい分野です。

僕は人から頼まれて嫌々始めた(のがいまの)仕事なんですけども。なぜ生ごみは腐るのか、最初に考え始めたんですね。生ごみが腐る原因は何かというと、水分が多いことと、窒素分が多い素材でやるから腐りやすいんですよ。だから水分を少なくする。

そして窒素分の反対である、炭素の多い籾殻と組み合わせてやれば、腐敗から発酵に変わるんですよ。発酵と腐敗の違いは非常に明確で、漬物をつくったときに、塩分が少ないとか、水が足りないと腐敗するんですよ。条件を間違うと腐敗の過程で微生物がやってしまう。

生ごみも同じ。水分率と栄養率のバランスが悪かったら、腐敗に変わるんですよ。腐敗に変わるということは、悪い微生物が繁殖するので、病原菌をつくっているようなものなんですよ。
※掲載している情報は、2020年7月3日時点のものです。