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インド・シッキム州では、州内のすべての農家が有機農業に移行して完全有機農業を実現している。これをモデルケースに、ハリヤナ州政府も先日、有機農業への移行を支援すると発表。有機農業に必要となる牛の購入費用を給付する。
神本萌 |Moe Kamimoto
フリーランスライター
大学時代に南アジア文化を学んだことをきっかけに、環境や人権の問題に関心を持つ。それ以降、より自分と地球にやさしい暮らしを目指して勉強中。趣味は写真。
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有機農法や自然農法へ移行する農家が少しずつ増える一方で、化学肥料を使わざるを得ない農家も多い。害虫や雑草の処理に手間がかかるうえ、品質や収穫量が安定しにくいからだ。
こういった現状を考慮し、インド・ハリヤナ州のマノハル・ラル・カッタール州首相は、有機農業への移行の支援を表明。
有機農業に必要な牛の購入を支援する費用として、最大2万5,000ルピー(約4万3,000円)を給付する。同州の農家の平均月収は2万2,841ルピーであることを考えると、大きな金額である。それに加え、牛の糞や土を混ぜて有機肥料をつくる容器として、ドラム缶を無料配布するという。
支援金給付の対象は、政府のポータルサイトに登録した2~5エーカーの土地を持つ農家。現在、1253もの農家が登録しているそうだ。補助金に加え、人々に有機農法や自然農法を知ってもらうべく、各エリアで展示会も行う予定だ。
インドは1960年代に穀物不足に直面し、化学肥料が見境なく使われるようになったという。化学肥料を当たり前に使う人々の常識を覆すべく、同州首相は積極的に取り組みを進める意向だ。
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インドにおいて、化学肥料を使わない農業への移行を政府が支援するケースは、今回がはじめてではない。同国内ではじめて取り組んだのはシッキム州だ。
シッキム州では、化学肥料や農薬を段階的に削減し、2014年には州内での化学農薬の販売と使用を全面禁止する法律を制定。現在は6万6,000世帯以上の農家の100%が、完全に有機農業へ移行している。
有機農業への完全な移行は、思わぬ恩恵ももたらした。それが観光業界だ。同州は、オーガニックな町というイメージから、2014年から2017年の間で観光客が50%以上も増加し、農家だけでなく消費者もそのメリットを受けたという。
完全有機農業達成への成功の鍵は、政府が明確な目標と実施計画を立てたことと言われている。土壌調査からはじまり、有機農業への理解を深めるため836人の失業者を教育。そのうち695人は現在、現場監督として雇用されているそうだ。
シッキム州の取り組みは、インド国内はもちろん、世界中でモデルケースとして注目されている。
2022年に入ってから、アメリカもオーガニックへ移行する農家へ最大750ドルを負担すると発表した。国民の健康や環境を守るために、政府主導で持続可能な農業を目指す国が増えてきている。
日本でも、より環境にやさしい農法へ移行するべく政府が補助金を配布している。農家の人たちの生活を守りながら持続可能な農業に移行するには、政府の支援が必要不可欠だろう。
※参考
Plans prepared to promote natural farming in Haryana: Khattar|Hindustan Times
Haryana CM Announces Subsidy Of Up To Rs 25,000 For Purchase Of Indigenous Cow Breeds|Outlook
Sikkim’s State Policy on Organic Farming and Sikkim Organic Mission, India|PANORAMA
‘Punjab second, Haryana third in monthly agricultural household income | The Times of India
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