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オーストラリアのビクトリア州政府は、アボリジニ主導の再生農業を支援するパイロットプログラムを発表した。州政府は、先住民の若者達が養蜂や在来種の栽培といった職業訓練を行うため、約100万ドルを投じる。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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オーストラリアのビクトリア州政府は、先住民主導によるリジェネラティブ農業を推進するパイロットプログラムを発表した。このプログラムは、オーストラリアの先住民族であるアボリジニの農業労働者のスキルを向上させ、彼らの農業ビジネスを支援することが目的で、州政府は98万ドル(約1億2,800万円)を投じる。
先住民の人口は2021年時点で721,100人と推定され、年齢の中央値が24.1歳と比較的若い年齢構成が特徴だ。しかし、先住民は教育、技能レベル、健康状態の悪化、限られた雇用チャンス、差別といったさまざまな要因で、失業率が非先住民よりも2倍近く高い。
雇用に至った場合でも、適切な職務に特化したトレーニングが不十分なことが原因で、失業につながるケースも多い。今回打ち出された新プログラムには、こうしたギャップを解消し、安定的な雇用と持続可能な食料生産に取り組む狙いがある。
先住民の生態学的英知を生かした農業技術によって、水や土壌の質、生物多様性を回復させて土地を再生させるものだ。
本プログラムは、先住民による非営利組織「アウトバック・アカデミー・オーストラリア」が行い、先住民が経営する4つの農場で約30人の研修生をサポートする。
また約20の短期コースも設けられ、先住民にさらなる訓練と雇用の機会を提供する。はちみつに代表される先住民製品のビジネスチャンスに加えて、再生技術を使用して先住民主体の農業ビジネス促進を図る。農場で生産されたすべてのはちみつと花はオーストラリア全土で販売され、収益はすべて農場に還元される仕組みだ。
ビクトリア州シェパートン近郊にあるルンバララ農場は、ほぼ10年間使われないままであったが、プログラム初の試験運用農場となったことで、120ヘクタールの土地に新たな目的が与えられた。現在、同農場では研修生が養蜂や在来種の野花の栽培に取り組む。
将来的には、ブッシュタッカーと呼ばれ、先住民が伝統的に食してきた動植物や果物、野菜を栽培し、地域社会や地元のホスピタリティー業界に供給したいという。
ビクトリア州の先住民族問題を扱うガブリエル・ウィリアムズ大臣は、本プログラムは先住民の誇り高き伝統を継承するのに役立つと述べている。また、州の技能および訓練大臣であるゲイル・ティアニー氏も同様に、先住民を現代農業慣行の中心に据え、州の農業の強化に貢献すると伝える。
地球環境が危機的状況にあるなか、自然と共生してきた先住民の生態学的知識や自然観を、持続可能な世界の構築に生かすときが、いまなのかもしれない。
※参考
First Nations farmers to get traditional lessons of the land in Victorian pilot scheme|The Guardian
Victoria's First Nations-led regenerative farming program changing lives, one beehive at a time|ABC NEWS
Experimental Estimates and Projections, Aboriginal and Torres Strait Islander Australians, 1991 to 2021|ABS
Aboriginal employment, jobs & careers|Creative Spirits
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