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オーストラリアのタスマニア島が、カーボンネガティブを達成したことが明らかになった。ブータン、スリナムに次いで世界3番目の地域となる。温室効果ガス排出量を大幅に削減できた背景には、原生林の伐採活動の縮小やウッドチップ工場の閉鎖など、徹底した森林管理がある。
今西香月
環境&美容系フリーライター
慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中
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オーストラリア本土の南端から約240kmに位置するタスマニア島。面積は北海道のおよそ8割ほどで、およそ50万人が暮らしている。タスマニア原生地域は、世界遺産に登録されていることで有名だ。
そんなタスマニアが、カーボンネガティブとなった。カーボンネガティブとは、経済活動などで排出される温室効果ガスより、吸収する温室効果ガスが多い状態のこと。これまでにカーボンネガティブを達成した国・地域は、ブータン、スリナム共和国のみ。タスマニアは世界で3番目となる。
これは、グリフィス大学のブレンダン・マッキー教授とオーストラリア国立大学のデビッド・リンデンマイヤー教授が発表した新しい研究論文で明らかになった。
その内容によると、過去10年間におけるタスマニアの二酸化炭素排出状況を調査したところ、排出量と吸収量が年間1,000万tでほぼ同量である事実を突き止めた。そして現在は、排出量よりも多くの二酸化炭素を吸収している「カーボンマイナス」の状態にあるという。
タスマニアのカーボンネガティブ達成に貢献したのが、2011年から2012年にかけての大きな森林管理の変化だ。裕福な環境活動家2名が、当時世界最大であったタスマニアのウッドチップ工場を買収し閉鎖させた。また木材チップと紙パルプの輸出廃止によって、タスマニアの原生林での伐採が大幅に減少していったのだ。
オーストラリア本土とは異なり、タスマニア島があるタスマニア州は、水力発電が中心の100%再生可能エネルギーですべてのニーズを満たしている。こうしたエネルギー政策と森林管理が功を奏し、今回のカーボンネガティブ実現につながったと考えられる。
タスマニアの主な二酸化炭素の排出源は原生林の伐採で、伐採時に大量の二酸化炭素が大気中に放出される。森林は大切な二酸化炭素の吸収源であるが、森林破壊や伐採が森林の吸収能力を低下させ、これが気候変動問題につながっていく。
今回の論文を発表した2人の教授は、森林管理は気候変動対策の重要な要素であり、他州も同様の対策を行い、パリ協定の目標達成を目指す必要があると述べている。とくにオーストラリアのニューサウスウェールズ州とビクトリア州では原生林の伐採がおこなわれており、州政府によると毎年自動車73万台相当の二酸化炭素を排出しているという。
また別の専門家は、天然資源の経済的価値に着目し、二酸化炭素吸収源として自然林を保護することを検討する必要があると指摘。木材チップや木材関連商品のために伐採し続けるよりも、森林保全を促す方がはるかに経済的な貢献度が高いためだ。
気候変動の壊滅的な影響を回避するためにも、早急に森林伐採を見直す時期に差し掛かっている。タスマニアの手法のように、環境や野生動物に配慮した森林管理や規制を、世界が見習うべきではないだろうか。
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