地球、社会、そして人々にとってよりよい未来をつくっていくためのアクションとして、サステナブルな取り組みによって生まれたプロダクトをご紹介する髙島屋の「TSUNAGU ACTION WEEKS」。今年は「使い捨てない、むだにしない、ゼロウェイストな暮らし」というテーマを中心に、日々の暮らしに取り入れられるさまざまなアクションを提案。6月1日(水)から6月28日(火)まで、髙島屋全15店舗で開催される。
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エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
髙島屋の「TSUNAGU ACTION WEEKS」期間中は、未来につながる今日の一歩と題して、サステナブルな暮らし方とは何かを考えるきっかけとなる具体的なアクション、取り組みによって生まれたプロダクトを、各売場で特集する。
ブランドやメーカーにとって、サステナブルという観点での取り組みは挑戦となることが多いものだ。そうしてできあがったプロダクトには、職人やデザイナー、開発者などの熱い想いが込められている。その声を聞き、目に見える形として私たちに届けてくれるのがバイヤーだ。この記事ではバイヤーの視点から、サステナブルな取り組みやブランドについて語っていただく。一つひとつのプロダクトに込められたメッセージに想いを馳せてみよう。
食器全般、民藝などを担当し、自身でも手しごとの品物をこよなく愛するリビング担当バイヤー。「個人個人ではもちろん、会社一丸となってサステナブルに取り組む菅原工芸硝子さんの姿勢に感銘を受けました」
今回バイヤーが選んだのは、手しごとを基本としたガラス工房で、世界でも人気を誇る『Sghr スガハラ』のプロダクトだ。
「元々、デザイン、クオリティの面でも人気が高くファンも多いブランドです。髙島屋の和食器売場でもお取り扱いをしていましたが、『Sghr スガハラ』のサステナブルな取り組みをみなさまに知っていただきたいと思って、今回は2シリーズをセレクトしました」
ガラスは自然由来であり、リサイクルもしやすくエコな素材。しかし、その加工時には高温で火を焚きつづけるため、環境負荷が高くなってしまうという課題も。そうした背景もあり、端材を活用するなど積極的にサステナブルな取り組みを行っている。
「私たちが今回選んだ理由は、そんな取り組みの素晴らしさはもとより、プロダクトとしてのクオリティ、それを選ぶ楽しさにあります。
例えば『Sghr ReWork -デュオ-』は、人気シリーズであるデュオのアップサイクルモデルです。ガラスの性質上どうしても出てしまう黒点や気泡、筋などに、サンドブラストによるグラフィカルなデザインを施しアップサイクル。デュオの2色のガラスを重ねたデザインをいかし、色に合わせたイメージのサンドブラスト加工を施しています」
「リサイクルガラスを使用した『Sghr Recycle』も唯一無二のシリーズです。工程上どうしても出てしまうガラスの端材を使用し、一点一点、表情や色味の異なったうつわとなって生まれ変わります」
さまざまなコンディションの素材を合わせたリサイクルガラスにも関わらず洗練された美しさがあるのは、スガハラ・クオリティならでは。
リサイクルガラスの素朴な材質が温かみのある表情を与えている。「Sghr Recycle」フラクタル(L)4,400円
「どちらのシリーズも人気のデザインをアップサイクルするという試みで、地球や人へのやさしさを背景としたストーリーがあるので、贈り物としても想いを届けられると思います。受け取った方もストーリーを知ることで、人と地球、人と人をつなげる力を持ったプロダクトです。
ただ環境によいことをするためだけではなく、日常使いの食器や贈り物など、何かを選ぶ時の選択肢として、こうした取り組みによる品物やブランドをお届けしたいと思っています。それが私たちバイヤーにできることだと考えています」
会期中は他にもバイヤーがこのために厳選したさまざまなプロダクトが、そのサステナブルなストーリーとともに紹介される。
50年以上もロングセラーとなっているカルテルの「コンポニビリビオ」が生分解性のバイオ素材でアップデート。各37,001円 6月1日(水)より販売
ブランドで初めて100%リサイクル素材のポリプロピレンを使用。A.I.(人工知能)が導き出した未来の心地よさというコンセプトのチェア。各39,201円 6月1日(水)より販売
生地はベルギーTer Moist社のアップサイクル素材、VIVALIFE。水や化学物質を使用せずに生成・染色しているサステナブルな素材だ。3,960円
割れてしまったショートブレッドの生地をアクセントにしたグラスデザート。おいしさには関わらず形だけで廃棄されてしまうフードロスに貢献している。4,644円
サステナビリティプロジェクトの担当のバイヤー。「衣料廃棄のニュースを見て、他人事ではないと感じたことがきっかけで、このプロジェクトを始めました。未来につながる“循環”を目指しています」
髙島屋では、循環型社会の実現を目指したプロジェクト「Depart de Loop(デパート デ ループ)」においてリサイクルシステムをもつ企業とコラボレーションし、不要になった洋服を店頭で回収し、再生ポリエステルをつくる取り組みを続けている。
「Depart de Loopは洋服を原料としてまた洋服をつくるという循環スキームです。このサイクルによって再生した素材で、髙島屋のラグジュアリーゾーンで展開する自主編集売場『Salon le chic(サロン ル シック)』の春夏コレクションの販売を始めました。
バイヤーが世界中から厳選したアイテムを展開するサロン ル シックは、エグゼクティブなお客様に向けたセレクトショップです。ですから素材にもこだわり抜きたいという想いが強く、再生ポリエステルを使った素材の開発から着手しました」
イタリアメンズブランドの中で人気のパンツ専業ブランド「ベルウィッチ」のパンツ、ナポリ創業で伝統技術を受け継ぎながら自社生産を行なっているシャツメーカー「マリアサンタンジェロ」のシャツをリサイクル素材で再構築。機能性、デザイン性に富んだアイテムに。
「目指したのは、再生ポリエステルを使用しながらも、天然繊維のような温かみのある自然に近い風合いです。それが実現できたのは、日本環境設計株式会社『BRING』のケミカルリサイクルした純度の高い再生ポリエステル、さらにラグジュアリーブランドを含めたさまざまなブランドの生地を手がけ、世界から注目を集める繊維商社タキヒヨー株式会社が関わってくれたからです。
シャツやパンツに使用している平織の布帛素材は、縦糸に凹凸を施し、立体感のある織り上がりに。リネンのようなサラっとしながらも緻密な手触りになっていると思います」
速乾性や軽量性などポリエステルの機能を保ちつつ、自然な風合いを持つ新素材を使うことにより、イタリアの名高いファクトリーブランドの定番モデルを新たに生まれ変わらせたのだ。
天然素材特有の風合いを出すため、糸の太さや織りの具合にまでこだわり、まるで上質なリネンのような光沢感を実現している。
「ベルウィッチ」のパンツには同じ素材でポーチも付属している。ポリエステルのシワになりくいという特性をいかし、小さく折りたたんで収納することもできる。これからの季節、旅行などにも便利な機能だ。「ベルウィッチ」ハーフパンツ27,500円
上質なリネンのようなさらりとした素材感で、これからの季節にもぴったりだ。「ベルウィッチ」パンツ33,000円(ポーチ付き)
同じ生地を使用したレディースモデルは「ポステレガント」とコラボレーション。レディース・メンズともに同じ素材で展開することで、ロス削減にも一役買っている。
ポリエステル素材の軽やかさをいかしたフェミニンなブルゾン。「ポステレガント」ブルゾン75,900円
全体に流れるドレープがリラックスしながらも華やかな雰囲気を醸し出す。「ポステレガント」ドレス79,200円
「リサイクルできることを前提に、なぜこの素材なのか、いわば素材の概念づくりから始まり、生地をつくり、メンズ・レディースそれぞれのアイテムを完成させる。百貨店としてはあまりない試みです。そのため、関わっていただく会社やメーカーの方々には本当にご協力いただきました。正直、工程が止まってしまったり、うまく進まないこともありました。でもその度に、粘り強くコンセプトを説明したり、お願いしたりということもあって、時間がかかってしまったというのも事実です。
そのおかげで、今回のプロジェクトが完成しみなさんにお届けすることができるのは、とても嬉しいことです。私自身、今は“お買い上げいただいた後”のことを考えていきたいと思っています。今着る服に再生ポリエステルが使われているということ、そしてこれから着終わった後に、また再生できるということ、そういうサイクルをご提供することに責任を感じています」
TSUNAGU ACTION WEEKS会期中の6月1日(水)から14日(火)まで、髙島屋各店の店頭で、不要になった衣料品を回収するボックスが設置される。回収した衣料品は、パートナーシップを組む 日本環境設計株式会社「BRING」のリサイクルシステムを活用し、ポリエステルはポリエステル原料に、他の素材は寄付やリユースによって再生される。設置場所は各店に問い合わせを。
店頭で回収した衣料品から素材をつくり出し、また製品へ。使い終わったらまた回収し、リサイクル。資源を循環させることができるサステナブルなスキームだ。
撮影/岡田ナツ子 編集・執筆/後藤未央(ELEMINIST編集部)
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