Photo by Petit Pli
ロンドンを拠点とするアパレル「Petit Pli(プチ・プリ)」が展開するのは、折り紙や航空工学を応用したプリーツ加工で、成長しても着られる子ども服。洋服の大量生産・大量消費を減らすとともに、リサイクルが容易な素材を使用するなど、サステナブルな洋服づくりを行っている。
岡島真琴|Makoto Okajima
編集者・ライター・キュレーター
ドイツ在住。自分にも環境にも優しい暮らしを実践する友人たちの影響で、サステナブルとは何かを考え始める。編集者・ライター・キュレーターとして活動しつつ、リトルプレスSEA SONS PRE…
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Photo by Petit Pli
成長期の子どもは短期間で着られる服がなくなるもの。製造や輸送にかかる環境への負荷や廃棄など、子ども服のサイズアウトはサステナビリティの観点からも大きな課題となっている。
そんな問題に風穴を開けるのが、ロンドンのアパレルブランド「Petit Pli(プチ・プリ)」だ。航空工学や折り紙の原理を応用することで、子どもの成長に合わせて服のサイズも変化させるという、これまでにない服づくりを実現させた。
創設者のライアン・マリオ・ヤシンは、インペリアル・カレッジ・ロンドンで航空工学を学び、航空エンジニアとして異色のキャリアを持つ人物。彼がプチ・プリを立ち上げたきっかけは、甥が誕生した際に服を注文したところ、届いた頃にはもうサイズが合わなくなっていたという自身の体験にある。キッズウェアが多くの廃棄を生んでいる現実に衝撃を受けたという。
Photo by Petit Pli
子どもの体が大きくなっても、プリーツ部分を伸ばして着られる。
インスピレーションとなったのは、ヤシンが大学で取り組んでいた人工衛星を展開する構造や、修士論文で取り上げた折り紙の技術。細かくひだをつくった折り紙のような独特のプリーツ生地を使い、子どもが成長して身体が大きくなっても、プリーツ部分が伸びて丈が短くならずに身体にフィットする革新的な服を生み出した。
成長に合わせて新しい服を買う必要がないため消費者の出費が減り、また服の生産、流通、購入後の廃棄物と二酸化炭素の排出を大幅に削減できる。
プチ・プリは100%リサイクルポリエステルを採用し、しかも使用後はリサイクルされやすいように単繊維で使用している。しかし同ブランドは、それ以上に「長く着られること」にフォーカス。ファッション業界が二酸化炭素排出量や廃棄量、水の消費量を削減するには、服の寿命と使用期間を長くすることがもっとも有効な方法の1つとされているからだ。
このような画期的なファッションを提案したことで世界で注目を集め、これまでにイギリスのジェームスダイソン賞(2017年)をはじめ、さまざまな賞を受賞。米『TIME』誌の「ベストイノベーション賞2020」にも選ばれている。
現在プチ・プリが展開するのは、新生児から12か月を対象とした「ニューボーン」、9か月から4歳までの「ミニヒューマン」、4歳から9歳までの「リトルヒューマン」の3シリーズ。そのほか、大人服も取り揃えている。
Photo by Petit Pli
プチ・プリでは、子ども服としての機能性も重視。「子どもは究極のアスリート」と考え、軽量かつコンパクトに収納できることをはじめ、通気性がよく、防水・防汚コーティングが施され、耐久性に優れた服づくりを行っている。もちろん家庭用の洗濯機で手軽に洗えるのもうれしいポイントだ。
さらに現在、子ども服をより長く使ってもらうために、無料の修理サービスがついた子ども服のサブスクリプションサービスを試験的に導入している。
これから生まれてくる子どもたちは、どのような世界で育っていくのか。地球の環境や子どもたちが幸せに過ごせる未来を守っていくためにも、サステナブルな子ども服を選んでいきたい。
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