地域課題解決の秘策 「地域循環共生圏」とは 背景や具体的事例を解説

山麓にある畑と広葉樹の木立

Photo by Nabil Azmi on Unsplash

さまざまな課題が山積するいま、注目されるのが「地域循環共生圏」の考え方である。地域の資源を活かし地域内での循環を目指す取り組み、とされているが、どのようにして課題の解決につながるのだろうか。基本的な概念や具体例をくわしく解説しよう。

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2022.04.21

地域循環共生圏とは

地域循環共生圏とは、各地域が持つ自然や資源を最大限に有効活用し、自立型かつ分散型の社会形成を目指す考え方である。もちろん地域の特性は、それぞれ大きく異なるものだ。必要に応じてお互いが資源を補完し支え合うことも、地域循環共生圏の非常に重要なコンセプトである。

難しい言葉が並ぶため具体的なイメージを抱きづらいが、要は「地域の特性を生かし、地域内で人や物、経済の循環を目指そう」そして「地域で足りない部分は、別の地域とお互いに協力し合おう」という試みである。2018年4月に閣議決定した第五次環境基本計画で提唱された方向性で、環境省がリードしている。(※1)

地域循環共生圏は「ローカルSDGs」とも呼ばれている。地域環境と社会、経済を活用したビジネスは、あたらしい成長のチャンスをもたらすだろう。

環境省は、「環境省ローカルSDGs 地域循環共生圏づくりプラットフォーム」を用意した。具体的な事例を学べたり、他の地域や企業とつながりを持てる場として機能している。また令和3年度には、地域循環共生圏の創造に取り組む活動団体として、合計36団体が選定された。

36の活動団体の内訳と具体例

具体的に、どのような活動団体が選ばれているのだろうか。

令和2年度から、環境整備に取り組む活動団体は全部で8つ。山形県鶴岡市で活動する鶴岡市三瀬地区自治会や、山梨県北杜市で活動する一般社団法人ゼロエミやまなしなどが含まれている。

令和3年度から、あらたに環境整備に取り組む活動団体は20ある。滋賀県東近江市の箕川未来協議会や、沖縄県八重山郡竹富町の西表島農業青年クラブなどだ。また事業化に取り組む団体は、全部で8つ。大阪府八尾市の環境アニメイティッドや、佐賀県鹿島市の鹿島市ラムサール条約推進協議会などが挙げられる。(※2)

地域循環共生圏構築が求められる背景

では、なぜいま、地域循環共生圏の構築が必要とされているのだろうか。その背景には、現代社会が抱えるさまざまな問題点がある。

2015年に、国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択された。2016年には、脱炭素社会の実現に向けてパリ協定が採択されている。今後世界を変えようとする国際的な流れは、さらに強まっていくだろう。私たちも国際社会の一員として、より具体的な取り組みをスタートするべき時期に差しかかっている。

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また、日本の地域経済が抱える問題は大きい。都市部に人や経済が集中する状況のなか、地方再生に向けた取り組みは急務と言えるだろう。複雑に絡み合った多数の問題を統合的に解決するための方法が、地域循環共生圏の構築なのだ。

それぞれの地方が、豊かな自然や資源を最大限活用できるようになれば、持続可能な地域経済の実現が近づくだろう。さらに地方が持つ資源を融通し合う仕組みができれば、これまで以上に住みやすい環境を実現できるはずだ。だからこそ、さまざまな地域・企業・団体が、地域循環共生圏に注目しているのだ。

また環境省では一部、経済産業省・国土交通省と連携し、「脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業」を展開。地域の自立・分散型エネルギーシステム構築事業や温泉熱等利活用による経済好循環・地域活性化促進事業、地域の脱炭素交通モデル構築支援事業に対して、補助金が支給される。令和5年度までの予定だ。(※3)

地域循環共生圏の取り組みとは? 3つの具体的事例

地域循環共生圏の取り組みには具体的にどんなものが挙げられるのだろうか。3つの事例を紹介しよう。

地域ぐるみの「森林」活用/岡山県真庭市

市内面積の79.2%が、森林である真庭市。「美作材(みまさかざい)」の産地として知られ、林業や木材業が主な産業だ。2015年4月から、間伐材や製材後の端材を燃料とした「真庭バイオマス発電所」をスタート。発電所は2万2千世帯分の電力を発電できる能力を有する。これは真庭市の全世帯の電力をまかなえる規模であり、産業とエネルギーの地域循環が進められている。(※4)

再生可能エネルギーの供給・循環/岩手県北地域

岩手県北部に位置する久慈市、二戸市、葛巻町、普代村、軽米町、野田村、九戸村、洋野町、一戸町は、2020年2月に「北岩手循環共生圏」を結成した。地域内でのさまざまな連携を目指している。

地域内は、豊かな自然を活用した多様な再生可能エネルギーに恵まれている。2019年2月には、横浜市と「再生可能エネルギーに関する連携協定」を締結。大都市圏との間で経済資源の循環を目指す。(※5)

エコタウンから資源循環へ/福岡県北九州市

日本を代表する工業都市として発展を遂げた北九州市。1997年に、国内初のリサイクル拠点となる「北九州エコタウン」を創設した。現在においても日本最大級の規模である。

エコタウンには、2018年3月末時点で、26社のリサイクル企業が集まっている。また環境学習や実証研究の拠点としても機能しており、最終的に廃棄物をゼロにするための資源循環に向けた仕組みを形成している。(※6)

地域循環共生圏の実現で地域課題の解決へ

SDGs達成や脱炭素化社会の実現のための取り組みとして、いま注目される地域循環共生圏。我々の身近でも、すでに具体的な取り組みがスタートしている。

地域循環共生圏の目的は、それぞれの地域が持つ自然や資源を有効活用し、地域同士が協力し合うシステムを生み出すことである。何を活かしていくのかは、地域ごとの特色が表れるだろう。各地域で具体的にどういった取り組みが行われているのか、ぜひ注目してみてほしい。

※掲載している情報は、2022年4月21日時点のものです。

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