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社会や学校、家庭問題として注目される「アンコンシャスバイアス」とは、無意識での偏見や思い込みのこと。アンコンシャスバイアスがもたらす悪影響やSDGsとの関連性から、具体的な事例や対処法について詳しく解説する。
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エレミニスト編集部
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アンコンシャスバイアスとは、自分自身で気づいていない物事の見方や捉え方のゆがみを意味する言葉だ。「unconscious(アンコンシャス)無意識」と「bias(バイアス)偏見」という2つの単語を組み合わせてつくられている。両者を直訳し、「無意識の偏見」「無意識の思い込み」と表現される。
アンコンシャスバイアスは、誰の心にも存在するものだ。過去の経験や知識、価値観などから構成されるアンコンシャスバイアスは、ときに我々の判断を助けてくれるだろう。しかし、自身のゆがみや偏見、思い込みが原因で、周囲を傷つけてしまう可能性もある。自覚がない分「ささいな行動」や「日常のひと言」に思い込みは表れやすいのだ。
アンコンシャスバイアスが注目されるきっかけの一つに、SDGsがある。2015年9月の国連サミットにて、全会一致で採択されたSDGs。2030年までによりよい社会を実現するための17のゴールと169のターゲットから構成される国際目標である。2022年現在、世界の国や地域、企業や個人などによって、さまざまな取り組みが行われている真っただ中だ。
アンコンシャスバイアスは、SDGs達成の障壁となり得る。とくにゴール5の「ジェンダー平等を実現しよう」とゴール10の「人や国の不平等をなくそう」に深く関連している。
先例で挙げたように、男性・女性の性差に対するアンコンシャスバイアスは、非常に根深い。たとえば「お茶くみは女性の仕事」「子育て中の女性に大きな仕事は無理」といった考えを「当たり前」として認めてしまえば、企業内におけるジェンダー平等は実現しないだろう。無意識だからこそ、その壁は非常に大きい。
また、アンコンシャスバイアスによって特定の役割を押し付けることは不平等へとつながっていく。立場によって平等なチャンスが与えられなかったり、賃金差が生じたり、それによって強いストレスや不満を抱いてしまうこともあるだろう。アンコンシャスバイアスとSDGsの関連性については、以下の記事でも詳しく解説している。
SDGs達成のためにはアンコンシャスバイアスの壁を乗り越える必要がある。目標達成のヒントは、我々一人ひとりの心のなかに存在しているのだ。
日常生活で経験しやすいアンコンシャスバイアスには、以下のような種類がある。
・ステレオタイプ→周囲の人を属性や思い込みだけで決めつけてしまうこと
・確証バイアス→自分の意見を正当化する証拠だけに注目してしまうこと
・権威バイアス→専門家や上司など権威を持つ人の言うことは正しいと思い込んでしまうこと
・集団同調性バイアス→集団に属した際に、集団の動きや考えに同調してしまうこと
・正常性バイアス→自分が抱える問題を直視することを避けるために自分は大丈夫と思い込むこと
アンコンシャスバイアスの具体的な事例は、以下のとおりである。
・女性には女性らしい感性があるものだ
・男性は仕事をして家庭を支えるべきだ
・共働きで子どもが病気になったとき、母親が看病するべきだ
・組織のリーダーは男性のほうが向いている
・家事や育児は女性が担当するべきだ
またこのほかにも「保育士と聞くと女性を思い浮かべる」、「血液型から相手の性格を想像してしまう」といった考えもアンコンシャスバイアスと言えるだろう。さらに、外国人労働者に対する偏見や年代によるギャップなど、あらゆるところに無意識の偏見は潜んでいるのだ。
内閣府男女共同参画局が発表した「令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査結果」によると、「女性には女性らしい感性がある」という項目に対し、「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と答えた男性の割合は51.6%、女性は47.7%であった。「男性は仕事をして家庭を支えるべきだ」という項目に対しても、男性の50.3%、女性の47.1%が肯定的な回答をしている。(※)
この結果からも、アンコンシャスバイアスが男女を問わず、多くの人々の心のなかに存在していることがわかる。アンコンシャスバイアスそのものが悪いとは言えないが、ときに周囲を傷つけたり、自分自身を追い込んでしまったりするケースもあるのだ。アンコンシャスバイアスに関する問題を解決するためには、まずその存在への気づきが重要な意味を担っている。
自覚がないままゆがみや偏見を持ってしまうことに対して「いったいなぜ?」と、疑問に思う人も多いのではないだろうか。アンコンシャスバイアスが生まれる原因を具体的に3つ紹介しよう。
アンコンシャスバイアスが生まれる原因の1つは、人間の心のなかに潜むエゴである。
・自分は間違っていないと正当化したい
・自分をより良く見せたい
・自分が生活しやすい環境をつくり出したい
これらの感情は、人間であれば誰もが当たり前に持っているものだろう。だからこそ、自覚がないケースも多い。自己保身や自己防衛のためにアンコンシャスバイアスが生まれる可能性がある。
アンコンシャスバイアスは、過去の経験や知識をもとに生まれる。自身の経験や知識に基づいた考えは、人間の心に深く根付いていく。しかし、世の中は絶えず移り変わっていくものである。自身の考えをアップデートできなければ、結果的にそれがアンコンシャスバイアスにつながる。
自分にとっての常識が世間の常識ではない、と気づくのは難しいことだ。同じ立場や同じ世代など、似通った人たちのみが多く集まる集団においては、とくに注意が必要である。
自身の感情を刺激された瞬間も、人間が自己防衛心を高めるタイミングである。自分の心がこれ以上傷つけられないよう、攻撃に転じてしまうケースが多いのだ。劣等感を抱いているポイントを他者から指摘されれば、平静ではいられない人も多いだろう。現実から目を背けたり、客観的な判断ができなくなるなどして、アンコンシャスバイアスを生み出す原因になる。
アンコンシャスバイアスによる悪影響は決して無視できないものだ。具体的に、以下のような悪影響が生じる可能性がある。
アンコンシャスバイアスの改善は、多くの企業が課題としている。
・雑用は若手社員、もしくは女性の仕事
・定時で帰宅する社員は仕事をがんばっていない
・女性社員に大きな仕事は任せられない
・男性が育児休暇を取得するのは、仕事に対する責任感がないからだ
こうしたアンコンシャスバイアスは、各種ハラスメント横行の要因になり得るだろう。自身の役割を決めつけられたり、当然の権利を認められなかったりすれば、ストレスや不満、居心地の悪さを感じるのは当然である。会社としての対策が不十分であれば、離職率上昇の原因にもなるだろう。
家庭においても、アンコンシャスバイアスがもたらす悪影響は無視できないものだ。
・家事や育児は女性の仕事である
・一家の大黒柱は男性がなるものだ
・男の子が泣くのは恥ずかしいことだ
・女の子だから料理や裁縫ができるべきだ
性別に基づく役割や思い込みは、過去の経験や知識に基づいて生まれるアンコンシャスバイアスである。ジェンダー平等が叫ばれるいま、「平等であろう」と努力する人は多い。しかし現実には、男女ともに、まだまだアンコンシャスバイアスに囚われている人は少なくないのである。
共働きが当たり前となり、働き方の多様化が進むいま、性別に基づく役割の押し付けや思い込みは、家庭内不和をもたらす要因となる。これは、男性にとっても女性にとっても、幸せな状況とは言えないだろう。また、家庭内のアンコンシャスバイアスは次世代を担う子どもたちの考えにも影響を及ぼす可能性がある。
集団生活の場である学校。アンコンシャスバイアスによって居場所を失くす子どもたちもいる。
・赤いランドセルは女の子が持つものだ
・自分には○○の役割は絶対にできない
・みんながやっているから、自分もやるのが当たり前だ
・みんながやっていることをやらない人は、怠けている
・トラブルが起きた際に、当事者を決めつけてしまう
同世代、同じような価値観を持つ子どもたちが集まる学校は、よりアンコンシャスバイアスが生じやすい場所でもある。無意識の思い込みが原因となり、居心地の悪さを感じてしまう子どももいるだろう。また、アンコンシャスバイアスがいじめや差別のきっかけになるケースもあるのだ。
アンコンシャスバイアスに対処するためには、トレーニングが必要となる。そのトレーニングで重要となるのが、「知る」「気づく」「対処する」という3つのステップだ。
知る:アンコンシャスバイアスとは何か知ることが、最初のステップだ。
気づく:アンコンシャスバイアスが何か知っていれば、それに気づくことができる。
対処する:組織などで生まれるアンコンシャスバイアスの実態を把握したうえで、その解消に向けた対策を施す。
このようなステップを行うことで、アンコンシャスバイアスを解消するマインドが生まれ、より対処できるようになっていく。
アンコンシャスバイアスは周囲の人々を不快にさせるだけではなく、ときに自身の選択を狭めてしまう恐れもある。たとえば「女性はこうあるべき」という価値観を持っている女性が、その殻を打ち破るのは難しいだろう。こうした壁を乗り越えるためには、まず自身の心のなかに潜むアンコンシャスバイアスへの「気づき」が重要なのだ。
アンコンシャスバイアスは、誰にとっても他人事ではない問題である。まずは自分自身の心を客観的に見つめ直してみよう。意識の持ち方を変えれば、周囲にとっても、そして自分自身にとっても、より暮らしやすい社会の実現に近づけるのではないだろうか。
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