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不確実な社会情勢の中、注目されているのが「パーパス経営」だ。「パーパス」の意味やメリット、具体的な事例について解説する。パーパス経営に取り組む企業が増えているのは、なぜなのだろうか。いまだからこそ、改めて考えてみよう。
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パーパス経営とは、「パーパス」を軸とした経営方針を意味する言葉だ。大きく変動する世界情勢の中で企業が生き残るためには、このパーパス経営という考え方が中長期的に重要だと言われている。
「パーパス」とは日本語で、「目的」や「意思」「意図」といった意味を持つ言葉である。パーパス経営という言葉で用いられる場合には、「存在意義」と訳されるケースが多い。
企業がその目的や意思を明らかにすることは、「自社はなぜこの世のなかに必要なのか?」という課題の明確化につながるだろう。この存在意義を意識した経営方針こそが、パーパス経営の基本的な理念である。
パーパス経営を行えば、企業にはさまざまなメリットが生まれるだろう。ステークホルダーからの支持獲得はもちろん、従業員のモチベーション向上や、明確化された目的のための革新などが期待できる。
「存在意義」と表現されるパーパスだが、似たような言葉にミッションやビジョン、バリューなどが挙げられる。とはいえ、これらの意味合いは、それぞれ微妙に異なるものだ。
ミッションは「使命」、そしてビジョンは「理想像」を意味する言葉である。両者は会社の将来像に目を向けた言葉であり、「いまの、自分たちの存在価値」を示すパーパスとは異なっている。また、バリューは「価値観」を示す言葉だ。「ミッションやビジョンを達成するためには、何が必要なのか?」という視点で使われる。
「パーパス経営とは何か?」を要約すると、「社会における自社の存在価値を明らかにしたうえで、経営を行っていく手法」である。その理念は多くの企業で取り入れられており、注目されるキーワードの一つだ。
ミレニアルズとは、1980年代~1990年代半ばに生まれ、2000年代に成人を迎えた人たちを指す。バブル崩壊後の厳しい世代をくぐり抜けて育った世代であり、それ以前の世代とは異なる価値観を持っている。2020年代を迎えたいま、社会の中核を担うのがミレニアルズだ。
彼らにとってパーパスを持つことはごく当たり前の行動であり、彼らは社会全体にもそれを求めている。企業がパーパス経営を意識すれば、ミレニアルズの共感を集められる可能性が高いだろう。
また、さらに下の世代であるZ世代についても無視できない。この新しい世代の人々は、SDGsや環境問題をごく身近に感じている。そのために各企業がどのように貢献しているのかを、SNSやインターネットを通じて情報収集することは、彼らにとってもはや当たり前なのだ。
企業が持続可能な経営をしていくためには、ミレニアルズやZ世代といった、若い世代からの支持が重要な意味を持つ。彼らに選ばれ続けるためには、自社の「パーパス」を積極的に発信する経営方針が必須と言えるだろう。
2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsも、パーパス経営を世界に広めた要因の一つだ。2030年の目標達成に向けて、各企業がどのような取り組みを行うのかは、社会全体から注目されている(※1)。
持続可能な経営を行うためには、改めて企業の立ち位置を確認する必要があるだろう。パーパスの見直しを迫られた結果、パーパス経営へと方向性を転換する企業が増えていったのだ。
また近年、社会的に広く注目されているのがESGである。ESG、つまり「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(統治:Governance)」の3つは、企業が長期的に成長し続けるために欠かせない視点と言われている。ESGに配慮した経営を行うためにも、パーパスは重要な意味を持つ。
DX(Digital Transformation:デジタルによるビジネスの変革)の推進により、「各種ITテクノロジーを活用し、企業はどのように変革するのか?」という視点が生まれた。これも、パーパス経営が注目されるようになった理由の一つと言われている。
DX実現のためには、パーパスの見直しが欠かせない。企業の存在意義を意識したうえで、適切なITツールを選択して導入していく必要があるのだ。
1. パーパスの明確化
パーパス経営の軸は、言うまでもなくパーパスである。これを明確化しないまま経営に乗り出しても、決してうまくはいかないだろう。社会に対して、自社がどのような価値を提供するのかを明らかにすることが、パーパスの明確化につながる。
2. パーパスステートメントの作成
パーパスが明確化されたら、それを具体的な言葉にする。これがパーパスステートメントだ。誰が読んでもわかりやすい文章で、企業として目指すべき姿を明らかにしよう。
3. パーパスステートメントの実行
作成したパーパスステートメントは、実行されなければ意味がない。パーパスを実現するための具体的な行動を、企業のトップが率先して行っていく必要がある。この実行段階において、企業の代表が果たす役割は極めて大きい。
パーパス経営において、注意しなければならないのがパーパスウォッシュである。一見パーパス経営を行っているように見えるが、実際にはできていない状態を指す。パーパスウォッシュに陥らないためには、以下のような点に注意する必要があるだろう。
・パーパスステートメントはできるだけわかりやすく作成する。
・理想を追い求めるのではなく、自社が実現可能な内容にする。
・自社の成長につながるパーパスを作成する。
パーパスウォッシュの状態が長く続けば、ステークホルダーからの信頼の低下につながりかねない。パーパス経営導入時だけではなく、その実行段階においても適切な経営判断をしていく必要があるだろう。
最後に、パーパス経営を行っている企業の事例を紹介する。
patagonia(パタゴニア)は、各種アウトドアアイテムを製造販売するブランドである。地球環境保護に積極的に取り組んでおり、ビジネスを通じてさまざまな問題の解決策を提案している。
製品開発にはリサイクル素材を積極的に活用し、再生可能エネルギーへの転換を推進。「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションステートメントのもと、多角的な取り組みで注目されている。(※2)
ソニーが設定したパーパスは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」である。ビジネスの内容が多岐にわたる大規模グループだからこそ、パーパス策定には多くの社員が関わり、議論を重ねながら浸透させていった。グループ全体でパーパスを共有したことにより、2020年度は過去最高の連結売上高を記録した。(※3)
世界最大の食品飲料会社であるネスレ。その存在意義について「創業者アンリ・ネスレの精神を受け継ぎ、栄養を中心としたネスレの価値観に導かれ、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高める製品、サービス、知識を個人と家族のみなさまにお届けするためにパートナーとともに取り組む」としている。
具体的には、「5,000万人の子どもたちがさらに健康な生活を送れるように支援」「ネスレの事業活動に直結するコミュニティに暮らす3,000万人の生活を改善」といった取り組みを実施中だ。(※4)
不透明な社会情勢の中、企業の生き残りは決して簡単な問題ではない。そのために何ができるのかを考えたとき、注目されているのがパーパス、つまり企業の存在意義なのだろう。
パーパス経営が注目される背景には、現代ならではの事情が複雑に絡み合っている。今後、自社が社会的にどのような役割を果たしていくのかを明らかにしたうえで、パーパスを意識した経営を実践してみてはどうだろうか。長期的な経営戦略の要となるだろう。
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