近年、小売業で注目を集めている「スマートリテール」。人口減少に伴い労働人口の減少が見込まれる日本では、スマートリテールが解決の糸口になる可能性がある。スマートリテールとは何か、注目を浴びる背景、代表的な事例、将来の市場規模の見込みを解説する。
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「スマートリテール(Smart retail)」とは、テクノロジーを活用して業務を効率化することでコスト削減を実現した小売店のこと。
いわば、小売店のDX(デジタルトランスフォーメーション)化。単純に人件費の削減を行うだけでなく、キャッシュレスや顔認証技術などを使って、消費者の買い物体験そのものに付加価値をつけたり、テクノロジーそのものをマーケティング手法として活用したりしている。
現在では、ECや小売の境界線はあいまいになりつつある。実店舗にテクノロジーを組み合わせたスマートリテールの大きなメリットは、実際の商品を見たり、触ったりできることだ。
日本のスマートリテールの背景には、人口減少と人手不足がある。労働人口の減少が見込まれる日本で、従業員を募ることが難しくなっている。
ECやオンラインストアは、店舗を持つ必要も従業員を雇う必要もないため、実店舗を持つ小売店に比べてコスト面で優位に立つことができる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をきっかけに対面での接客を必要としないECやオンラインストアの利用者が増えるなか、百貨店などのこれまで実店舗を中心に展開していた業種の落ち込みが目立つ。
ECやオンラインストアも当たり前のものとなったいま、実店舗の小売店ではこれまでに増して生き残り戦略が必要とされていると言えるだろう。スマートリテールでもっともポピュラーな技術が、電子タグ(RFID)や人工知能だ。
その代表例が、2018年1月に米国で登場したスーパー「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」。スマートリテールは日本だけでなく、米国や韓国、オーストラリア、中国など世界的に注目される業態だ。
Amazon Go(アマゾン・ゴー)の1号店は2018年1月に誕生した。同店の特徴は、消費者が決済のために商品を登録せずに店を出ても決済が完了する点にある。消費者は入店時にスマホの専用アプリを使って自己を特定するためのバーコードをスキャンする。
商品を選択して手に取ると、店内にあるカメラが自動的に商品と購入者を自動的に特定してくれる。棚にある赤外線センサーや、圧力センサー、重量センサーで商品が戻されたときは自動的にキャンセルされるので、消費者は商品を持って店外に出ることが可能だ。2020年6月現在、アマゾン・ゴーは米国国内で20店舗以上の出展を実現している。
2011年8月、ホームプラスは忙しくて買い物に行く暇のない会社員をターゲットに駅構内で商品を見て注文できるサービスをリリースした。スマホ専用のアプリで商品のQRコードをスキャンし商品注文と支払いを済ませると、商品が自宅に届く。
スマートリテールの導入には、いくつかのハードルがある。そのひとつが、導入コストの高さだ。アマゾンのようにテクノロジーに強みがある企業は比較的導入もしやすいが、その他業種の小売業が独自でシステムを構築するのは現実的ではないだろう。
現状のスマートレジカートやスマートカメラは高額で、他店舗展開が難しい。
スマートリテールの市場規模は、2020年の181億8,000万ドルから、2025年までに555億ドルに成長し、2020年~2025年のCAGR (複合年間成長率) 25.0%に達すると予測されている(※)。
なかでも、バーコードよりも読み取り精度が高い電子タグ市場は注目が高まっている。レジの待ち時間の短縮や、食品の賞味期限の管理に活用できそうだ。現時点では、価格面がネックとなっているが、低価格化が進めば幅広い業種で活用されるだろう。
※ スマートリテール:技術と世界市場|GII
https://www.gii.co.jp/report/bc962723-smart-retail-technologies-global-markets.html
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