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「より良い復興」を意味するビルド・バック・ベター。災害発生にともなう復興・再建などについて、災害前から備えをする考えかただ。災害リスクの削減が期待できる。その詳しい意味と世界の事例、SDGsとの関係について見てみよう。
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ビルド・バック・ベターは「より良い復興」と訳される。災害が発生した際には復興や復旧、再建が必要だ。災害発生後に着手するよりも、災害発生前から備え、災害リスクの削減が期待できる項目を都市計画や開発施策に組み込んでいく考えかたである。
「元の状態」に戻すのではなく、「より災害に強い状態」への到達が主軸だ。
ビルド・バック・ベターは防災における世界標準の意識となっている。きっかけは2015年に仙台で開催された第3回国連防災世界会議だった。
このときに国連文書として採択された「仙台防災枠組」において、災害への備えの向上と国際協力の支持による「より良い復興(Build Back Better)」が提唱されたのである。(※1)
「災害に対する脆弱性の予防」「復旧への備え」を基礎とし、新たな災害リスクの防止と既存の災害リスクを削減する。それがビルド・バック・ベターの考えかただ。
災害被害削減の目標が世界規模で設定されたのは初めてのことであり、世界各国の注目度は非常に高い。
しかし2021年には、米国上院において「ビルド・バック・ベター法案反対」が持ち上がっている。財政への負担や高インフレ加速への懸念が主たる理由だ。
法案反対とはいえ、ビルド・バック・ベターの目的を否定する意味ではない。代替案も提言されており、災害被害削減の意識自体は高いのだ。今後の動きが注視される法案だと言えるだろう。
ビルド・バック・ベターの事例をいくつか見ていこう。世界と日本の事例を3つほどピックアップする。
新型コロナウイルス感染症COVID-19に関連したビルド・バック・ベターは多数ある。例を挙げると、ニューノーマルのライフスタイル、ワークスタイルが推進される社会情勢のなか、オンラインにおける技術発達と浸透はビルド・バック・ベターと呼ぶにふさわしい。
世界中でデジタル技術を活用し、テレワーク、オンライン授業、病院でさえオンライン診療がスタンダードになった。新型コロナウイルス感染症COVID-19で混乱する社会システムを立て直したばかりか、従来にない利便性を人々の生活にもたらしたのである。
(公財)日本生産性本部の「第5回働く⼈の意識に関する調査」によると、日本でも感染症対策をはじめ、生産性の向上などに貢献していることがわかる。(※2)
ネパール地震は仙台防災枠組が採択されたのち、初めて発生した大規模な地震災害である。M7.8の激震は死者8,790人、全壊家屋約50万戸、半壊家屋約26万戸もの甚大な被害を出した。
ネパール政府は被災した住宅の耐震性が低いと判断。そこでより耐震性の高い住宅の普及のため、一定の規定を満たした住宅での再建に補助金を出す方針を打ち出した。(※3)
JICAの支援もあり、ネパールの被災者の多くは以前よりも耐震性の高い住宅を完成させた。復興とともに未来の災害に対する強靱な備えをするに至ったのである。まさにビルド・バック・ベターの好例と言えよう。
日本では仙台防災枠組が採択される以前から、「より良い復興」についての意識が強い。
1995年に発生した阪神・淡路大震災では、全壊家屋が10万棟を超える甚大な被害が発生した。これを機に、復興計画では関係者の多大なる尽力により、耐震性の高い建物の導入や耐震改修を進めるなど、「震災に強いまちづくり」がおこなわれるようになったのである。
また、2011年の東日本大震災の復興でもビルド・バック・ベターが強く意識されている。復旧ではなく抜本的な再構築を掲げ、住民の高台への集団移転や堤防のかさ上げなど、予測できる災害への対策として、過去よりも強靱な備えを推し進めているのだ。(※4)
ビルド・バック・ベターはSDGsとも深い関係がある。SDGsのゴール11「住み続けられるまちづくりを」が該当。ゴール11に関しては、以下のページにて詳しく解説している。
SDGsの理念は「誰一人取り残さない社会」。その理念を活かし、復興の際、SDGsを意識した都市計画や施策を組み込むのは、ゴール達成のために非常に有効な手段である。
ビルド・バック・ベターのなかにSDGsを取り入れることにより、すべての人が安全で清潔な環境に住めるようになるだろう。貧困層や弱い立場にある人々に対しても焦点を当てやすくなり、気候・経済問題にも大きな注目を集められる。
SDGsとビルド・バック・ベターの関係は深く、そして相性が良いと言えるのではないだろうか。
「より良い復興」ことビルド・バック・ベターは、元の状態よりもさらに強靱な備えをする考えかたである。日本をふくめ、世界ではすでに事例が増えつつある状況だ。
地球に住んでいる以上、人間は災害と無縁ではいられない。より強靱な備えが多くの人々にもたらされるよう、ビルド・バック・ベターを意識した計画・施策が求められる。
※1 仙台防災枠組 2015-2030(骨子)(1ページ目)|外務省
※2 第5回 働く⼈の意識に関する調査 調査結果レポート(19ページ目)|公益財団法人 日本生産性本部
※3 地震復興における包摂性に配慮した Build Back Better の実践的手法: JICA ネパール地震復興事業に基づく論考(4ページ〜5ページ目)|独立行政法人 国際協力機構(JICA)
※4 平成27年版 防災白書|特集 第3章 第2節 2-3 国際復興支援プラットフォーム(IRP)|独立行政法人 国際協力機構(JICA)
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