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グリーンライフポイントは、2021年の補正予算案で101億円もの予算が計上された注目の制度である。制度の仕組みや背景、利用方法を学ぼう。ポイントが付与される5つの分野から、制度導入によって得られるメリットまで、詳しく解説する。
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グリーンライフポイントとは、環境に配慮した行動に対してポイントが付与される制度。ポイント還元という目に見えるお得さをアピールし、国民一人ひとりの行動変容を促す狙いがある。
グリーンライフポイント導入の背景にあるのは、世界と日本が抱えるさまざまな環境問題だ。温室効果ガスを削減し、資源循環型の社会を目指すためには、脱炭素型のライフスタイルへの移行や、食品ロスの削減が急務である。また使い捨てプラスチック製品の需要を減らすことも、非常に重要なポイントと言えるだろう。
しかしいくら「環境のため」とはいっても、利便性の高いライフスタイルを自ら捨てることは困難だろう。だからこそ、グリーンライフポイントによって自発的な行動を促そうというわけだ。
ちなみに、こちらの制度の正式名称は『食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業』と言う。実施するのは環境省であり、2021年度の補正予算案には、101億円の予算が盛り込まれている。(※1) 早ければ2022年度からスタートすると言われている。
グリーンライフポイントは、環境に配慮した行動を取ることによって付与される。グリーンライフポイントという独自のポイント制度が用意されるわけではなく、利用した店舗それぞれが実施しているポイント制度に、グリーンライフポイント分が上乗せされる仕組みになる予定だ。
付与されたグリーンライフポイントは、既存のポイントと同じように利用できる。消費者が特別な手続きをする必要はないため、手軽にグリーンライフアクションを取りやすいと言えるだろう。
グリーンライフポイントは、以下の5つの分野において実施される。それぞれの詳細をチェックしてみよう。
ファッションの世界は非常に華やかなものだが、環境に与える負荷は極めて大きい。ファッションアイテムを制作する過程はもちろん、廃棄する過程においても、環境への配慮は欠かせないと言えるだろう。
数あるファッションのなか、持続可能性を意識したアイテムを選択したり、リユースやリサイクル、レンタルサービスを活用したりすれば、ロスは減少する。これらの行動に対して、グリーンライフポイントが付与される予定だ。
食べきれない食品の大量廃棄は、先進国における非常に大きな社会問題である。問題を解決するため、「賞味期限・消費期限が迫っている食品を購入する」「食べ残した料理を持ち帰る」といった行動に対して、グリーンライフポイントが付与される。
また現代社会において、食品は「輸送」や「畜産」といった問題とも深く関わっている。たとえば畜産は水、土地、穀物を多く使用するため環境への影響が大きい。また欧州のNGOの発表によると、世界の畜産・酪農大手20社が排出する温室効果ガスの量は、ドイツやイギリスの経済活動による排出量より多いことがわかっている。
地域で生産されたものや、動物性食品を排除するビーガン食の推進も、グリーンライフポイントの対象である。
二酸化炭素排出量を削減するために欠かせないのが、家庭別の住まいの対策である。新たに再生可能エネルギーを導入したり、省エネ効果の高い機器への入れ換えを実施したりすることで、グリーンライフポイントが付与される。
買い物をする際の、廃棄物削減につながる行動がポイント付与対象となる。プラスチック製のスプーンや箸を断ったり、簡易包装の商品を選択したりすることで、グリーンライフポイントが付与される。
カーシェアリングやシェアサイクルの活用が、ポイント付与対象となる。個々が車を所有するのではなく、「必要なタイミングに応じて借りる」という仕組みをさらに浸透させることで、環境負荷の低減を狙う。
グリーンライフポイントは、消費者と企業の両方にメリットをもたらす。消費者にとっては、自身の選択によって、これまで以上のポイントを受け取れる。現金と同じ感覚で使えるポイントであれば、家計負担の軽減につなげられるだろう。
企業にとってのメリットも、決して少なくない。社会的にも環境意識が高まるなか、環境に配慮した取り組みを打ち出すことは、極めて重要になってきている。グリーンライフポイントを活用すれば、そうした取り組みも社会全体に浸透させていけるだろう。
またファッションロスや食品ロスの処分費用は、企業側にとっても大きな負担となっている。経費削減につなげられるかもしれない。
我々はいま、さまざまな社会課題に直面している。なかでも、国際的に注目度が高まっているのは、温室効果ガス削減に関する取り組みである。2015年12月に採択されたパリ協定では、脱炭素社会の実現が具体的な目標に。
グリーンライフポイント推進事業では、2030年温室効果ガス46%削減達成を目指している。衣類や食、住まいや移動など、さまざまな観点から脱炭素に向けた取り組みを加速させる狙いだ。(※2)
また、農林水産省が2020年4月に発表したデータによると、612万トンもの食品ロスが発生している。この問題は、日本が抱える社会課題の一つ。食品ロス半減も、グリーンライフポイントが掲げる目標である。(※3)
このほかにも、プラスチック製品からの脱却や景気問題など、日本が抱える問題は、複雑に絡み合っている。環境負荷を軽減する行動に対してポイントを付与すれば、「言われてやる」のではなく、「自発的に行動する」ことによって、社会全体の仕組みを変えていける可能性も。うまくいけば、環境対策と景気対策の両方を実現できるだろう。
環境対策を意識した行動に、ポイントという目に見える価値を与えることで、一人ひとりの意識向上に役立つだろう。
ふだん何気なく選択しているものを、あらためて見つめ直すきっかけになるかもしれない。グリーンライフポイントを通じて、いまの自分が無理なくできることは何なのか、検討してみてほしい。
※1 食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業|環境省
令和3年度補正予算(案)について(2ページ)|環境省
※2 食とくらしの「グリーンライフ・ポイント」推進事業
パリ協定長期成長戦略のポイント|経済産業省
※3 食品廃棄物等の利用状況等(平成29年度推計)<概念図>|経済産業省
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