サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは 言葉の意味から世界の取り組み状況まで

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先行き不透明な社会情勢のなかで、注目されているのがサステナビリティ・トランスフォーメーションである。企業が生き残るために必須と言われているが、具体的に何を意味しているのだろうか? 意味や概念、注目される背景、事例までわかりやすく解説する。

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2022.02.28
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目次

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは

サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とは、企業が持続可能性を重視した経営方針へと切り替えることを言う。企業にとって重要なのは「稼ぐ力」。こうした考え方は、資本主義社会のなかで広く浸透していた。しかし短期的に稼ぐだけでは、長期的な成長にはつながらない。

また時代の変化とともに、環境、社会、ガバナンスへの配慮も求められるように。これらすべてのバランスを意識しつつ、持続可能性を重視するのが、サステナビリティ・トランスフォーメーションの基本的な考え方である。

サステナビリティ・トランスフォーメーションが提唱されたのは、2020年8月のことだった。経済産業省経済産業政策局が発行した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会」のなかで、その基本的な考え方が説かれている。(※1)

デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)との違い

企業に求められる変革としては、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を思い浮かべる人も多いだろう。DXが重視しているのは、デジタル技術を用いて、できるだけ素早く競争優位性を確保すること。つまり、短期的な目線で他社に負けないことである。

一方でSXが目指すのは、長期的な目線で見た持続可能性だ。近年の社会情勢の変化により、DXよりもSXに力を入れる企業が増えてきている。

グリーントランスフォーメーション(GX)は、再生可能エネルギーへの移行をはじめとした先進的な取り組みを通じ、経済活動を止めずに脱炭素化社会の実現を目指すという考え方だ。

SXが注目を浴びる背景

SXが注目を浴びる背景には、さまざまな社会情勢の変化がある。感染症の流行や第四次産業革命による技術革新、サプライチェーンの寸断など、我々が暮らす社会の先行きは、非常に不透明なものだ。企業が生き残るためには、不透明な状況にも柔軟に対応していく必要がある。しかし、何の準備も整っていなければ、うまく対応することは不可能だろう。

また、社会全体が社会をどう見るのかにも、大きな変化が生まれてきている。より具体的に言えば、企業が社会に対してどのように貢献しているのかということに注目する人が増えているのだ。どれだけ稼いでいても、社会への貢献度が低い企業は、市場の支持を受けにくい。つまり、十分な投資を受けられなくなったり、市場から求められる力が弱まったりする可能性があるのだ。

こうした世の中だからこそ、長期的に「稼ぐ力」を維持しつづけるためには、経営のあり方、社会全体との関わり方、そして企業と投資家との対話のあり方から変えていく必要がある。そのために必要なのがSXであり、多くの企業が変革のときを迎えているのだ。

SXはなぜ必要なのか? 変化する時代への対応力向上

SXの目的は、長期的な企業価値の向上である。それぞれの企業が持つ強みやビジネスモデルを持続化・強化できれば、社会情勢の急激な変化にも、うまく対応できる可能性が高まるはずだ。

企業戦略と社会実情のギャップを把握しておくことは、企業にとってのリスクと機会を明らかにするチャンスとなるだろう。投資家との対話を繰り返すことにより、理解が深まれば、長期的な目線でのレジリエンス強化につながっていく。

SXが必要とされる理由は、そこに企業としての生き残りがかかっているからである。これから先の時代を生き抜いていくためには、SXの実現が欠かせないのだ。

具体的な取り組み状況

SXの重要性が高まるなか、世界や日本では、具体的にどのような取り組みが行われているのだろうか。それぞれの取り組みの動向や現状について解説しよう。

世界におけるSXの取り組み状況

世界においても、SXへの注目度は非常に高まっている。グローバル化が進むいま、先行き不透明な状況は、日本だけの問題ではない。また感染症によるパンデミックの影響も大きい。もともと海外は、ESG投資において、日本よりもはるかに先を進んでいた。サステナビリティ・トランスフォーメーションにおいても、日本より先進的な取り組みをする国や企業も多く見られる。

たとえばフランスの保険会社AXAは、従業員のSXに向けた取り組みを積極的に支援している。同社は、環境問題や専門知識について学ぶための専門プログラム「Climate School」を用意。世界的に顧客を抱える保険会社という立場を活かし、気候関連のリスクが人々にどのような影響を与えるのかについて、科学的な知識を収集した。それをもとにトレーニングを行い、気候変動問題に対して、企業の内側からのSX実現を目指している。

パンデミックの真っただなかにあっても、問題に対する優先順位を設定した上で、スムーズに対応。世界中の従業員たちが、オンライン上で学べる仕組みを用意している。(※2)

日本におけるSXの取り組み状況

日本でSXが注目されるようになったのは、2020年以降のこと。感染症の拡大によって、その重要性が広く知られるようになった。激動の時代に生き残りをかけて、早急に実現を目指す企業も多くなっている。

日本で行われている取り組みの一つが、サーキュラー・エコノミー(循環経済)の推進である。サーキュラー・エコノミーとは、いまある資源を有効活用し、無駄をなくす取り組みのこと。アミタホールディングスやNTTコミュニケーションズを始めとする企業グループが、2020年に「九州サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ」を発足した。

2021年7月9日から半年にわたって、使用済みプラスチック回収実証実験「MEGURU BOX(めぐるボックス)プロジェクト」を実施。企業の枠を超え、SX実現に向けた取り組みを行ったとして、高く注目された。(※3)

日々重要度が高まるSX

急激に変わりゆく世界のなかで、企業にとって必要なのが、サステナビリティ・トランスフォーメーションである。持続可能性を重視した経営方針へと切り替えられなければ、今後の生き残りは難しいと言えそうだ。

パンデミックが落ち着いても、気候変動や人口減少、急激な技術革新など、我々が抱える問題はまだまだ多い。SXに注目し、実現に向けた具体的な取り組みをスタートする必要があるだろう。

※掲載している情報は、2022年2月28日時点のものです。

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