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サステナビリティとは「持続可能性」のこと。2015年に国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」の普及によって、注目を集めている。その意味やSDGs、CSRとの違いをわかりやすく解説。すぐに始められる具体的なアクションとあわせて紹介する。
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「サステナビリティ」とは、英語の「sustainability」。「sustain=持続する」と「~able=~できる」を組み合わせた言葉で、日本語に訳すと「持続可能性」を意味する。
「サステナビリティ」とよく似た言葉に、「サステナブル」がある。これは「持続可能な」という意味の形容詞だ。一方、サステナビリティは名詞として使われる。
どちらも似た意味だが、「サステナビリティ」の方が地球環境や生物多様性、人間の文明・経済活動がバランスよく長期的に継続できる状態を目指す概念として用いられることが多いだろう。
「サステナビリティ」と近い言葉に、「SDGs」や「CSR」もある。それぞれの違いを見てみよう。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。深刻化する気候変動に対する危機感のなか、世界が抱えるさまざまな問題を解決するため、2015年に国連サミットで採択された世界共通目標である。これに国連加盟国193ヶ国が合意し、2030年までの達成を目指す。
「1日に1.90ドル未満で生活する人々を世界からなくす」「世界中の人々に平等に医療福祉や教育の機会を提供する」「海洋汚染や乱獲・違法漁業を防ぎ海洋生物の生態系を守る」など、17の大きな目標と169のターゲットが掲げられている。
SDGsはサステナビリティと混同されるが、SDGsは目標自体を指すため、持続可能性を意味するサステナビリティとは異なる。ただし、あらゆる課題を解決することで地球上の生物と地球の末長い繁栄を目指すSDGsのような動きは、サステナビリティの一環といえる。
CSRとは、「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」の略称。企業の事業活動によって社会に与える影響に対する責任、またステークホルダーからのリクエストに対して適切に応じる責任を意味する。
企業は社会のなかに存在している。そのため、社会の持続的な発展を目指すことは、企業の存続と発展にもつながる。だから、企業は自分たちの利益だけを追求するのではなく、事業活動を通して持続可能な未来を社会とともに築いていこうというわけである。
たとえば製品の生産工程、また使用・廃棄される際の環境負荷に配慮すること、従業員に対して公平で適切な労働環境を提供することもCSR活動である。
CSR活動は、コストやリソースが掛かるというデメリットはあるが、ステークホルダーとの関係構築や企業のイメージアップ、新たな顧客価値の創造など期待できるメリットも大きい。
よりよい社会や未来を目指すという意味ではサステナビリティとCSRは似ているが、サステナビリティは社会全体が対象となる一方、CSRはあくまで企業活動が対象となる点で異なる。ただしSDGs同様、CSRを意識した経営活動もまた、サステナビリティの向上につながるといえる。
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2005年の世界社会開発サミットで示された、サステナビリティを考えるうえで重要となる社会(人々)・環境(地球)・経済(利益)の3つの概念(トリプルボトムライン)。サステナビリティのゴールは、この3つの柱がバランスよく統合されている状態でなければならない。
貧富の差、ジェンダーや人種格差といった不平等のない持続可能な社会を目指すこと。とくにコロナ渦によって貧困や人権問題が浮き彫りになった。後発開発途上国における雇用の創出や職業支援、児童労働の根絶や教育の普及、女性のエンパワーメント促進のための法整備など社会的な構造の見直しが進められている。
地球を持続可能な場所とすること。たとえば森林再生や動植物の保護、海洋資源の管理による生物多様性の保全、化石燃料に替わる再生エネルギーの開発など。人間活動によってかかる負荷を軽減し、地球環境を保護することが重要課題である。
人々の経済活動が持続可能となる仕組みを目指すこと。そのために企業は、企業経営とサステナビリティの両立が求められる。これは著名な経営学者マイケル・ポーター氏が提唱したCSV(Creating Shared Value)という概念である。CSR活動やESG投資をしながら長期的な成長を目指すことが、今後の企業経営のスタンダードとなる。
サステナビリティという概念は、1987年開催の「環境と開発に関する世界委員会」で発表された頃から、人々に認知されていった。それ以降も地球サミットや国連環境開発特別総会などで度々議題としてあげられ、有識者の間では30年以上も前からその重要性が語られてきた。
近年注目を集めるようになった理由に、2015年の国連サミットで採択されたSDGsがあげられる。SDGsを通じて、サステナビリティという概念が世界中に浸透したのだ。
また、CSRやESG(Enviroment Social Governance)投資といった企業の長期的な経営戦略が見直されているという点も大きい。ESG投資とは、環境問題への取り組み、社会への貢献、健全な企業体制というような観点で投資先を選ぶ手法のこと。
いまや目先の業績や財務状況ではなく、持続可能な社会との共生を目指す企業こそが選ばれる時代へとシフトしている。それもまた多くの企業が追随してサステナビリティに注目する理由といえるだろう。
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「サステナビリティなことを始めよう」と言うと、我慢を強いられるのではないかと思ったり、身構えたりする人がいるかもしれない。しかし、気候問題に対するアクションは、私たちの生活の質を高めることにつながる。地球や社会にいいこと=自分の生活も豊かになることと捉えて、気軽にチャレンジしてみよう。
・食材は必要な分だけ買う。使い切れない時は冷凍して余さず活用する
・レジ袋、ストローは断る
・マイボトルを持ち歩く
・肌にも環境にもやさしい食器用洗剤を使う
・紙に印刷せずにオンラインで確認する
・こまめに電気を消し、シャワーの出しっ放しを控える
・ほしいと思ったらまずは中古品を探してみる
・吸水ショーツなど生理用品を見直してみる
・カーシェアリングや自転車シェアリングを活用する
・『ELEMINIST SHOP』などで、サステナブルな商品を探す
・環境にやさしい商品を選んで購入する
・商品の原材料の取得や生産にあたって、環境に影響を与えていないか聞く
・従業員や生産者の安全、労働環境に対して適切に管理しているか聞く
・企業の「持続可能性に関する報告書」を読む。不明な点があれば質問する
・持続可能な社会に貢献している会社の商品やサービスを選び応援する
・自治体が実施する回収日を守り、使用したプラスチックやカン・ビンの回収に協力する
・消費者や市民団体がいい商品を選べるようにつくられたアプリを活用する
・宅配便は一度で受け取り、再配達を減らす
・店の食品は棚の手前(賞味期限が古いもの)から取り、食品ロスの軽減に貢献する
・ビーチクリーンやセミナーなどサステナビリティに関する活動を支援・参加する
地球上のあらゆる生物が誰一人として取り残されず、社会(人々)・環境(地球)・経済(利益)の3つの側面において、持続可能な世界を目指すサステナビリティ。しかし、3つの柱を提唱した張本人であるジョン・エルキントン氏は、それだけでは不十分だと改めて語っている。
なぜなら、その概念が広まることで「それさえ守っていれば大丈夫だろう」というある種の免罪符となってしまったからだ。たとえば環境にやさしいと謳っている商品が、生産過程では途上国の労働力を安く買い叩いていたとあってはサステナビリティの本質から大きく外れてしまうだろう。
『人新世の資本論』で話題となった斎藤幸平氏も著書の冒頭に「SDGsは大衆のアヘンだ」と言い放っている。そもそもサステナビリティを追求するならば、現在の社会システムが根本的に見直される必要もあるのかもしれない。
いずれにしても私たちは、何が本当にサステナビリティなのかを常に自分の頭で考え、選択していくことが必要なのである。
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