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ニューヨーク州が、ファッション業界におけるサステナビリティや社会的説明責任を問う新しい法案を検討中だ。この法案では、大手アパレルブランドはサプライチェーンの情報開示などが求められる。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
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ニューヨークがファッション業界の新たな“スタンダード”をつくるかもしれない。
米ニューヨーク州議会で2022年1月7日、「ファッションの持続可能性と社会的説明責任に関する法案(The Fashion Sustainability and Social Accountability Act)」が提出された。
この法案はアレッサンドラ・ビアッジ上院議員とアンナ・R・ケレス下院議員が提出。ファッション産業は、環境と社会への影響を軽減する責任があるという考えのもと、作成されている。
具体的には、原材料を栽培する農場から縫製工場などを経て出荷されるまでのサプライチェーンのうち、50%以上を開示することが求められる。
さらに、そのサプライチェーンの中で、公正な賃金が支払われ、かつエネルギー、温室効果ガスの排出、水、化学物質管理に関して、社会的・環境的影響が大きい部分を明示。それを軽減するために、具体的な計画を立てなければならない。
他にも、綿、革、ポリエステルなどの素材の生産量についても、開示が義務付けられる。これらの情報は、すべてオンラインで公開する必要がある。
規制の対象となるのは、ニューヨーク州で事業を行い、売上が1億ドル(約114億円)を超えるアパレルおよびフットウェア企業。LVMHグループ、プラダ、アルマーニといった最高級ブランドから、シェイン(SHEIN)やブーフー(boohoo)のようなファストファッションの大手まで、多国籍ファッション企業の多くが該当する。
対象となる企業には、情報開示のための猶予期間として12ヶ月間が与えられる。違反した場合は、年間売上高の2%を上限に罰金が課され、徴収された罰金は環境正義のプロジェクトに使用される。また、違反した企業は一般に公表されるという。
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ファッション業界のシンクタンクであるニュー・スタンダード・インスティテュートの創設者、マキシン・ベダは「ファッション業界はもっとも規制の緩い業界のひとつ」と指摘する。その理由のひとつは、サプライチェーンが複数の国や大陸をまたいで構築されており、複雑で把握が難しいためだ。
またブランドによって、サステナビリティの取り組みも異なる。グッチ、サンローラン、バレンシアガなどを傘下にするケリングは生物多様性戦略などを発表し、環境に配慮した取り組みを積極的に行っている。
一方、中国発のファストファッションブランド、シェインでは、環境、社会、ガバナンス (ESG)の責任者が2021年12月に採用されたばかりという。
今回の法案は、業界の現状を把握し、これまでに行われてきた取り組みを認め、共通の基準をつくることとなる。「正しいことを行うことが、競争上不利にならないようにする」と、ベダは述べている。
この法案は今後、上院・下院の両議会で審議される予定だ。そして可決されれば、ニューヨークはファッション業界の大手ブランドへサステナビリティや社会的責任を問う法律を制定する、アメリカで初の州となる。
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