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いま注目されているケアエコノミーについて、その意味や注目される理由、具体的な取り組みについて解説。世界が抱えるさまざまな問題を解決するため、ケアエコノミーの正しい内容を把握しよう。ケアワークやアンペイドワークとの関連性についても紹介する。
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ケアエコノミーとは、「育児・介護などのケアワークに関する経済活動」を意味する。その語源は、ケアワークとエコノミー。つまり、日常的な家事や育児、介護や看護と、経済とを組み合わせてつくられた言葉だ。
ケアエコノミーがとくに注目されるようになったのは、ここ最近のことである。歴史的に見ると、各種ケアワークは家族によって家庭内で行われてきた。その担い手は、主に家庭内の女性たちであり、彼女たちは賃金を受け取ることはなかった。
ケアワークは、アンペイドワークの問題とも密接に関わっている。男性と女性が社会で平等に活躍するためには、ケアワークおよびアンペイドワークに関する問題を解決する必要があるだろう。とはいえ、いざ女性たちが外で働こうとすれば、家庭内でケアワークを担う人材が必要となる。そのために、ケアエコノミーの必要性が増しているというわけだ。
ケアエコノミーという言葉が注目されたのは、いまの時代が初めてではない。女性解放運動が活発化した20世紀初頭においても、ケアエコノミーを含むケアに関する問題への人々の意識は高まっていた。新たな感染症が問題視されるいま、ケアエコノミーを重視する流れはさらに強まっている。ケアエコノミーは、我々の生活全体を支える経済活動と言っても過言ではないのだ。
ケアエコノミーは世界中で拡大をはじめた。その理由の一つは、社会全体の需要によるもの。そしてもう一つは、社会および企業にとってのメリットだと言えるだろう。
社会にとってのメリットは、ジェンダー平等に向けた一歩になりうるという点にある。ケアエコノミーが拡大すれば、女性たちの活動の選択肢を増やすことにつながるだろう。これまで「アンペイドワークに従事せざるをえなかった女性たち」が、社会で活躍できるようになるかもしれない。また、「ケアワーク=アンペイドワーク」という従来の認識を、変えるきっかけにもなるはずだ。
一方で、企業にとってもメリットは豊富だ。まず、ケアエコノミーそのものの拡大によって、新たなビジネスチャンスをつかめる可能性がある。また、これまでケアワークに従事していた人たちが外で働くようになれば、より幅広い人材の獲得につながっていくだろう。人手不足に悩む企業にとって、非常に大きなチャンスと言える。
人手不足と担い手の負担が問題視されやすい介護分野。少子高齢化の影響により、ケアエコノミーの必要性が今後もさらに増していくと予想される分野である。世界的にもこの分野での注目度は高い。また、先進国の人手不足を途上国の人材で補おうとする、新しい形のケアエコノミーも拡大中だ。
子どもの教育に関する分野にも、ケアエコノミーの必要性は高い。男女ともに社会で活躍するためには、子どもを安心して預けられる場所の確保が必要不可欠である。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴って、子どもたちに「学校」以外の居場所をつくることが重要な意味を持つようになってきている。ただ、ニーズはあるものの、まだ対策は不十分だ。
日本におけるケアエコノミーの現状は、まだまだ発展途上である。とくに大きな課題を抱えているのは、介護分野だろう。
急激に少子高齢化が進む日本において、介護問題をどう解決していくのかは、社会問題の一つである。その解決策として提示されているのが、地域包括ケアシステムだ。
厚生労働省が実現を目指す、このシステム。その特徴は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援を目的とし、人生の最後まで安心して生活できるよう、地域に包括的な支援・サービス提供体制を構築することだ。これが実現すれば、高齢者は可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを続けていけるだろう。
厚生労働省は2025年を目途に地域包括ケアシステムの整備を進めてはいるものの、実際には実現困難だろうと見る向きもある。実現のためにはケアエコノミーが必要だが、その拡大に欠かせないのは、ケアワークに携わる人材と予算の確保である。どちらも決して簡単ではない。
では、実際にケアエコノミーに取り組んでいるのは、どのような企業だろうか。具体例を3つ紹介しよう。
2016年12月にサービスを開始した「CrowdCare」。これは株式会社クラウドケアが運営するサイトで、訪問介護・家事・生活支援を必要な人と提供する人をマッチングしてくれるもの。介護とシェアリングエコノミーを組み合わせた新たなビジネススタイルで、介護保険だけでは補いきれない細かなニーズにも対応している。
2013年に「地域福祉交流センター」を開設したデイサービスの「エムダブルエス日高」は、最大定員400名という大規模施設で、さまざまなサービスを提供している。利用者それぞれが「1日の過ごし方は自分で決める」というコンセプトのもと、要支援・要介護の区分にとらわれないプログラムを利用可能だ。介護保険収入だけに頼らない経営手法で、新しい形の介護施設として注目を集めている。
株式会社80&Companyが2020年に立ち上げた教育の仕組みが、Cross Education Lab.である。さまざまな分野で活躍する専門家を迎え、学校教育だけではカバーしきれない多彩な「教育」を提供している。子どもたちだけではなく、成人後のリカレントへの教育にも対応。実社会に密着した経験から学べる。
ケアエコノミーは、今後の日本はもちろん、世界の発展のために欠かせないものだ。より暮らしやすい社会を実現するため、またジェンダー平等社会実現のため、積極的な推進が望まれる。とくにいま、この時代にこそ、ケアエコノミーの重要性はさらに増していると言えるだろう。ケアエコノミーに取り組む企業とその事例にも注目してみてほしい。
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