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オランダ政府は、国内の家畜の数を30%削減することを検討中だ。家畜の糞尿に含まれるガスが地球温暖化につながり、糞尿から発生するアンモニアが自然環境にダメージを与えることが懸念されている。畜産農家は、必要に応じて国に土地などを売却することが検討されている。
染谷優衣
フリーランスライター
YouTubeのThrift Filp動画をきっかけにサステナブルに興味を持つ。最近は洋服のリメイクを勉強中。リサイクルショップで掘り出し物の古着を見つけるのが好き。
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オランダ政府が、国内の家畜の数を最大3分の1まで減らす取り組みを検討中と、英ガーディアン誌(米国版)が報じた。
事の発端は、2019年のことだ。環境NGOがオランダ政府を相手取り、2020年の温室効果ガス排出削減目標の引き上げを求めた訴訟を起こした。オランダ最高裁判所は、オランダ政府に対し、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減するよう命じたのだ。
以来、オランダ政府は日中の高速道路の速度制限を時速130kmから100kmに変更したほか、温室効果ガスを大量に排出する建設プロジェクトを中止するなど、数々の対策を講じてきた。
また同国では、欧州石油最大手のロイヤル・ダッチ・シェルに対し、環境保護団体などが気候変動訴訟を起こし、勝利。オランダの裁判所は2021年5月、シェルの温暖化ガス削減目標は十分でないと判決を言い渡すなど、気候変動に対する市民の意識が高まっている。
このような状況を背景に、オランダの財務省と農業省は、オランダ国内の家畜の数を30%削減することを検討しているという。
今回、家畜に焦点があてられたのは、家畜の増加による近隣環境への悪化が問題視されているからだ。家畜の糞尿は、アンモニアを発生させる。過剰なアンモニアが農場から川や湖に流れ込むと、例えば藻類の繁殖を促して地表水の酸素を減少させるなど自然環境にダメージを与える。
また家畜の糞尿に含まれる一酸化二窒素などのガスは、地球温暖化につながる。オランダの畜産業はヨーロッパ最大級の規模であり、牛、鶏、豚の飼育頭数は1億頭を超えるという。そのため、今回の家畜の数を減らす計画が持ち上がった。
なお、この計画には、必要に応じて農家が畜産の権利や土地を国に売却する内容が含まれている。
オランダ農業省の広報担当であるRudi Buisは、次のようにコメントしている。「オランダは小さな国であり、自然の摂理の限界に達しつつある。アンモニアなどの窒素化合物の問題に取り組むことは、非常に緊急性の高い課題だ」
しかし、気候危機のために畜産農家が土地を強制売却するという考えは、政治的に議論の的となっている。
国際環境NGO「地球の友」オランダ支部のBram van Liereは、「これは正しい方向への一歩だ」と評価。畜産農家が持続可能な農業に移行するための制度構築や、工業的な農業への施策を行うことで、より強固な提案にできるという。
今回の提案は、畜産業からよりサステナブルな農業へのシフトを国が促進する一つのきっかけになり得るだろう。今後もオランダやヨーロッパの動向に着目していきたい。
※参考
Netherlands proposes radical plans to cut livestock numbers by almost a third|The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/2021/sep/09/netherlands-proposes-radical-plans-to-cut-livestock-numbers-by-almost-a-third
気候変動でオランダ最高裁が「驚くべき判決」|日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00054/
オランダ裁判所、シェルにCO2排出削減加速命じる|ロイター
https://jp.reuters.com/article/shell-netherlands-court-idJPKCN2D801D
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