ドイツ発イタリア生産「CLOSED」のエコデニム開発者が考えるサステナビリティとは?

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ヨーロッパ各都市の先端サステナビリティ

ドイツ・ハンブルク発の老舗ブランド「CLOSED」は、パートナーシップを結んだ工場とともに40年以上に渡り、環境にやさしい服づくりに取り組んできた。画期的なエコデニムの開発から思想に至るまで、サステナブル開発責任者であるUwe Kippschniederさんに話を伺った。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト/PR

長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…

2021.05.15

パートナーシップ工場との信頼関係が生み出す上質なエシカル

立つ男性のポートレート

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サステナブル開発責任者のウーヴェさん。デニムだけに限らず、「CLOSED」製品すべての責任を担っている

「CLOSED(クローズド)」は、デニムブランドとして、1978年にドイツ・ハンブルクにて設立された。「100%エコレーベルではない」と公言しつつも、設立初期の1980年から積極的にサステナブルなものづくりに取り組んできた稀少なブランドといえる。

設立当初は、パートナーシップを結ぶ工場との信頼関係を築くことに重点を置き、良質なものづくりに専念していた。具体的なサステナブルな活動といえば、2014年から毛皮の使用を中止、2020年の夏からオックスフォードシャツやジーンズは100%オーガニックコットンを使用、革ではなく、ジャクロンでつくられたビーガンロゴパッチを使用している。

オンラインショップでは、動物由来の成分を含まない製品であることを証明するために、動物の権利団体「PETA」承認のビーガンシールを導入、アンゴラやダウンは一切使用しないなど、さまざまな取り組みを行っている。

なかでも、デニムに関しては、長年に渡り画期的な素材開発や商品開発に取り組んでおり、エコデニムのパイオニア的存在としても知られている。

「CLOSED」がモットーとするのは、"Step by step a little better “。40年以上に渡り、伝統的な職人技術と地球環境にやさしくて高品質なものづくりに尽力してきた「CLOSED」が考えるサステナビリティーとは? サステナブル開発責任者であるUwe Kippschnieder(ウーヴェ・キップシュナイダー)さんへ、いくつか質問した。

Q1. 「CLOSED」立ち上げ当時の1978年頃には、まだファッション業界もサステナブルを意識していなかったのと思うのですが、早い段階で取り組もうと思った理由はなんですか?

当時は「サステナブル」とは言っていませんでした。ただ、パートナーである生産工場と長期的な信頼関係を築くことに重点を置きながら、高品質で長持ちする服づくりを目指してきました。

これは現在も変わりません。設立当初から一緒に取り組んできたパートナーと環境に優しくて、革新的な製品を開発し続けています。2018年から新たにスタートさせたエコデニムラインの「A BETTER BLUE」から、アクセサリーやアウターウェアなどに使用するオーガニック素材やリサイクル素材に至るまで、さまざまな製品を一緒に開発しています。

デニムパンツ

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2018年よりスタートしたエコデニムライン「A BETTER BLUE」

Q2. エコデニムラインの「A BETTER BLUE」の誕生まで、老舗ブランドならではの画期的な素材開発や商品開発が行われたのではと思っています。どういった経緯だったのでしょうか?

設立当初からパートナーシップを結んでいるイタリアのデニム工場「CANDIANI DENIM」 やクリーニング工場「エベレスト」、生地メーカーとの密接なパートナーシップを10年以上に渡り築いてきたことによって、ごく自然にサステナブルなデニムライン「A BETTER BLUE」の着想へとつながっていきました。

私がこれを思い付いたのは2017年でしたが、それ以前から、弊社の商品には、環境汚染に影響の少ない生地や洗濯処理を施したものがいくつかありました。しかし、それはまだサステナブルとは呼べるものではなく、それに対するコミュニケーションも取っていませんでした。

「エベレスト」のオーナーであるアルベルトに、EIM(Environmental Impact Measuring)という新しい測定システムについて話をしたところ、彼はとても興奮していました。スペインのJEANOLOGIA社が発明したこのソフトウェアは、デニムの洗濯レシピをひとつ一つ分析し、水や化学物質、エネルギー、さらには労働者の手作業の使用によるエコロジーへの影響を測定することができるのです。

このシステムを「CLOSED」の製品づくりのために「エベレスト」に導入したことで、私たちは洗濯の消費量を正確に把握できるようになりました。レーザー、オゾン、低負荷酸素などの「グリーン」な洗濯技術のみを使用した新しい洗濯に取り組むことができ、最終的に「低負荷」な洗濯ができるようになったのです。

その数週間後、今度は「CANDIANI DENIM」が、革新的な染色システム「KITOTEX」を紹介してくれました。これは、PVAの代わりに、エビの殻から生成される天然ポリマーを使用したものです。この技術により、水、エネルギー、化学薬品の使用量を大幅に削減することができます。

EIMによって測定した環境にやさしい洗濯方法と「KITOTEX」で染めたデニムの両方を組み合わせれば、従来のジーンズに比べてはるかに低負荷のジーンズができると確信しました。そして、さらに重要な点は、節約できた量をキログラム(化学物質)、リットル(水)、Kwh(エネルギー)で示すことができ、その情報を弊社のオフィシャルサイトなどで、顧客に公開することができるようになったのです。こうして、「A BETTER BLUE」が誕生しました。

工場

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「CLOSED」と長年に渡るパートナーシップを結ぶイタリアの老舗デニム工場「CANDIANI DENIM」

筆者も「A BETTER BLUE」のPedal Pusherというネーミングのハイウエストでヒップ周りにゆとりのあるシルエットのジーンズを愛用している。ウォッシュ加工によって、適度に色落ちしたブルーデニムは柔らかく、伸び感があり穿き心地がよいのが特徴。イタリアの熟練の職人の手によってつくられ高品質でありながら、販売価格は149ユーロ(約19,400円)と良心的なのも魅力のひとつだ。

開発だけではない「CLOSED」のサステナビルな活動

「CLOSED」は、オリジナル生地の開発や生産過程だけでなく、消費者のもとへ届くまでの工程すべてにサステナビリティを取り入れている。以下は、その一部である。

*商品の80%以上をヨーロッパ内で製造することによって、輸送距離の短縮や費用を削減している。
*オンラインショップの注文は、100%リサイクル素材でつくられた100%リサイクル可能な箱で発送。
*Re.Ma.Plast社製の生分解されて土に還る有機添加剤「EcoPure」が含まれたバッグに梱包して出荷を行なっている。
*パッケージ化されたブラウスやシャツの襟を支えるために使用されるバタフライストリップには、プラスチックの代わりに紙を使用。
*マガジンやその他の多くの印刷物には、再生紙(Blauer Engel)を使用。

その他にも、売れ残った商品は一切処分することなく、シーズンセール後にはアウトレットにて販売を行い、さらにその後、年2回の工場セールを行なっている。それでも残った商品は、チリの慈善団体に提供し、その収益のすべては貧しい子どもたちのために設立された音楽学校へと寄付している。

どんなにサステナブルな方法でものづくりを行なっても売れ残った在庫を廃棄処分してしまっては本末転倒だ。「CLOSED」は、こういった取り組みを行うことで、アパレルにおける徹底したゼロウェイストを目指しているといえるだろう。

ここまで徹底した取り組みが実現できているのは、40年間積み重ねてきた努力と研究と実績があるからだ。「サステナブル」という言葉が世界的トレンドとなっているいま、パイオニア的立場で長年取り組んできたウーヴェさんは、そのことについてどう感じているのだろうか?

男性の顔

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Q3. 2020年からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響もあり、ビジネス的にも社会全体がサステナブルな方向に動いていると思います。そのことについてどう思いますか?

現在のサステナブルな動きは、この恐ろしいパンデミックがもたらした数少ないポジティブな効果のひとつかもしれません。人々の意識がより持続可能な消費や行動に向けてシフトしているのか、それとも一時的な現象なのかを見極めるのは興味深いことです。

個人的には、過去10~15年における世界的なマクロトレンドは持続可能な側面に牽引されることが多く、長期的な影響があると信じています。今回のパンデミックは、すでに進行していたエコロジーの変化を促すきっかけになっていると考えられます。

Q4. 長年サステナブルに取り組んできた「CLOSED」の今後の戦略や方向性を教えてください。

私たちの信条は "Step by step a little better "です。ある日突然、すべてを変えることはできないし、それでいいと思っていからです。なぜなら、私たちは決して止まることなく、常に改善を求め続けているということだからです。

それは、商品開発やパートナーシップである工場などに限られたことではありません。弊社における全体的なアプローチなのです。例えば、可能な限り再生紙を使用すること、店舗や倉庫、オフィスで再生可能なエネルギーを使用すること、CO2排出量を補うことでクライメイト・ニュートラル(気候中立)になること、スタッフが自転車を購入する際に資金援助することなどです。

最近の新たな活動しては、「Fair Wear Foundation」のメンバーとなりました。この財団は定期的にパートナーである生産工場を監査し、労働環境の状況を顧客に正式に公開する団体です。それ以外にも、オーガニックの繊維製品における国際認証である「GOTS認証」の取得に向けて取り組んでいます。

Q5. 個人でサステナブルなことを頑張ろうと思っている読者へ何かアドバイスがあったらお願いします。

私からの大きなアドバイスは、「たとえ小さな行動であっても、そのすべての行動が重要である」ということだと思います。だから、「自分の小さな行動で世界を変えることはできない」と考えるのはやめましょう。もちろん、変えることはできますし、変えるべきです。まずは、毎日の生活の中で簡単にできる小さなことから始めましょう。

歯を磨くときに水を止めたり、ランチをテイクアウトする際には自分のタッパーを使ったり、できるだけ良質な服を買ったり、そういった簡単にできるサステナブルな活動について友人と話し合ったりしてください。身近な人の理解を得たり、共感を得ることで、新しいアイデアが浮かんだり、より一層やる気が出たりするはずです。

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「CLOSED」のようにドイツを拠点に、ヨーロッパ全土で展開している大手メーカーだからこそ可能な取り組みはたしかにあるだろう。しかし、サステナブルでエシカルなブランドとして成功している一番の理由は「環境にやさしくて上質なもの」を作ろうとする地道な努力と研究の積み重ねの結果だ。

ウーヴェさんの言葉通り、どんなに小さな行動でもその積み重ねによって、自分の身近な世界から変わっていくのではないだろうか?歯を磨くとき、顔を洗うとき、ごみを捨てるとき、コンビニで買い物をするとき、日々の生活の中で、私たちができるエコロジーな行動は無限にあるのだから。

男性と女性

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デニムラインだけでなく、メンズ&レディースともにアパレルラインを展開している


Interpreter : Sayaka Shimahara

※掲載している情報は、2021年5月15日時点のものです。

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