世界の「貧困率」の現状 6人に1人が相対的貧困に直面する日本の実情とは

川岸に立ち並ぶ老朽化した家屋

貧困率とは、国や地域における貧困の度合いを示す指標のこと。日本における相対的貧困率は、約15%とG7の中ではワースト2位。高齢者世帯や一人親世帯を中心に、6人に1人が相対的貧困に直面しているのが現状だ。その原因や解決への対策をまとめた。

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2022.11.09
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貧困率とは

ホームレスの男性とお金を手渡す女性

Photo by Jon Tyson on Unsplash

貧困率とは、国や地域における貧困状態を表す指標のこと。貧困率には、絶対的貧困率と相対的貧困率があり、日本で用いられる貧困率は「相対的貧困率」に当たる。

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相対的貧困率

相対的貧困率とは、生活状況が自分の所属する社会の大多数よりも、相対的に貧しい状態にある人の割合を指す。

OECD(経済協力開発機構)によると、「世帯の所得がその国の等価可処分所得(手取り収入を世帯人数の平方根で割って調整した額)の中央値の半分(貧困線)に満たない人々の割合」と定義されている。

先進国ではこのかたちの貧困が多く、日本にも相対的貧困は存在している。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、2018年の日本における貧困線は127万円、相対的貧困率は15.4%とされている(※1)。つまり日本人口の6人に1人は、相対的貧困ということになる。

絶対的貧困率

絶対的貧困率とは、国や地域における生活レベルとは関係なしに、衣食住といった必要最低限の生活水準が満たされていない人の割合のことを指す。世界銀行が定めた国際貧困ラインでは、「1日1.90米ドル未満で生活する人の割合」と定義されている。

2022年末までに絶対的貧困に当たる人々は、全世界で6億8500万人にのぼると推定されており、そのうちの70%以上がサブサハラ・アフリカ地域に集中しているほか、中東と北アフリカ地域でも上昇傾向にある(※2)。

日本の相対的貧困率はG7中でワースト2位

人口の6人に1人が相対的貧困とされている日本の貧困率は、2012年には16.1%、2015年には15.7%、2018年には15.4%とわずかに改善傾向にある(※1)。

しかしながら、OECDの2021年の相対的貧困率を見ると、日本は先進国のなかでもっとも高く、G7中でもワースト1位であることがわかっている(※3)。

相対的貧困率の高さは、国内における格差の大きさを表す。2000年代中頃から、日本の相対的貧困率はOECD平均値を上回っており、長年にわたり格差が存在する状態が続いている。

高齢者世帯、一人親世帯に多い相対的貧困

日本の相対的貧困は65歳以上の高齢者世帯や単身世帯、一人親世帯が多いことがわかっている。実際に、2021年に生活保護を受けた世帯のうち、55.3%が高齢者世帯、50.8%が単身世帯であった(※4)。とくに高齢になるにつれて、男性より女性の方が貧困率が高くなる傾向にある(※5)。

相対的貧困に当たる人々の手取り所得は、貧困線の127万円を下回る。つまり、月々約10万円で家賃や光熱費、食費などの生活にかかる費用をすべて支払わなければならないため、高齢にともなう病気の治療費や、子どもの進学費を払うことも難しくなる。

2018年の子どもの貧困率(17 歳以下)は13.5%であり、7人に1人の子どもが貧困とされている(※1)。そのため子どもが進学を諦めて就職したり、親が多くの仕事をかけもちしなければならない状況が考えられる。

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日本の貧困の原因

貧困地域の建物

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単身高齢者世帯の増加

近年日本では高齢化が進み、子どもを持たない単身高齢者による一人暮らしが増えている。1980年に男性は約19万人、女性は約69万人であったが、2015年には男性は約192万人、女性は約400万人にも上昇(※6)。2021年には単身高齢者世帯が全世帯の28.8%に及んでいることがわかった。(※7)

家賃や水道代・ガス代など生活にかかるすべての費用を一人で支払わなければならないほか、子どもからの金銭的援助も受けられない。そのため年金だけでは生活が賄えきれない高齢者が多いことが予想される。

実際に、65歳以上の方が受け取る年金の平均受給額は、2016年は厚生年金保険が147,927円、国民年金が55,464円だった。しかし2020年には、厚生年金保険が144,366円、国民年金が56,358円と、減少傾向にある(※8)。

また、2020年における非正規雇用率は、男性は22.2%、女性は54.4%(※9)。非正規雇用の場合、厚生年金への加入率が低くなるため、将来受け取る平均年金受給額は女性の方が少なくなることが予想できる。

自営業の夫と死別して一人になった女性の場合も、基礎年金のみの受給となる。これは高齢者女性が高齢者男性よりも貧困率が高い理由の一つとして考えられる。

一人親世帯の増加

子どもを育てるのにかかる費用を一人で負担しなければならない一人親世帯は、経済的負担が大きい。実際に、一人親家庭の相対的貧困率は50.8%と、2世帯に1世帯が貧困の状況に置かれている(※10)。

一人親世帯の数は、1989年には654,000世帯であったが、2017年には864,000世帯、2019年には720,000世帯なった。近年は若干減少傾向にあるが、貧困率の増加に寄与していると言えるだろう(※11)。

また、母子世帯数は増加しているが、その80%以上が就業しているが、平均年間就労収入は約243万円とされている。

国による相対的貧困への対策

少子高齢化が進んでいる日本では、今後も年金の支給金額は減少していくことが予想される。それにともない国による対策として「退職年齢の引き上げ」や「高齢者の再雇用」といった取り組みが進められている。

現在は、60歳以降も働き続けることで割増しで年金を受給できる「繰り下げ受給制度」があるが、2025年には60歳から65歳への定年の引き上げが義務化される予定だ。また厚生労働省は、労働者の希望があれば最長70歳まで定年を延長するように企業に促している。

また、一人親世帯の貧困への対策しては、年収約360万円未満の世帯への保育料の軽減や、職業訓練期間中の給付金支給などが打ち出されている。

しかし、国や行政だけでは相対的貧困の対策は難しいため、NPO団体やボランティア団体への支援や寄付など、多くの人が貧困解決への行動を起こす必要があるだろう。

目には見えない貧困率を低下させるには

先進国であり、世界全体でみると貧困率は低いように見える日本。しかし、国内の6人に1人(子どもは7人に1人)は相対的貧困に直面しているのが現状だ。

「衣食住が足りていれば、あとは自分の努力で何とかするべき」といった声もあるかもしれない。しかし相対的貧困に置かれている人々は、教育や体験に費やすお金の余裕がないため、現状をすぐに変えることが難しい。

このような貧困の悪循環を断ち切るためにも、国や行政による貧困への対応を待つだけでなく、多くの人が身近にある貧困に気づき、手を差し伸べることが大切だ。

※掲載している情報は、2022年11月9日時点のものです。

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