SDGsの企業行動指針「SDGsコンパス」の内容と5つのステップ

夕景のなか地球儀を抱える人

「SDGsコンパス」とは、企業向けのSDGsの導入指南書だ。この記事では、SDGsコンパスで示されている取り組みの5ステップを解説。各ステップごとに取り組むべきアクションと具体例とあわせて紹介する。企業努力を公に発信することは、結果的にその企業を世界へと導いてくれるだろう。

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2021.03.30
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SDGsコンパスとはなにか

国連加盟国の国旗が並ぶ国連本部

Photo by Mathias P.R. Reding on Unsplash

SDGsコンパス(SDGs Compass)とは「国連グローバル・コンパクト(UNGC)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)の3団体が共同で作成した、企業向けのSDGsの導入指南書」と定義されている。 日本語ではSDGsの企業行動指針と訳される。

貧困や異常気象、差別など世界的に取り組むべき問題を解決すべく、2015年9月に国連サミットで「SDGs」が採択された。そこで、国連に加盟する全193の国が、2030年までにそれぞれの目標達成を目指すことになった。 

目標達成には、国や自治体などの公的機関はもちろんのこと、経済活動や雇用、環境への影響を与える組織である企業の取り組みも欠かせない。そのため、前述の3団体が、2016年3月、企業がSDGsに取り組むための行動の指針を取りまとめた。

それを、「SDGsコンパス」と呼ぶ。30ページのリーフレットは、誰でも無料でダウンロードし閲覧ができる。  

SDGsコンパスの概要と5つのステップ

SDGsコンパスでは、取り組むべき手順として5つのステップを提示している。5ステップとは、下記の通り。

ステップ1)SDGsを理解する 
ステップ2)優先課題を決定する
ステップ3)目標を設定する 
ステップ4)経営へ統合する 
ステップ5)報告とコミュニケーションを行う 

これらステップ内では、2~5は繰り返し行われていくことが望ましく、それによってさまざまな問題を解決へ導いていけると考えられている。

また、SDGsコンパスで世界が共通して抱える問題を解決する企業が取り組みを推進することによって、いままでにはない新しいビジネスモデルが創造され、構築されていくことも期待されている。

5つのステップの内容や注意点、具体例

さまざまな本が蔵書されている図書館の本棚

Photo by Susan Yin on Unsplash

では、それぞれのステップで具体的に何をするのか。そのためにどんなことが必要で、なにを注意すべきかを見ていこう。

ステップ1 知らなければなにもはじまらない

すべきことと注意点
まず、「SDGs」がなにかを正しく知らなければお手上げだ。持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)に掲げられている17項目をいま一度認識し、何が求められているかを理解するのが最初の一歩。 

前述の「SDGs_Conpass_Japanese.pdf」でも、「はじめに、SDGsについて知り、企業活動にとってSDGsがもたらす機会と責任を理解することが大切」と明記している。また、同冊子では「社会が機能しなければ、企業は成功できない。SDGs 達成のための投資は、事業成功の軸の後押しとなる」とも記されている。 

具体例
知ることでなにが起こるのか。たとえば、何十億もの貧困層を救済することで、市場が拡大するだろう。教育の強化により質の高い従業員を育成することも可能だ。ジェンダー格差の解消や、女性の地位が向上することで、成長市場を創造できる。水や肥沃な大地、鉱物などの貴重な資源を地球の許容量に見合ったものに転換することで、企業の生産に必要な天然資源を持続的に確保できるメリットもある。

SDGsの有効な実施によって期待できる効果は決して小さくない。 個人でも資料となる書籍やネット上の動画などで知識を得ることは意外に簡単だ。また、セミナーなどに参加することでより知識を深められるだろう。

ステップ2 企業活動がSDGsのどれに関わるかを判別する

すべきことと注意点
SDGs17の目標を知ると、まず最初にわかるのは、あまりに広範囲で単体の企業や1つの団体ですべてをカバーすることは難しいことだ。自らが所属する組織は、それら目標のなかで、どれにより深くかかわっているかを判別し、優先すべき課題は何かを決定することが不可避となる。 

自社のビジネスがなににどう貢献できるかについては、SDGs17の目標をもとに、169のターゲットに細分化した「SDGsに関するビジネス・レポーティング:ゴールとターゲットの分析」を参照するといいだろう。

具体例
まずは、”バリューチェーンのマッピング”により可視化することが大切になるだろう。
たとえば、原材料の調達→サプライヤー→物資が調達→製造→販売→最終的には廃棄という流れがあるとする。可視化すると、この一連で自社はどのSDGsの課題に正の影響と、負の影響を与えている可能性を特定がしやすくなる。

ただし、精度の高いマッピングをつくるためにはデータの収集が必要だ。蓄積されたデータをもとに、主なステークホルダーからの要望も踏まえ、より具体的に優先課題を絞り込むことができるためだ。

ステップ3 優先すべき課題から目標を設定

すべきことと注意点
ステップ2で導き出された優先課題から、目標範囲を設定し、KPI(主要業績評価指標)を選択する段階に入る。一般的に、優先課題は目標は経済・環境・社会の3つにかかわる“トリプルボトムライン”を網羅したものがよいとされる。KPIのみを考慮した「絶対目標」と企業成長を考慮した「相対目標」がある。企業は目標のタイプもここで決定し、進捗状況をモニタリングし続ける必要がある。 

具体例
各目標において、特定の時点や特定の期間といった、ベースラインを設定することが大事だ。たとえば、女性従業員数を来年度までに40%増加させるといったものがそれにたる。

目標達成のためには、意欲度の設定も必要となるだろう。意欲的な目標を決定することで宣伝効果や、業界のリー ディング企業が同業者に働きかける効果が期待できるためだ。
ただし、目標を公表した後、達成できなかった場合のリスクも考慮したい。

KPIの設定には「SMART」が役立つ。ちなみに、「SMART」とは、Specific(明確)、Measurable(測定可能)、Attainable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-boneded(時限的)の頭文字を取ったもの。

株式会社フジクラの例を見てみよう。同社では、「サプライチェーンSDGsマッピング分析」を一覧表にした。正と負の影響の強化(最小化)や目標に対する活動内容などを見える化され、意識を共有化するのにも役立つ。

ステップ4 経営層だからできる取り組みに着手する

すべきことと問題点
組織に属する一人ひとりが、目標を意識し日々、実践することで達成されるのは間違いない。だが、達成の可否を決めるのは経営陣の取り組み方によるところは大きい。いくら高邁な目標を掲げても、上層部が理解を示さなければ達成には至らない。

 具体例
経営層にできることはどんなことがあるか。まず、SDGsを企業風土化していく。それによって、決めた目標を広く定着させることもできる。つまり、目標達成に直接的に関わるのは研究開発やサプライチェーンの部門であっても、人事やマネジメントの関心や関与が低くては、継続的に目標達成へ向かっていくことは難しい。SDGsな経営に即した人事制度の構築を、同時に行っていくこともの経営層だからできることだ。

取り組みを進めるうちに、組織内だけで打開できない部分も見えてくる。マネジメントクラスは、自社の目標にあわせて、パートナーシップを結べる企業や行政、団体などを積極的に模索し、関係を築くこともあわせて行うべきだろう。

ステップ5 ステークホルダーへの情報開示

すべきことと問題点
最終ステップとして、目標達成に向けて実施する内容は、利害関係が生じるステークホルダーへ知らせなければならない。近年、企業に対してステークホルダーが情報開示を求める機運が高まっており、それはSDGsへの取り組みに関しても同じことが言える。

具体例
・SDGsへの取り組みを報告する方法と時期(頻度)を決める。
・報告に向けたスケジュールを組み、担当部門・担当者を決めて実行する。
 
SDGsを企業報告に取り入れるために、「SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド(日本語翻訳版)」も補完的な資料として積極的に利用したい。 

SDGsコンパスのリーフレットでは、最後の方に「SDGsはいわば、報告における共通言語である」と記されている。

SDGsコンパスの達成度について、企業がさまざまに努力し、それを公に発信することは、結果的にその企業を世界へと導いてくれる強い力になるだろう。

※ 参考サイト
SDGs_Conpass_Japanese.pdf
https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf
SDGsに関するビジネス・レポーティング:ゴールとターゲットの分析
https://www.ungcjn.org/sdgs/files/elements_file_target.pdf
SDGsを企業報告に統合するための実践ガイド(日本語翻訳版)
https://www.ungcjn.org/sdgs/files/elements_file_guid.pdf

※掲載している情報は、2021年3月30日時点のものです。

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