ネットやSNSに慣れ親しむ世代を中心に、問題視されるエコーチェンバー現象。ときに過激な行動へと走らせてしまう裏には、いったいどのような仕組み・理由があるのだろうか? エコーチェンバー現象の意味や実際に起きたトラブル事例、対策方法を解説する。
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エコーチェンバー現象が知られるきっかけになったのは、ハーバード大学教授のキャス・サンスティーン氏が2001年に刊行した著書「『インターネットは民主主義の敵か』である。
教授はSNSが普及する前からエコーチェンバー現象のリスクについて提言していたが、それがさらに広く浸透するまでには、10年以上の歳月が必要であった。(※)
エコーチェンバー現象が世界的にも注目されるきっかけになったのは、2016年のアメリカ合衆国大統領選挙である。
インターネット上に大統領候補に関する政治的な思想・個人的な意見が混ざり合ってあふれた結果、選挙結果にまで強い影響を及ぼしたと言われている。エコーチェンバー現象は、一国の未来をも左右しかねないのだ。
このほかにも世界には、エコーチェンバー現象が関連する恐ろしい事例が存在する。以下はその実例である。
2021年に発生した、アメリカ大統領選挙結果確認中のデモ隊による乱入事件は、私たちの記憶にも新しい。デモ隊が乱入するきっかけになったのは、ネット上で拡散された「Qアノン」と呼ばれる陰謀論であったとされる。
確たる証拠がないにもかかわらず、陰謀論を正義と思い込んだ人々により事件が発生。合計5名(2021年1月9日現在)が亡くなるという、未曽有の事態が引き起こされた。
2018年には、メキシコとインドの2か国で、エコーチェンバー現象による殺人事件が発生している。
事件のきっかけとなったのは、「子どもを誘拐した犯人がいる」という、メッセージアプリ上で拡散されたデマであった。このデマを信じた多くの人々が、現地に集合。無関係の人々を襲撃し死に追いやった。
どの事例も、「自分の意見のみが正しい」と思い込んだ結果に引き起こされた重大事件である。エコーチェンバー現象が私たちに与えるリスクは、決して小さくはない。
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今後さらに広まっていくインターネット社会のなか、エコーチェンバー現象がはらむ問題に対して、どう対処していくのかは、私たちにとって非常に大きな課題となる。
閲覧者側・運営側に求められる、具体的な対策について見ていこう。
閲覧者側ができる対策としては、「自分自身で意図して幅広い情報に触れる」というものが挙げられる。
狭い世界で偏った意見のみに触れることで起きるエコーチェンバー現象。その性質を知った上で、そうした現象を起こさせないための環境を、自分自身でつくり上げるというわけだ。
具体的には、以下のような行動が挙げられるだろう。
・SNS上で、あえて反対意見に目を向けてみる
・閉鎖的な環境からは、自ら距離を置く
・エコーチェンバー現象の存在を、常に認識する
・ブラウザの設定を変更し、検索履歴が残らないようにする
エコーチェンバー現象の存在を知り、「誰もが巻き込まれる可能性がある現象」と心得た上で、自身の考えを俯瞰的に見つめる努力が必要と言えるだろう。
運営側にとっては、エコーチェンバー現象が起きやすい場を閉鎖する、より開かれた場所を提供するといった対策が求められる。
ただし残念ながら今のところ、十分な対策が施されているとはいいがたい。インターネットに関わる事業者にとって、非常に大きな今後の課題と言えるだろう。
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