歩行者の安全に配慮した交通システム「トランジットモール」 成功事例から知るメリットと導入のメリット

交差点を歩く人々

「トランジットモール」とは、自動車の乗り入れを制限し、歩行者と路面電車などの公共交通機関のみが通行できる交通システムのこと。一般車両を排除することで、歩行者が安心できる道路環境をつくり出す。自動車に依存したまちづくりを脱する方策のひとつとして関心が高まっている。

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2021.01.31
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

トランジットモールとは、都市の空洞化を改善する仕組み

停車中の路面電車

Photo by Luke White on Unsplash

「トランジットモール」とは自動車の通行を制限し、歩行者と公共交通機関のみが通行できるように整備された街路のこと。

中心市街地やメインストリートなどの商店街を、バスや路面電車(LRT)などの公共交通(=トランジット)だけを通行させて歩行空間(=モール)とする、歩行者の安全に配慮した交通システムである。

トランジットモールは、公共交通サービスの向上、道路交通環境の改善、地域の活性化を目的としており、現在の都市が抱える課題に対する解決策の一つとして考えられている。アメリカ・ミネアポリスやオランダ・アムステルダムなど、欧米の都市では広く実施されている。

トランジットモールのメリットとデメリット

トランジットモールを導入することのメリットとして、市街地間のアクセス向上に伴う公共交通の利用促進や、輸送の効率化による環境負荷の軽減効果、中心市街地の活性化(にぎわいの創出)などが挙げられる。また歩行者の安全性が向上し、買い物がしやすい空間の確保も容易となる。

一方で、大規模な交通ネットワークの整備を要する点や、車両通行の抑制による周辺道路の交通渋滞などを懸念する声なども上がっている。バスや路面電車と歩行者との事故リスクもデメリットの一つだろう。

トランジットモールに適した場所

それでは、どのような場所がトランジットモール化するのに適しているのだろうか。

世界でトランジットモールが導入されている地域を例に見てみよう。アメリカ・ポートランドやフランス・リヨンなど、人口規模が一定以上あり、その地域の中心的な都市が適していると考えられる。

また、中心市街地のほか、駅前やバスターミナル前などの交通ターミナルを核とする商店街に導入されることが多い。

一方、自動車によるアクセスを制限するため、利便性の低い立地は適していないと言える。

トランジットモールの整備内容

都市を走る道路

Photo by Kevin Bosc on Unsplash

各地域で導入されているトランジットモール は、どのような流れを経て施工されているのだろうか。

整備の流れ

トランジットモールは道路管理者または交通管理者、軌道事業者などが指揮を執り、実施計画策定から社会実験などを経て、関係者間や地域住民(地元商店街)の合意形成をもとに実施される。まちづくりの一環として、地方自治体などが中心となって取り組みが進められることが一般的だ。

欧米諸都市ではLRTを建設してのトランジットモール化が盛んである。この理由は、「上下分離方式」によって、軌道部分を社会資本として国や自治体が出資しているためだ。

一方、上下分離方式が少ない日本ではバスによるトランジットモール事例が多いが、国土交通省はトランジットモールを導入・普及させるため、社会実験やLRT導入支援策の拡充を進めている。

整備までの期間や費用

群馬県前橋市では、2002年に約3年の検討や実験期間を経て、バスを用いたトランジットモールが導入された。社会実験の回数や本格導入までの期間などは、地域によってさまざまである。また、バスではなくLRTを実現するには、1kmあたり約15億円が必要だとされている(※1)。

日本国内でのトランジットモール成功例

停留所で乗降待ちのバス

Photo by Phuoc Anh Dang on Unsplash

石川・金沢市(2000年)

金沢市では、2000年に全長330mの横安江町商店街(現在は名称を「金澤表参道」に変更し再整備された)をトランジットモールとして展開。コミュニティバス「金沢ふらっとバス」が、毎日朝8時から夕方6時まで行き交っている。

路線バスが通らないルートを走行することで、観光客だけでなく、地域住民にとっても商店街や公共施設を循環する足となっている。また、金沢では1960年頃まで路面電車が走っていたこともあり、LRTの導入も検討しているという(※1)。

沖縄・那覇市(2007年)

沖縄本島の中心市街地である国際通りでは、12回の社会実験を経て、2007年よりトランジットモールが本格導入されている。

毎週日曜日の12時から18時の間、一般車両の通行を禁止し、歩行者とトランジットバス・ベロタクシーのみに開放。通りにパフォーマンスエリアやオープンカフェを設け、にぎわいの創出や地域環境の改善を図っている。

トランジットモール本格導入後、休日の歩行者量が増加しているという結果が出ている(※2)。

地域活性化にもつながるトランジットモール

トランジットモールは、もともと郊外に建設された巨大ショッピングモール、などが原因で過疎化した中心部に、再びにぎわいをもたらす施策として生まれたものだ。

しかし、自動車に依存したまちづくりを転換するには、道路や交通機関の整備だけでなく、安全な暮らしをつくり上げようという住民の意識や理解も重要であることを忘れてはならない。

※1Ⅰグループ研究活動報告書|金沢市まちづくり市民研究機構
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/data/open/cnt/3/12482/1/1I.pdf?20081205150151
※2 くらしのみちゾーン・トランジットモール|歩行者・自転車優先のみちづくりホームページ
https://www.mlit.go.jp/road/road/yusen/chiku_gaiyo/42/index.html

※掲載している情報は、2021年1月31日時点のものです。

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