リサイクル素材から生まれるタイムレスな家具「JOHANENLIES」

扉があいている棚一部

工事現場の産業廃棄物や余った大理石といった廃材が、デザイン性の高いアップサイクル家具に変身。「JOHANENLIES(ヨハンエンリース)」は、一切の在庫を持たない100%受注発注によるハンドメイドのブランドだ。

宮沢香奈(Kana Miyazawa)

フリーランスライター/コラムニスト/PR

長野県生まれ。文化服装学院卒業。 セレクトショップのプレス、ブランドディレクターを経たのち、フリーランスでPR事業をスタートし、ファッションと音楽の二本を柱に独自のスタイルで実績を積…

2020.12.18
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リサイクルに代わり、メインストリームとなってきたアップサイクルの家具

ここ数年、「アップサイクル」という言葉はファッションやインテリアの分野で多く耳にするようになった。

中古品をそのまま再利用するリサイクルとは違って、不要品を別のものにつくり変えてしまうのがアップサイクルの特徴だ。最近はその概念も浸透し、洗練されたデザインのブランドが増えてきているようにも思える。

アップサイクル家具とは思えない美しさとモダンさを兼ね揃えた「JOHANENLIES」

木製の机の一部

ベルリン生まれのアップサイクル家具ブランド「JOHANENLIES(ヨハンエンリース)」も、いまの時代を象徴するかのようなモダンで洗練されたデザインが特徴的だ。

展開している家具は無駄を削ぎ落としたミニマルなデザインで、シンプルなスチールの骨組みにブルー、赤、ピンク、イエローといった美しい配色が施されている。仕上がりは新品同様で、アップサイクル家具とは思えないほどだ。

「JOHANENLIES」は、2014年にマイク・ラーイマーカースさんとココ・プランジさん夫婦によって設立された。ブランド名は、ふたりの息子であるヨハンと娘のリースの名前を、オランダ語で「and」の意味を持つ「EN」で繋げたという微笑ましいエピソードがある。

カラフルなツボと廃材でできた台

歴史的建築の美術館「Direktorenhaus(ディレクトレンハウス)」のなかにショールームを構えているのもユニークだ。「Direktorenhaus」は、シュプレー川が一望できるフレンチデザインのバルコニーや、エレガントな螺旋階段が美しいと評判の美術館。コンテンポラリーなハンドクラフトアートや建築をメインに扱っている。

とくに注目したいのが、その展示方法。家具単体で展示するのではなく、例えばサイドテーブルやシェルフの上には陶磁器やガラス工芸などの作品が置かれている。什器の役割と同時にデザインも楽しめるようになっているのだ。

リサイクル素材に特化する「JOHANENLIES」の材料選びと仕入れとは

「ベルリンでは至るところでビルの解体工事や建設工事を行っていて、歩いていればすぐに目に入るほどです。私たちはそういったところから不要になった木材を格安で仕入れてストックしています。

ストックしていた木材を新品同様に美しく仕上げるには、かなり多くの作業工程を経ています。職人の手によって、滑らかになるまで何度も削っては磨く。そんな大変な作業を繰り返して見ただけではアップサイクル家具だとわからない仕上がりにしています。」(マイク・ラーイマーカースさん)

金色のツボと大理石の展示台

手前左にあるウッドのサイドテーブルは、もとは床材だった。天板をひっくり返すとギザギザの荒削りの様子が残っている

そう語るマイクさんは、「JOHANENLIES」を立ち上げる前はワイン会社に勤務していたという意外な経歴の持ち主だ。アップサイクル家具ブランドを立ち上げた決意をしたのは、ある日、自分でベッドをつくっているときに家具づくりの楽しさを覚えたからだという。

週末も忙しく家族で過ごす時間がなかなか取れなくて悩んでいたことも理由の一つだった。仕事を続けながら「第二の人生」を考えはじめ、ついには「とにかくやってみよう!」とチャレンジの道を選択した。

最初はワイン会社とかけ持ちで仕事をしながら続け、しばらくして独立。ブランド立ち上げから6年経ったいま、ようやく軌道に乗り出したところだという。

二人の人物。Coco Prange und Mike Raaijmakers

Photo by Patrice Brylla

デザインのアドバイスは主にココさんが担当している。以前はファッションPRの会社で働いており、もともとデザインや創作に興味があったという。現在はファッションの仕事で得たデザインの知識を活かしながら仕事をしている。

「私たちのデザインは、ミニマルでずっと使える飽きのこないデザイン。これが私たちの基本的なスタンスです。家具はタイムレスであるべきだと思っています。単にリサイクル素材を使っているだけでなく、状態がよく質の高い素材を選び、丈夫で長持ちするように加工し、何年も使える家具に仕上げることもサステナビリティーの一環だと思っています。

誰にでも使ってもらえるように、高級になりすぎないような値段にしています」(ココ・プランジさん)

在庫を持たない完全受注スタイルで無駄をなくす

大理石は、通常キッチンのカウンターやシンク、テーブルといった面積の大きなものに使われることが多い。「JOHANENELIES」では、裁断した大理石の余りを使って小さな家具をつくっている。

本来であれば捨ててしまう素材を再利用することで、大理石のような高級天然石でも、手の届く価格設定が可能となるのだ。

変わったデザインのツボと黒い大理石でできた展示台

上図の手前右にあるブラックのサイドテーブルは、余りの大理石からつくられている。天然石が生み出すマーブル模様の一部がゴールドのラインとなって、デザインにアクセントを加えている。ココさんお気に入りの作品の一つだ。

「JOHANENLIES」のユニークな点はもうひとつある。実店舗を持たず、一切の在庫も持っていない完全な受注発注のスタイルを徹底している点だ。そうすることで、お客さんの希望通りに一からデザインすることも、ショールームにあるサンプルから自由自在にカスタマイズすることも可能になる。

リサイクルオークを使用したシェルフは、サイズ、色、引き出しの位置や数など、自由自在にアレンジができる人気プロダクトの一つだ。

木と金属できできたシンプルでミニマルな棚

傷だらけの産業廃棄物が美しい家具へと生まれ変わるだけでなく、自分の希望通りのオリジナルデザインをオーダーできることによって、一生の宝物となる。それが、「JOHANENLIES」を選ぶ最大のメリットである。

リサイクル素材は古くて使用感があって当然といったこれまでの考えは覆され、「新品に見えるモダンなアップサイクル」が今後に主流になっていくことだろう。誰だって新しくて美しいものを格安で手に入れたいのだ。

※掲載している情報は、2020年12月18日時点のものです。

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