日本の農業を支える「フードバリューチェーン」 推進の目的とグローバル展開の実例とは

青空の下に広大な農園が広がり、その左側を赤いトラクターが走っている。

近年衰退の一途をたどる日本の農業。その未来を支えるには「フードバリューチェーン」によるアプローチが必要だ。この記事ではフードバリューチェーンの目的や戦略について説明し、今後取り組むべき課題についても深堀りする。

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2021.02.09
SOCIETY
学び

エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

フードバリューチェーンとは

青空の下に広大な農園が広がり、その左側を赤いトラクターが走っている。

Photo by James Baltz on Unsplash

「フードバリューチェーン」とは、農産物が消費者に届くまでのつながり(チェーン)のなかで、それに携わる人や企業が手を取り合い、付加価値(バリュー)の高いものを生み出そうというシステムのことである。

途上国では、農産物が高く売れず、農家の貧困問題が深刻となっている。その解決策としてJICA(国際協力機構)が推進しているシステムが「フードバリューチェーン」だ。

農家がつくった農産物が消費者の食卓に上るまで、種・肥料・農機を供給する会社、食品を加工するメーカー、商品を運ぶ輸送業者、販売に携わる会社など、多くの人や企業が関わっている。

これにより、消費者は食物を得ることができるのだが、その反面、加工費・輸送費・ブランド価格など、さまざまな費用が発生してしまう。

フードバリューチェーンは、これら各段階に関わる人や企業が連携し、コストを削減しながら価値の高いものを生み出すことを目的としている。

グローバル・フードバリューチェーン戦略

日除けの帽子をかぶった子どもや大人9人が、広い農地で稲を収穫している。

Photo by Ny Menghor on Unsplash

現在日本では、高齢化と後継者不足により、農業の衰退が深刻化している。この現状を改善するには、国内で生産した農産物を輸出したり、途上国に進出して現地で生産するなどの海外展開が必要となる。

そこで2014年6月に農林水産省が策定したのが「グローバル・フードバリューチェーン戦略(GFVC戦略)」である。

これは、日本が誇る食文化や情報通信技術・流通技術をフードバリューチェーンに生かし、海外市場を開拓しようというものである。それと同時に、途上国の経済成長と農村の所得向上も見込めるので、ウィンウィンな枠組みとも言える。

基本戦略と地域別戦略

グローバル・フードバリューチェーン戦略には、「基本戦略」と「地域別戦略」のふたつがある。

基本戦略

「基本戦略」は、日本の強みを「ジャパンブランド」として海外に展開し、食のインフラシステムの輸出を推進することなどが目的である。具体的には以下の10項目を掲げている(※1)。

・産学官連携による戦略的対応
・我が国と相手国の産学官連携の枠組の構築
・経済協力の戦略的活用
・コールドチェーン等の食のインフラ整備
・ビジネス投資環境の整備
・情報収集体制の強化
・人材の育成
・技術開発の推進
・資金調達の円滑化
・関係府省・機関の連携強化と推進体制の整備等

地域別戦略

「地域別戦略」は、海外の日本企業と連携しながら、日本産食品の輸出促進を進めるのが目的だ。対象となる相手国は以下の通りである(※2)。

・ASEAN(東南アジア諸国連合)
・中国
・インド
・中東
・中南米
・アフリカ
・ロシア・中央アジア等

GFVC推進官民協議会の発足

グローバル・フードバリューチェーン戦略に基づき、農林水産省は2014年6月に「グローバル・フードバリューチェーン推進官民協議会(GFVC推進官民協議会)」を設置した。

これは、産学官が連携してフードバリューチェーンを構築し、民間企業の海外展開を支援するものである。

設立当初は77社・団体であったメンバー数も、2020年6月現在では、550を超える民間企業・関係機関等が参画している(※3)。

GFVC戦略の取り組み事例

グローバル・フードバリューチェーン戦略により、日本はこれまでにさまざまな取り組みを行ってきた。たとえば、冷涼な気候に適応した稲の新品種を開発し、それをベトナム北部のゲアン省に導入。栽培面積を年々拡大している。

また、ハノイのベトナム国立農業大学においては、日系企業のスタッフが講師となり、フードバリュー チェーンに係る寄付講座を実施。高度人材の育成も行っている。

日本の農業の現状と課題

まるまると実ったトマト

Photo by Max on Unsplash

国によるさまざまな対策が進んではいるものの、依然日本の農業は衰退化をつづけている。これに伴い、食料自給率の低下や耕作放棄地の増加といった、数々の問題も発生している。

今後これらを改善させるには、農家や民間企業がフードバリューチェーンのシステムに積極的に参加することが求められる。また、国民一人ひとりが他人事ではなく、自国の問題として現状を把握するのも必要と言えよう。

※1 グローバル・フードバリューチェーン戦略(3ページ目〜6ページ目)
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/pdf/senryaku_3.pdf
※2 グローバル・フードバリューチェーン戦略(8ページ目〜13ページ目)
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/pdf/senryaku_3.pdf
※3 グローバル・フードバリューチェーン(GFVC)推進官民協議会|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/about.html

※掲載している情報は、2021年2月9日時点のものです。

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