持続可能なフードシステムを目指す「食料安全保障」とは? 食料問題の現状と日本の取り組みを知る

単一作物を育成している農場

「食料安全保障」とは、すべての人が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できる状態を達成している状況のことである。食料安全保障は、日本や世界の食料問題を解決するために、大切な役割を担っている。食料安全保障の役割や課題、日本の取り組みなどについて解説する。

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2021.02.15
SOCIETY
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食料安全保障とは

刈り上げた作物を引いて農場を走る青色のトラクター

Photo by Gozha Net on Unsplash

「食料安全保障(Food Security)」とは、すべての人が、将来にわたって良質な食料を合理的な価格で入手できる状態を達成している状況のことである。

国際連合食糧農業機関(FAO)では、食料安全保障を「全ての人が、常に活動的・健康的生活を営むために必要となる、必要十分で安全で栄養価に富む食料を得ることができるとき、食料安全保障が実現しているといえる」と定義している(※1)。

食料安全保障という言葉は、1970年代に世界的な食料危機の中で使われはじめ、1980年代に入ると、日本主導のもとFAOを中心に議論が進んだ。前述のFAOのほか、SDGs(持続可能な開発目標)でも2番目のターゲットとして「飢餓をゼロに」を掲げており、飢餓をなくすために各国が協力し、世界規模での取り組みが行われている。

世界の食料問題の現状

食料安全保障が取り決められた背景にあるのは、深刻な食料問題だ。

国連機関、政府、NGOらが共同で発行した「食料危機に関する年次グローバル報告書」によると、2019年末の時点、55の国と地域で1億3,500万人の人々が急性の食料不安を経験している。急性の食料不安とは、じゅうぶんな食料を確保できず、生活や生計が差し迫った危険にさらされる状況を指す。

さらに同地域では、2019年に1,700万人の子どもが急性栄養不足による消耗症、7,500万人の子どもが慢性的な栄養不足のために発育阻害に陥っていたことがわかったという。これは、IPC(総合的食料安全保障レベル分類)のフェーズ3に該当し、2017年の報告書発行以来もっとも高いレベルだ(※2)。

また、ユニセフ(国連児童基金)が公表した「世界の食料安全保障と栄養の現状」では、2018年時点で8億2,000万人がじゅうぶんな食料を得られていないとも示している(※3)。

低自給率で推移する日本の食料問題

稲の収穫時期の田園風景

Photo by Chris De Wit on Unsplash

日本に目を向けてみると、2019年度の食料自給率は38%(カロリーベースによる試算)となり、過去最低を記録した2018年度から1ポイント増加(※4)。しかし残りの62%は輸入に頼っていることになり、主要先進国のなかでも最低水準の数値だ。

国内で消費する食料を輸入で賄っている一方、大量の食品ロスが発生しているのも問題だ。日本では毎年、東京ドーム5杯分に相当する612万tを廃棄している。国民一人あたりに換算すると、毎日茶碗一杯分の食料を捨てていることになる(※5)。

さらに食品ロスによって排出される温室効果ガスは、全排出量の約8%を占めるという(※6)。地球温暖化が一因となり、世界各地で気温の上昇や干ばつ、洪水などの異常気象が多発している。作物の生育環境が壊されてもっとも困るのは、食料不足に苦しむ開発途上国の人々だろう。また輸入元が不作に陥れば、食料自給率が低い日本も影響を受けるだろう。

日本では1999年に、生産以外の方法で農業や農村の価値を高めることや、食料自給率を向上させることなどを目的として、「食料・農業・農村基本法」を制定している(※7)。

同法では、不測時における食料安全保障に関する規定を設けており、凶作や輸入の途絶などの不測の事態が生じた場合には、国が必要な施策を講ずることを明記している。

具体的な取り組み事例

アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)

日本の国際協力機構(JICA)と、アフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)が中心に提唱し、2008年に発足した。

稲作の改良や人材育成を進めることで、サブサハラ・アフリカ地域の米の年間生産量を、2018年までに1,400万トンから2,800万トンへ倍増させることを目指し、2018年に達成した。

2019年からは、2030年までにさらなる米生産量の倍増(2,800万トンから5,600万トン)を目指す、CARDフェーズ2が発足している(※10)。

食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)

JICAと「アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)」が中心となり、2016年に行われた第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)で発足した。

IFNAの運営委員会を構成する国際機関などと連携し、2025年までの10年間で、アフリカの国々における栄養改善戦略の策定や、既存の分野の垣根を越えた栄養改善実施活動の促進などに取り組む。

食料安全保障の課題と展望

かごに入った人参、唐辛子、二種類のウリ科の野菜

Photo by Megan Thomas on Unsplash

食料安全保障は、日本の場合、食料安全保障が国民に認知されておらず、取り組みの具体性にも乏しいという課題もある。また世界に目を向けると、先進国を中心とした食品ロスの軽減できれば、貧困国の食料難を解消できるが、食品ロスの改善は進んでいない。

食料の大半を輸入に頼る日本だけでなく、食料問題で苦しむ開発途上国の飢餓を解決するためにも、世界全体で食料安全保障の重要さは増している。

人類全体の食料問題を解決することが食料安全保障の役割だが、その重要さはあまり知られていない。まずは、世界の食料問題を解決するための取り組みを知ることが大切だ。

※1 私たちの目的・使命| FAO駐日連絡事務所
http://www.fao.org/japan/about-fao/our-purposemission/jp/
※2 「食料危機に関するグローバル報告書」が食料危機の規模を提示 新型コロナウイルス感染症による脆弱な国々への新たなリスクも|FAO駐日連絡事務所
http://www.fao.org/japan/news/detail/en/c/1272208/
※3 The State of Food Security and Nutrition in the World 2019|unicef
https://data.unicef.org/resources/sofi-2019/
※4 令和元年度食料自給率について|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/attach/pdf/012-16.pdf
※5 食品ロスの現状を知る|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
※6食料ロス・廃棄の削減、食料安全保障と環境持続可能性の向上に不可欠| FAO駐日連絡事務所
http://www.fao.org/japan/news/detail/jp/c/1310810/

※7 食料の安定供給と食料自給率について|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/bukai/18/pdf/h160916_18_01_siryo.pdf
※8 アフリカ・サブサハラで「コメ生産量10年間で倍増」の目標達成へ|JICA
https://www.jica.go.jp/topics/2018/20180928_01.html

※掲載している情報は、2021年2月15日時点のものです。

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