インシュアテックとはなを指す言葉なのか? 近年、注目されているインシュアテックがいつごろ、なぜ生まれたのか。いま、どんな状況にあるのか、さらに今後はどうなっていくのかについても、平易な言葉でできるだけわかりやすく記述していく。
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インシュアテック(InsurTech)とは、保険という英単語「Insurance」とテクノロジー(Technology)が語源の造語。もはやビジネスとテクノロジーは不可分で、イノベーションが保険業にも強く求められている。
常識や既存の価値観をある意味で破壊するようなインパクトを持つインシュアテックは、しばしば保険業界の“破壊的イノベーション”と受け取られる。なぜ、破壊的なイノベーションなのかというと、新しい保険商品を独自に開発できるためだ。
個人向けのインシュアテックには、大きく分けて二つある。一つは「MGA型」(Managing General Agent)で、保険代理店よりも幅広い業務を担うイメージ。もう一つは「フルスタック型」と呼ばれ、保険免許を有し、自社開発の保険商品を販売できる。後者は、既存の保険会社にとって脅威になりうるというわけだ。
日本でインシュアテックが注目されはじめたのは、2015年前後だろう。とくに、2017年5月に経済産業省が発表した「FinTechビジョン」(※1)はひとつのポイントとなる。
そこで、“保険分野における「FinTech」は、「InsurTech(インシュアテック)」と呼ばれている”と記述されてから、ますます脚光を浴びるようになった(FinTechは、ファイナンスとテクノロジーを合わせた言葉)。
インシュアテックを正しく知るには、まずフィンテックの重要性を認識する必要があるだろう。
金融を変えるとも言われているフィンテック。生活に身近なキャッシュレス決済から、仮想通貨やクラウドファンディングなど、聞き覚えのある言葉がさまざまに含まれている。
先述のように、2017年から経済産業省が本腰を入れるなど、国内でもフィンテックの重要性について認識が共有されている。保険もまた金融商品の一つであるため、インシュアテックもフィンテックの浸透とあわせて広がることに違和感はないだろう。
矢野経済研究所が発表した2020年3月のプレスリリースによると「2019年度の国内InsurTech市場規模は前年度比125%」で、890億円規模になると見込んでいる(※2)。
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インシュアテック最大のメリットは、時短。つまり、手続きの簡易さや手軽さだろう。
既存の損害保険に加入するには、必要書類を集め、記述し、提出するというわずらわしさが伴った。加入までの時間もかかっていた。
また保険金の支払いに関しては、専門家の査定などが必要で、証明書の提出などが求められた。そのため、結果的に入金までに時間も労力もかかってしまうのでストレスフルだった。 だが、インシュアテックはITを用いることで、きめ細やかなサービスを提供できる。
その好例が、自動車保険の一種「テレマティクス保険」だろう。スマホアプリなどから得られた走行距離や運転情報などからリスクを査定。安全運転するドライバーは、保険料が割り引かれるメリットを受けられる仕組みだ(※3)。
契約者にとってメリットばかりに思える、インシュアテック。デメリットはないのだろうか。
たとえば、スマートフォンのアプリなどを利用した、健康増進型保険もインシュアテックの得意分野。既存の保険にも、健康診断の結果や健康状態で保険料の割引などを行っていたが、インシュアテックでは加入後もそれが可能になるところが大きな違いだろう。
健康状態が良好であれば恩恵を受けられる一方で、既往症があったり、運動が苦手で食生活にさほど気を配らない人は、同年齢の人たちより保険料が割高になるケースも起こりうる。
また、加入後もITを用いて健康情報が更新されていくため、病気やけがなどで体調を崩してしまうと、保険料が高くなってしまうリスクもはらんでいる。
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「Lemonade」(アメリカ)
2015年に創業。P2P(ピア・トゥ・ピア)を用いた家財保険サービスを提供。インシュアテックの有名企業の一つだろう。スマートフォンで撮影した写真と住所、家のタイプ(持ち家、借家、戸建て)などの情報をチャットボットで送るだけで、保険に加入できる。
*P2Pについての詳細は、後述。
「オスカー・ヘルス・インシュアランス」(アメリカ)
医療保険のオンライン販売を行っている。Googleなどが出資する安定性も評価につながっているだろう。ワクチンや検査の提供、フィットネス状況に応じた奨励金など、契約者の健康維持に積極的に関わり、医療費全体を下げることを目的としている。
「SmartDrive」
テレマティクス保険を扱っている会社。走行データに基づく自動車保険を販売し、大手のAXA保険と連携もしている。独自の「SmartDriveデバイス」を車に設置することで、安全運転するドライバーにポイントを付与したり、高齢者の運転の見守りなどを行うサービスが提供可能になった。
「justInCase」のP2P保険
インシュアテックのスタートアップが、「わりかん がん保険」の名で2020年より提供を始めた。そもそもP2P保険とは、個人間でグループを作って保険料を大幅に引き下げる保険で、インシュアテックでも革新的とされるサービス。2010年ごろにドイツで生まれたとされる。
資金調達が鍵で、中国のアリババが提供するP2P保険は加入人数1億人を突破した一方で、資金の見通しが立たず苦境に立たされるケースも少なくないという。
投資がベンチャーから大手へと移りつつあると先に述べたが、同時に、2019年以降は外資系生命保険が徐々に健康増進型の保険を導入しているという。
一方で、疾病管理プログラムにおいても、国内の一部生命保険会社がベンチャー企業のスマホアプリとコラボするなど、新しい取り組みが見られるようになっているそうだ。
矢野経済研究所によると、国内インシュアテック市場規模はさらに伸び2022年には、2450億に達するのではないかと見ている。
資金繰りの不安定さを払しょくし、革新的なサービスを開発するスタートアップが今後新たに生まれる可能性は小さくないだろう。
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックなど、世界情勢が刻一刻と変化するいま、インシュアテックの行く先を注視していきたい。
※1 FinTech(フィンテック)に関する初めての総合的な報告・提言|経済産業省
https://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170508001/20170508001.html
※2 生命保険領域における国内InsurTech市場に関する調査を実施(2019年)|矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2354
※3 テレマティクス保険とは?|チューリッヒ株式会社
https://www.zurich.co.jp/car/useful/telematics-insurance/
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