有害物質を制限するローズ指令(RoHS指令)とは 遅れが目立つ日本での取り組み

「ローズ指令(RoHS指令)」とは、電気・電子機器中の特定有害物質の使用制限を定めた法令のことだ。対象はEU加盟国だが、輸出する日本企業にも関わる法令だ。ローズ指令の目的、規制対象となる有害物質と製品、日本における動きなどをまとめた。

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2021.01.30
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人と環境に関わる有害物質を制限 ローズ指令(RoHS指令)とは

ヨーロッパのイメージ画像

Photo by Anthony DELANOIX on Unsplash

「ローズ指令(RoHS指令)」とは、電気・電子機器中の特定有害物資(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、および複数の臭素系難燃剤)の使用制限に関する内容を定めたEU(欧州連合)の指令(法律)の一つ(※1)。

正式名称は「Restrictions of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronics equipment」という。

ローズ指令のRoHS(ローズ)とは「Restriction of Hazardous Substances」の頭文字をとったもので、この訳から、日本語では「有害物質使用制限指令」とも呼ばれる。2003年2月に発効され、2006年7月に適用された後、2013年1月からは改正指令が適用されている(※2、3)。

指令の適用地域はEU加盟国だが、ローズ指令に定められた条件を満たさないと、電気・電子機器をヨーロッパ各国へ輸出できないため、輸出産業を行う企業を中心に、日本国内でも大きな問題となった(※1、2)。

ローズ指令を満たさない製品がEU加盟国内で販売され、健康リスクのある商品などを検知する「RAPEX(EU緊急警告システム)」で通知された場合、罰金や製品回収などの罰則が課せられる。なお、この罰則は各国の規定により異なる(※4)。

違反した企業は市場に公表され、その後の輸出を拒否されるケースもあり、大きな抑制効果を生んでいる。

ローズ指令施行の背景と目的 急速に増える電子廃棄物がきっかけに

針葉樹の森を通る小道

Photo by Lukasz Szmigiel on Unsplash

ローズ指令が制定された目的は、EU加盟国で統一基準を設けることで人々の健康と自然環境を保護し、電気・電子機器を健全な方法でリサイクル、または処分することである(※3)。

その背景として、電気・電子機器の廃棄が急増していたことが挙げられる。1998年には600万tの廃棄量だったのに対し、毎年3~5%の割合で増加し、12年後には2倍の1,200万tになるという試算があった(※2)。実際に2019年のEUでの電子廃棄物は1,200万tになっており、予想より早いペースで廃棄物が増えている(※5)。

また、廃棄される電気・電子機器の9割以上が、機器内に含まれる有害物質を適切に処理せずに処分されており、環境に影響を与えていたことも問題視されていた(※2)。

健康および環境への影響として、具体的には、以下のような問題点が挙げられた(※2)。

1. 電気・電子機器の焼却処分により、水銀が年に36トン、カドミウムが年に16トン排出され、さらにダイオキシンが発生すること。

2. 埋め立て処分により、廃電気・電子機器から長期にわたって金属や化学物質が流出し、土壌汚染をもたらすこと。

3. リサイクルにおいても、臭素化難燃剤を含むプラスチックからはダイオキシンが発生する恐れがあり,鉛やカドミウム等の重金属からは大気中に有害物質が排出されること。

ローズ指令の規制の対象となる10物質と製品

白煙を排出する古い工場

Photo by Patrick Hendry on Unsplash

ローズ指令では、鉛、銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)、フタル酸ビス(DEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ブチルベンジル(BBP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)の計10物質の使用が制限または禁止されている(※6)。これらは「RoHS10物質」と表現するケースもある。

カドミウムは0.01wt%(重量比)、そのほかは0.1wt%の最大許容濃度がローズ指令によって定められ、規定を超える製品はEU加盟国内では製造・販売が行えない(※6)。

また対象製品はAC1000V/DC1500以下の定格電圧をもつすべての電気電子機器であり、大型家電、小型家電、IT通信機器、照明器具、電子工具、玩具・レジャー・スポーツ機器、医療機器、自動販売機など11カテゴリーに分類されている(※2)。

対策が不十分? 日本国内でのローズ指令に関する動き

日本のビル群

Photo by Jon Tang on Unsplash

日本は現在ローズ指令の適用対象外

ローズ指令は、EU加盟国内で製造・販売される電気・電子機器を適用対象とする法律であるため、日本国内において、製造・販売する場合においては対象外である(※7)。

しかし、人体や環境に有害な物質の使用を制限し、安全性を確保すること、リサイクルを推奨する動きは、世界的に加速している。中国や韓国、タイ、インド、トルコなど、諸外国でもローズ指令に準ずる法令を設けている国もある(※2)。

このため、近い将来、日本においてもローズ指令同様の法令が施行される可能性は十分にあると言える。

現在の日本国内での有害物質の扱い 過去には摘発事例も

日本には現状、ローズ指令同様の法律が存在せず、環境への影響面においては大気汚染防止法、水質汚濁防止法、産業物処理法、人への影響については労働安全衛生法などにより、有害物質の取り扱いについての規制が行われている(※7)。

このうち、産業物処理法において水銀、カドミウム、鉛等の重金属等が規制対象物質として挙げられ、特別な管理が必要とされるなど、基本的な対策は行われている(※7)。

しかし、2001年にオランダで、規制値を超えるカドミウムが検出されたとして日本企業が輸出を禁止された事例や、2007年に中国でカドミウム、六価クロム、PBDEが許容値を超えて使用されていたとして製品回収と販売停止に陥ったケースがあり、日本の対策が十分とは言えない状況も垣間見える(※2)。

今後は9物質が追加? 求められる日本の対応

ローズ指令では現在、最大9つの物質が新たに規制対象に加わるという報道も出ている(※8)。

日本でも、大手企業を中心に、ローズ指令に準拠する対応を取り始めているが、グローバル化が進む現代においては、世界基準に合わせた法整備が必要不可欠と言えるのではないだろうか。

※掲載している情報は、2021年1月30日時点のものです。

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