環境意識の高い投資家が注目するエコファンドは、社会的責任投資(SRI)と呼ばれる。特定の環境に配慮した経営をする企業への投資は、どのような性質を持っているのだろうか。
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エレミニスト編集部
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エコファンドは、投資信託の一種である。環境に配慮した企業への投資に限られた内容だ。環境問題に関心を持つ投資家に向けられている。EGS投資、社会的責任投資ことSRIの1つ。
なお、エコファンドとは和製英語であり、海外ではグリーンファンドが日本のエコファンドにあたる。
日本では1999年、日興證券が対象となる企業の株を「日興エコファンド」の名称で取り扱いを開始した。その後、安田火災グローバル投信投資顧問、興銀第一ライフ・アセットマネジメントなど、大手の参入が続いた。
取り扱いが開始された頃は、環境問題が世界的に取り上げられている時代でもあった。エコファンドの対象は、環境問題に取り組んでいる企業だと認められることであり、各企業でエコブランドの推進を行う動きも生まれた。
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エコファンドは、一般の投資とは異なる性質がある。環境問題という限定された内容であり、社会的役割を担うSRIとしてのカラーが強い。投資する側、対象となる企業には求められる役割や条件がある。
エコファンドに投資することにより、環境に配慮した経営を行う企業に資金を投入できる。資金を得た企業が活動を拡大できるため、環境への配慮がより社会へ広がる可能性につながるのである。環境問題への対策の一助を役割として担うことになる。
エコファンドに投資するべき人は、投資に対して収益以外も求める投資家である。エコファンドは他の投資よりも選択肢が狭まり、決して低リスクではない。
環境問題改善のために貢献したいと考える投資家なら、エコファンドに向いている。逆に収益だけを追求するタイプの投資家には、向いていない。環境問題に対しての考え方、取り組み方が、エコファンドの性質とマッチした投資家が利用する投資商品である。
企業がエコファンドの対象に指定されるには、いくつかの条件を満たす必要がある。条件について知っておこう。
エコファンドの対象となるには、企業内環境面のスクリーニングが必要となる。代表的なスクリーニング項目としては環境マネジメントシステム、省エネ環境、情報公開への配慮や生産・製品に対する具体的な環境配慮が挙げられる。
優れた配慮、対応をしている企業には、エコファンド投資家が注目しやすい。
エコファンドへの投資に乗り出す前に、評判やメリット・デメリットを押さえておこう。
リリース当初のエコファンドは、決して大好評を博したわけではなかった。初期のエコファンドは投資面でのリターンが少なく、利益を追求するタイプの投資家に「金にならない」、環境と経済を両立させることは難しいと思われたのである。
しかし、昨今はエコファンドを含めたSRIファンドの弱点をカバーする「ESG投資」が注目を集めている。環境と経済を同時に追求する信託だ。時代の変化とともに、環境に配慮したほうが、リターンが大きくなるという考えが主流になり、以前のエコファンドよりも進化した投資が行われている。
EGS投資が発展したいま、エコファンドに投資するメリットは以前よりも大きくなっている。リターンを重視する投資家にとっても、一考の価値があるだろう。
優れた企業への投資が長期的リターンをもたらす
エコファンドのメリットとしては、まず、環境問題に配慮した優秀な企業に対し、投資で長期的な支援を行えることが挙げられる。長期的支援には長期的リターンが期待できるため、これもメリットと言えるだろう。
また、エコファンドの対象となる企業は、リスク管理が優れているケースが多い。健全なキャッシュフローにより、安定したリターンになる可能性が高いことも大きなメリットだ。
メリットがあればデメリットもある。社会的役割があるエコファンドでも投資であることは間違いなく、リスクに対する理解と用心が必要だ。
環境優先のため、高い収益性が期待しにくい
エコファンドのデメリットとして指摘されている項目の1つとして、企業の環境問題への取り組みとそのコストがある。環境問題に必要なコストが収益を圧迫してしまい、爆発的なリターンが期待できない可能性が生じるのである。
2つめのデメリットとしては、エコファンドは投資信託の一種であるため、さまざまなリスクを背負うということだ。価格変動、為替変動、流動性、信用の4つの大きなリスクが存在する。
3つめのデメリットは、情報の開示性だ。投資信託の性質上、環境問題への取り組みについての評価の基準が、十分とは言いにくい。この点をどうクリアするかが、投資家にとっての懸念になるだろう。
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国内企業で取り扱われるエコファンドの実例を見てみよう。リリース時期や、対象企業の環境に対する取り組みに注視してピックアップしていく。
日本初のエコファンドとなった「日興エコファンド」は、1999年8月にリリースされた投資信託である。環境への取り組みは、高い意識が窺える。オフィスにおける省エネやリサイクルをはじめ、環境関連の法規制、要求事項を遵守し、環境汚染の予防を図っている。
購入手数料は無料だが、アクティブ型のため、その他の手数料は高めである。しかし大幅な価格変動は見られず、安定していると言える。市場平均との連動性が強く、投資家の間ではSRIでありながら、一般の信託として捉えられる多様な向きもある。
日興エコファンドと同年にエコファンド市場へ参入した、SOMPOアセットマネジメント(旧安田火災グローバル投信投資顧問)。「グリーン・オープン(ぶなの森)」は、1999年9月にリリースされた。環境問題への意識も高く、2019年には2018年度環境大臣賞を受賞している。
日本企業のなかでも、環境問題に熱心に取り組む姿勢が評価されている。長期的な投資対象として捉える投資家が多い傾向にある。分配金履歴を見てみると2007年に1,200円をマークしており、利益には向かないと言われがちなエコファンドの中では、好成績が窺える。
大和アセットマネジメントの「ダイワ・エコ・ファンド」は、2006年3月にリリースされたエコファンドである。企業としてエコロジーとエコノミーの観点から環境への配慮を行い、省エネ、リユース、リサイクルで循環型社会実現への貢献に努めている。
不況でエコファンドへの投資が低迷した時期にリリースされたダイワ・エコ・ファンドは、2006年11月に純資産総額546億円を集めた実績を持つ。リリースからわずか8ヶ月のことである。改めてエコファンドへの関心を集めることに大きな働きを見せた。現在は長期投資用として運用する投資家が多い。
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