2021年注目のバーゼル条約 脱プラスチックへ向けた改正内容を解説

海を漂うペットボトルごみ

2021年に注目される、バーゼル条約の改正。「汚れたプラスチックごみ」が規制対象に加わることで、脱プラスチックに向けた取り組みが、より一層強まっていく。バーゼル条約の転換期とも言えるいまだからこそ、成立背景やくわしい内容をチェックしておこう。

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2020.11.30
SOCIETY
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有害廃棄物の流れを規制するバーゼル条約

バーゼル条約とは、有害廃棄物の国境を超える移動や処分を規制したルールである。その正式名称は「Basel Convention on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and their Disposal」、日本語に翻訳すると「有害廃棄物の国境を越える移動およびその処分の規制に関するバーゼル条約」だ。

バーゼル条約の目的は、以下の3つだ。

・有害廃棄物の削減・適切な処理の推進
・先進国から発展途上国への、一方的な有害廃棄物の持ち込みの阻止
・有害廃棄物が国境を越えて移動する場合の規制

有害廃棄物が放置されれば、環境破壊につながる。途上国に放置された場合、最終的な責任の所在も不明確になってしまう。こうした問題を解決するため、経済協力開発機構(OECD)および国連環境計画(UNEP)が議論し、生み出されたのがバーゼル条約である。

1989年3月に条約は採択。スイス・バーゼルでおこなわれたことから、条約名にスイスの地名が使われている。

スイスのとある集落

Photo by vaun0815 on Unsplash

実際にバーゼル条約の効力が発生したのは、1992年5月5日。日本がバーゼル条約に加盟したのは、1993年のことだった。2019年12月現在、加盟国は186か国、EUおよびパレスチナとなっている。

バーゼル条約成立のきっかけとなった2つの事件

バーゼル条約が締結された背景には、1980年代に問題視された有害廃棄物の越境移動がある。とくに大きな転機となったのは、1976年に発生したセベソ事件だ。

イタリア・セベソで農薬工場が爆発。ダイオキシンが飛散し、周辺の土壌を汚染した。その後、保管されていた汚染土壌が1982年9月に行方不明。そして翌年5月、北フランスにて発見された。この事件のあと、バーゼル条約締結に向けて、さまざまな話し合いがおこなわれるようになった。

ただし、すぐにバーゼル条約の内容が取り決められたわけではない。1988年の「ココ事件」を始めとする多くの事件が、条約採択に向けた動きを速めた。外交問題を避けるためにも明確なルールと規制が必要であると周知され、1989年の採択につながったのだ。

バーゼル条約の目的・対象・通報義務とは?

バーゼル条約が目的とするのは、有害廃棄物の削減と適切な処理の推進、および国境を越えた移動の制限である。バーゼル条約の規制対象となるのは、「廃棄物」であり「有害な特性を有するもの」だ。

対象物に価値があるかどうかは関係ない。たとえリサイクル品であっても有害であれば規制対象となり、自由に輸出入することはできないのだ。

条約加盟国は規制対象品以外にも、自国の法令で有害と定義される廃棄物についても厳格に管理しなければない。国境を越えて移動させる場合、手続きに関する要件をバーゼル条約事務局に通報する必要がある。

反対に、輸入禁止を訴える権利を行使する際にも、その旨の通報が必要だ。通報があった場合、バーゼル情報事務局によって、各加盟国へと送付される。

バーゼル条約は、2年ごとに開催される締約国会議(COP)にて、適宜内容の更新・ルールの追加が行われている。2020年現在までに14回のCOPが開催され、次回は2021年5月に開催予定だ。

2019年改正の焦点は「汚れたプラスチックごみ」

砂浜に散らばったプラスチックごみ

Photo by Hermes Rivera on Unsplash

2019年のCOPにて、バーゼル条約は大きく改正された。バーゼル条約の規制対象物資に、「汚れたプラスチックごみ」が追加されたのだ。2021年からの運用が予定されている。

ただし今回の改正では、汚れたプラスチックごみの輸出が禁止されるわけではない。輸出する場合、相手国の同意が必要となる。

規制強化の裏にあるのは、プラスチックによる深刻な海洋汚染問題だ。廃棄されたプラスチックごみやさまざまな製品に使われているマイクロプラスチックは、地球上の生物・自然環境に多大なる影響を与えることが指摘されている。

バーゼル条約の規制対象に加えることで、プラスチックごみの国境を越えた移動は制限される。これによって、廃棄物の削減と適切な処理を目指すというのが、今回の改正のポイントである。

2018年の日本の廃プラスチック輸出量は約100万トンで、バーゼル条約改正による影響は、決して少なくない。これまで以上に真剣に、有害廃棄物の削減、自国内で適切に処理するための仕組みづくりに取り組んでいく必要がある。

改正・バーゼル条約に向けて 各国の取り組み内容

バーゼル条約が採択されてから30年以上が経過。2020年現在、大きな改正にともない、転換期を迎えようとしている。日本を含め、世界各国は新たなバーゼル条約履行に向けてどう行動しているのだろうか。くわしく解説する。

日本「バーゼル法とレジ袋の規制を実施」

バーゼル条約を履行するため、日本では1992年に「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(バーゼル法)を制定。それに加えて、「廃棄物の処理および清掃に関する法律」(廃棄物処理法)、「外国為替および外国貿易法」(外為法)によって、廃棄物の輸出入を規制してきた。汚れたプラスチックごみが規制対象に加えられる点についても、すでに社会全体を変化させる取り組みがスタートしている。レジ袋の有料化も、そのひとつである。

フランス「使い捨てプラスチックからの脱却」

フランスは、積極的に脱使い捨てプラスチックを目指す国のひとつだ。2020年には、プラスチック素材の容器やカトラリーなどの使用が、全面的に禁止されている。2025年までにいくつかの段階を経て、再生プラスチック利用100%を目指す。

日本では有料化されたばかりの使い捨てレジ袋だが、フランスのスーパーマーケットでは、すでに使用が禁止に。プラスチック製のボトルについても、デポジット・リターン・システムを導入。リサイクルの仕組みを整えている。

タイ「廃プラ輸入に対する取り締まりの強化」

タイでは、2018年より電子廃棄物や廃プラスチックの輸入制限が強化されている。違法に国内に持ち込まれることを予防し、バーゼル条約が目的とする有害廃棄物の削減、国境を越えた移動の制限の実現に取り組んでいるのだ。

新規輸入許可手続きを停止しているほか、廃プラスチックの輸入を一律で禁止する案も検討されている。ベトナムやマレーシアにおいても、タイと同様に対策が進められており、脱プラスチックを進めている。

世界各国で、バーゼル条約に新たに追加される「汚れたプラスチックごみ」対策が急ピッチで進められている。プラスチック製品は、私たちの生活にとってとても身近だ。だからこそ一人ひとりが高い意識を持って、生活スタイルの変化に取り組むべき時期を迎えている。

※掲載している情報は、2020年11月30日時点のものです。

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