「ギフトエコノミー」や「贈与経済」とは、見返りを求めずに他者にモノやサービスを与える、経済の新しい仕組みを示唆するあり方のこと。貨幣を用いてモノを受け取る資本主義経済から外れたギフトエコノミーについて、実例をもとに擁護の意味などを紹介する。
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エレミニスト編集部
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ギフトエコノミーとは、与え合う経済のこと。漢字で贈与経済とも表現される。貨幣でのやり取りや、物々交換するこれまでの資本主義の経済のあり方から外れた、「見返りを求めずに他者にモノやサービスを与える」経済を意味する。
ギフトエコノミーは、経済の新しい仕組みを示唆する動きとして注目されている。
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見返りを求めず与えるという、ギフトエコノミーが示す助け合いの姿勢は、地域社会において古くから存在していた。この概念が広く知られるようになったのは、2007年にアメリカ・バークレーにオープンした「カルマ・キッチン」がきっかけと言われている。
カルマ・キッチンでの食事代は、なんと0円。それは単に無料ということではなく、前にレストランを利用した人が善意で払ったお金によって、客は食事というギフトを受け取れている。食後に自分が次の人のためにギフトするかどうかは自由だ。しかし、多くの人々は感謝の気持ちを込めて次の人のために代金を支払っていくという。
現在、多くの国では資本主義を採用している。資本主義とギフトエコノミーはどう違っているのだろうか。また、資本主義社会においてギフトエコノミーは成立し得るのだろうか。
資本主義経済とギフトエコノミーの違いは、見返りがあるかどうか。自由な経済体制を築くことができる資本主義では、労働力に応じて報酬が得られる。需給関係で価格が決まり、貨幣の支払いと引き換えにモノやサービスが提供される。貨幣が大きな価値と持ち、経済が活性化する一方で、貧富の格差や競争を生み出してきた。
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対するギフトエコノミーは、見返りを求めない「ペイフォワード(Pay it Forward)」の思想が根底にある。日本語で言うと「恩送り」。自ら進んで与えることを前提に成立する。そのためギフトエコノミーでは、互いの善意と信頼関係の上で成り立っている。
重要なのは、見返りを求めずにギフトを与える姿勢と、ギフトを受け取った側も感謝の気持ちを持って他者に与えていく連鎖の早出だ。一人だけが与え続けていれば、ギフトはいずれ枯渇してしまう。
しかし、みんなが与え合う構造が成り立てば、経済の大きなサイクルが生まれる。このような仕組みから、ギフトエコノミーは先進的な経済のあり方として関心を集めているのだ。
国内外に広がるギフトエコノミーの事例を紹介する。
米カリフォルニア州・学生都市、バークレー。その中心地に、ニップン・メータ氏がギフトエコノミーの思想を採り入れたインド料理店「カルマ・キッチン」を2007年に開いたことが、ギフトエコノミーの普及を促進させた。
伝票には「0ドル」という記載に加え、「あなたが食べた食事は、あなたより前に来店した方からのギフトです。この輪をつないでいくために、後に来店する方の食事代をあなたはペイフォワードすることもできます」という添え書きがされている。
バークレーから始まったカルマ・キッチンの思想は世界的に広がり、日本でも期間限定という形で開催されている。もちろん食事代は0円。
しかし、ギフトの流れをつないでいくため、誰がいくら支払ったはわからない仕組みになっているが、ほとんどの客は任意で用意された封筒に代金を入れていく。
国内でギフトエコノミーを推進する団体、ギフト経済ラボによって不定期で運営されており、スタッフもボランティアによって善意の輪を広げている。
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ヨガのある人生を広めるため、誰でも無料で参加できるギフトエコノミー型のイベントがYOGAMUDRA(ヨガムドラ)。これまで、日本全国のさまざまな場所で開催されてきた。ヨガクラスや廃棄前食材を使用したノベルティーなど、さまざまなギフトが提供されている。
これまでの資本主義のような交換ではなく、贈り物(ギフト)という形で経済の循環を生み出そうとするギフトエコノミー。人間関係が希薄になった現代社会において、与え合うことは、人と人とのつながりを再認識させるきっかけになるはず。
ギフトエコノミーの思想が浸透するには、支払うときも受け取るときも、常に他者を思いやることが大事になってくる。
単なる消費者ではなく、貢献者であるという意識変革が、これからの経済のあり方を変えていくのではないだろうか。
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