「スマートモビリティ」とは、テクノロジーを用いた安全で便利な新しい交通システムやその概念。この記事では「スマートモビリティ」の意味と、日本国内における事例を紹介。
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「モビリティ(mobility)」とは「流動性」や「移動性」を意味する言葉。つまり「スマートモビリティ」とは、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などの新しいテクノロジーを用いて、従来の移動や交通をより安全・便利で効率よくする新たな技術、またはその概念のことである。
安全で便利であることはもちろん、都市が抱える渋滞などの課題から大気汚染などの環境問題まで交通に関する課題を幅広く解決することを目指している。
代表的な物としては自動車運転技術やカーシェアリング、MaaS(Mobility of a Service)などがある。
カーシェア(カーシェアリング)とは、従来のレンタカーのように店舗に赴くことなく、スマホのアプリ等で車両の貸借りや返却の際の手続きができる車両の貸し出しサービスのこと。
株式会社タイムズ24が運営するタイムズカーシェアは、2018年の7月に会員数100万人を突破した国内最大級のカーシェアサービスである。2014年の規制緩和以降、トヨタと連携し、借りた場所へ返却するラウンド方式だけでなく、乗り捨てが可能なワンウェイ方式のカーシェアにも取り組んでいる。
都市が抱える駐車場不足の問題の解決策として注目を浴びているサービスの1つである。
「AIバス」とは、乗りたいときに行きたい場所まで自由に移動できるオンデマンド型公共交通システムのこと。NTTドコモと函館大学発のベンチャー企業である未来シェアが開発を手がけた。
「AIバス」は、従来の路線や運行ダイヤに縛られた路線バスとは異なり、直径5km程度の運行区域内を縦横無尽に走る小型車両で、スマホで簡単に配車できる。実際に運転するのはAIではなく人だが、AIによって最適な配車や最短ルートが割り出される。
このサービスは都市や観光地における効率化を図るだけではない。近年、地方では少子高齢化によって公共交通機関の利用者数は減っているものの、高齢者が多いことから依然としてニーズはある。
しかし、多くの地域で効率性を理由に高齢者が不便を強いられている状況にある。このような高齢化社会の課題も解決し得るサービスなのである。
「パーソナルモビリティー」とは、1人乗りのコンパクトな移動支援機器のこと。株式会社WHILLは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」をミッションに、パーソナルモビリティの生産・販売などを手がけている。
「WHILL」は障害や高齢などを理由に、自動車や自転車などを利用できない人も運転できるモビリティである。2017年4月に発表された「WHILL Model C」 は、自動車に積み込むことを想定し、コンパクトで軽量に設計されている。
同社はパーソナルモビリティ「WHILL」を電車やバスなど、既存の交通手段を降りた後の「ラストワンマイル」をつなぐ新しい移動手段の提供を目指している。
また、2019年に経済産業省が主催した第5回「日本ベンチャー大賞」では、審査員特別賞に選出された。
スマートモビリティチャレンジとは、経済産業省と国土交通省が行うスマートモビリティ推進のプロジェクトである。具体的には、令和元年に設立された「スマートモビリティチャレンジ推進協議会」が中心となり、地域ごとにシンポジウムを開催する。これは地方自治体と民間企業が情報を共有し、ネットワークを築く機会となる。そうして行政と民間の協働を促進し、スマートモビリティ社会の実現に貢献している。
2022年には、「スマートモビリティチャレンジ」の先進実証を行う11の地域や事業者が選ばれた。地域ごとに「他の移動との重ね掛けによる効率化」「モビリティでのサービス提供」「需要側の変容を促す仕掛け」「異業種との連携による収益活用・付加価値創出」「モビリティ関連データの取得、交通・都市政策との連携」という5テーマに取り組む。
愛媛県伊予市では、高齢化や人口減少が進む中山間地域において自動運転車両内で多様なサービスを提供する試みを行っている。地域の事業者と連携し、健康相談などの医療サービスや生活必需品の販売などを実施するというものだ。利用者の意向をもとに実現に向けた実証実験を行っている段階だ。
スマートモビリティ社会の実現に向けては、制度面など多くのハードルがありる。自動運転に関する規制もそのひとつだ。
都市部の交通渋滞を解消し、移動時間を短縮することで住民のメリットとなりうるスマートモビリティ。より安全・便利で効率のよい交通はCO2削減といった環境問題への寄与も期待される。都市化が進む中、スマートモビリティの進展は交通手段を進化させるだけでなく、環境や社会全体に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。
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