「バイオミミクリー」で持続可能なデザインを 生態系から学ぶものづくりとは

持続可能なデザイン手法として「バイオミミクリー」が注目されている。これは、生き物や植物などの生態系から学び、模倣するという手法。私たちの身近にある事例やデザインを通じて、バイオミミクリーとは何かを解説する。

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2020.10.27
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生態系から学ぶデザイン手法「バイオミミクリーとは」

バイオミミクリーとは、生き物や植物の機能や構造からヒントを得て技術開発に活かすことをいう。1997年に『自然と生体に学ぶバイオミミクリー』という本を出版したサイエンスライターのジャニン・ベニュス氏が提唱した。

この言葉は、生物の「Bio」と模倣の「Mimicry」を組み合わせてできた。近年この考え方は学術研究の世界だけでなく、工学的に応用され技術開発や製品開発でも使われるようになっている。

バイオミミクリーの3つの代表例

バイオミミクリーという言葉それ自体は最近のものだが、考え方は古くからある。私たちの身の回りには、意外にも多くのバイオミミクリーがあるのだ。どのようなものに活用されているかを見てみよう。

航空機の翼・エアコンのファン

航空機の翼

Photo by Owen Lystrup on Unsplash

シャープは製品開発に積極的にバイオミミクリーを取り入れている企業の一つと言えそうだ。エアコンなどのファンの開発にはアホウドリの翼、イヌワシの翼、アマツバメの翼の形を応用している。

アホウドリをはじめとする鳥の飛行メカニズムは、航空機にも応用されている。翼の再設計や感度の高い風センサーを開発することで、少ないエネルギーで長距離飛ぶことが可能になる。その結果、より安く、速く、そして環境にやさしい飛行が可能になるのだ(※1)。

外壁タイル

家の壁

Photo by Étienne Beauregard-Riverin on Unsplash

カタツムリの殻は大理石と同じアラゴナイトというタンパク質の一種からできている。タンパク質は油汚れの原因になりやすい。カタツムリの殻を調べてみると、殻にはナノからミリサイズの溝があることがわかった。細かい溝が殻の表面に広がっているため、溝に水をためられる仕組みになっている。

汚れの元が殻に着くと、溝にたまっている水の表面に浮くため雨が降ると汚れが流れ落ちるようになっているのだ。これを応用して、シリカ成分を表面に塗ったものが外壁材だ。リクシルの製品は「雨が降ると汚れが落ちる」と評判になり、外壁タイル業界で一定のシェアを占めている(※1)。

日よけ

木漏れ日

Photo by Linda Söndergaard on Unsplash

バイオミミクリーの例は動物だけではない。積水化学工業の「エアリシェード」は木陰のつくりだす涼しさに着目し、夏の強い日差しを心地よい木漏れ日に変える日よけだ。太陽高度の高い夏は日差しをしっかり遮って暑さをやわらげ、太陽高度の低い冬は多くの光を取り入れられる。

日よけは一度設置すればメンテナンスの手間がなく、水や電気なども消費しない。日差しをうまく活用することで、省エネにもつなげることが可能だ(※2)。

バイオミミクリーを活用するメリットは、生物や植物それ自体が失敗に終わった数百万ものプロトタイプである、ということだろう。先述のジャニン・ベニュス氏は「生物が絶滅せずに残存する割合は0.1%」という。生物や植物を模倣することは、もっとも効率的であり、持続可能性を備えたソリューションになりえる(※3)。

バイオミミクリーをものづくりに取り入れる3つのステップ

バイオミミクリーには3つのステップがある。1つ目のステップは、模倣対象となる生物の発見だ。しかし、デザインをコピーしただけでは課題の解決や持続可能性につながるかはわからない。

2つ目のステップは、その生物技術の研究である。その技術はどうすればつくり出せるか、どのように製品に転用できるかを研究する。料理なら、レシピづくりの工程にあたる。3つ目は、生態系システムそのものを模倣するステップ(※4)。この3ステップを模倣できれば、環境負荷の少ない持続可能な製品開発が可能になると考えられている。

バイオミミクリーの考え方そのものは昔からある。しかし、健全な環境が失われようとしているいま、人々の注目を集めるのは、私たちのライフスタイルの移行が求められているからと考えることができるだろう。

※掲載している情報は、2020年10月27日時点のものです。

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